実績組やスーパーラグビー組も復帰
“仮想・南ア”カナダ戦でPNC開幕
北米遠征中の日本代表は現地時間の18日(日本時間19日)、アメリカ西海岸カリフォルニア州サンノゼで
ワールドラグビー パシフィック・ネーションズカップ(PNC)初戦、対カナダ戦を迎える。
9月18日に開幕するラグビーワールドカップ(RWC)イングランド大会開幕までちょうど2ヶ月。
スーパーラグビーから戻った選手、コンディションが良くなった選手など、春のアジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)では出場機会のなかったメンバーも加えたチーム構成で、RWCへ向けたセレクションも兼ねた太平洋での戦いをスタートさせる。
今季はRWCが控えていることもあり、例年よりも遅めの開幕となるPNC。
日本代表の試合は北米を舞台に8月3日の最終節まで4試合が予定されている。
さらに国内に戻り、同15日の対世界選抜(東京・秩父宮)、22日(福岡・レベスタ)、29日の対ウルグアイ(秩父宮)の3試合が行われるリボピタンDチャレンジカップ2015、そしてイングランド入りした後の9月5日の対ジョージア(ブリストル)と、ここからはほぼ休みないかたちでRWC本番に向けてチームを仕上げていくための実戦が続く。
RWCまでの8連戦のスタートともなるPNCの初戦の相手はカナダ。
過去2大会のRWC(2007、0211)で対戦して、いずれも引き分けに終わった因縁の相手であり、この秋のイングランドで8強入りを目指す日本としては、この4年間での成長ぶりを証明するには格好の相手と言っていいだろう。
「PNCではすべての試合を勝ちたい」との意向を語るエディー・ジョーンズヘッドコーチだが、結果だけを求めるわけではもちろんない。
いや、今季に限って言うなら、勝利よりも重要なものがあるのも確かだ。
「PNCでは2つのゴールを意識して戦うことになる。ひとつは優勝すること。もうひとつはワールドカップに向けたいい準備とすること。カナダに対しても単純に勝ちにいくラグビーはしない」(同HC)
フィジカルに強く、昨年の対戦でもいきなりスクラムでプレッシャーをかけられるなどセットプレーにもこだわりを持つカナダ戦は、W杯初戦であたる南アフリカを想定した試合となる。
「まず、フィジカルに戦うこと。タイトなディフェンスを続け、アタックでは積極的にボールを動かしていく」
そんな基本方針を掲げるカナダ戦の先発メンバーには、RWCイヤーの今年、日本代表として初めてプレーする4人が名を連ねた。
パナソニックの主将としてトップリーグ2連覇を果たした後、調子の良くなかった首の手術を行ったHO堀江翔太。
股関節の状態もあって、ARCでは最終節の香港戦で初めてリザーブに名を連ねたものの、その試合が豪雨のため途中打ち切りとなったため、結局、全くプレーすることのなかったベテランLO大野均。
やはり、香港戦でリザーブに入りながら、出場機会のなかったFLマイケル・ブロードハースト
そして、ワラタスでスーパーラグビーのシーズンを過ごしたCTB松島幸太朗。
また、松島同様、初のスーパーラグビープレーヤーとしてのシーズンをレベルズで過ごしたPR稲垣啓太も15日にアメリカ入りしたばかりにもかかわらず、リザーブメンバー入り。
6月に日本代表資格を得たCTBティム・ベネットも初めてリザーブメンバーに名を連ねた。
「全員がRWCで勝つことを意識できている」(LO大野)
RWC過去2大会で引き分けを直接経験しているLO大野は、「カナダはライバル」と認めた上で、現在の日本代表と自分の置かれた状況を次のように語る。
「仮想・南アという意味でもいい相手。体大きいし、セットにもこだわってくる。そこをしっかり意識してプレーしたい。
4年前はPNCで優勝するという意識の方が強かった。今はセレクションの段階ではあるが、全員がしっかりワールドカップで勝つということを意識できているのはいいことだと思う。
もちろん、自分にとっては(RWCへ向けての)セレクションの意味も大きい。(同じポジションの選手は)みんなアジアでいいパフォーマンスをした。4年前は『W杯に行けないかも』という危機感はここまではなかった。まずはブレイクダウンでの働きとセットプレーの安定を見せたい。自分が入って崩れたというふうにはしたくはない」
一方、ジョーンズHCもキープレーヤーであることを認めるHO堀江は仮想・南アフリカのカナダ戦におけるFWのポイントは「スクラム、セットどれだけ安定できるか」だと語る。
「スクラムは試合になってみないとわからないところはある。ライブで組んでないので。感覚的に味方の選手たちと組んでどうなるのかというのはあるが、体に関しては不安は全くない。
気持ちと激しさの部分をしっかりできれば、あとは普通にやれればいい結果がついてくる。フィジカルで行くというのをテーマに挙げているので率先してフィジカルにいきたい」
スーパーラグビー出場こそならなかったものの、ワラタスで学んだことは大きかったと胸を張るのはCTB松島。
ワラタスでも、ずっと同じポジションだったという13番での先発となる。
「(日本代表として)この先、試合するのはサイズの大きな相手が多い。そういうチームに対して、どういうランコースを取ったらいいのかイメージしながら練習できた。ワラタスはワラビーズの選手ばかりだったが、自分のランは通用する感覚も掴んだし、プラス面が多かった。練習中もBKのムーブなどは話し合いながらつくっていくので、その中に入って一緒に練習することで、コミュニケーション能力も上がったと思う」
「試合の方が楽に感じると思う」(LO大野)というほど、ハードなトレーニングを宮崎合宿で続けてきた日本代表が、まずは“仮想・南アフリカ”のカナダ戦でどんな戦いぶりを見せるのか注目される。
text by Kenji Demura