堀江、田中のスーパーラグビー組も揃って先発
最強メンバーで“欧州王者”ウェールズに挑戦

6月8日、『リポビタンDチャレンジ2013』日本代表対ウェールズ代表第1戦が行われる。IRBパシフィック・ネーションズカップ(lipod)2013で、トンガ、フィジーに敗れた日本代表としては、なんとしても勝利という結果が欲しいところ。現在、IRB世界ランキング5位。2011年ラグビーワールドカップ・ベスト4で、6カ国対抗2連覇中のウェールズ代表に対し、日本の真価が問われる試合になる。

(text by Koichi Murakami)

SRハイランダーズでプレーするSH田中にとっては昨秋の欧州遠征以来の代表復帰。救世主となれるか
photo by RJP Kenji Demura
田中と共にジャパンに戻ってきたHO堀江はフィジー戦で安定を欠いたセットプレーでもキーマンに
photo by RJP Kenji Demura

6月3日には、日本人初のスーパーラグビープレーヤーとなったSH田中史朗、HO堀江翔太が日本代表に合流し、活気ある練習で準備を進める日本代表は、6月6日、この2人も名を連ねた試合登録メンバーを発表した。

「今いるメンバーで最も強いチームです。言い訳はできません。80分間、我々のやるべきことをやり切るのみです。日本の現状が分かる試合になるでしょう」(ジョーンズHC)

LO真壁伸弥、FLマイケル・リーチ、SO小野晃征、WTB廣瀬俊朗、今村雄太ら負傷で欠場を余儀なくなれた選手も多いが、メンバー編成の意図は明確だ。

世界のトップレベルのラグビーを知る、堀江、田中を先発させ、「世界一のラインスピードを実現するため」(ジョーンズHC)、攻守によく前に出て、パス技能の優れた3人、SO立川理道、CTBクレイグ・ウィング、マレ・サウをBKのフロントスリーに並べた。

そして、ウェールズに先んじてトライを奪うため、スピードある福岡堅樹、藤田慶和の大学生コンビを両WTBに起用。足の状態が万全ではない小野澤宏時は、80分間のプレーが難しいため、23名のメンバー入りをすることでその豊富な経験を若い選手達に伝える。

スーパーラグビープレーヤーの2人は言う。

「チームに合流したばかりでサインとか難しいことはあるが、やり始めると体が覚えている。不安もないし、思いきりやるだけ」(堀江翔太)

「まだまだ日本のチームはレベルアップできる可能性があるので、一人一人の意識を上げて世界に通用するラグビーを作っていきたい。格上のウェールズに最大のチャレンジをし、勝って日本ラグビーをもうひとつ上のレベルに引き上げたい」(田中史朗)

トンガ、フィジー戦の日本代表は、コンタクト局面で押し込まれ、いいボールが出せず終いだった。素早いテンポで、パスを多くする「日本らしいラグビー」の起点になるブレイクダウン(ボール争奪局面)、スクラム、ラインアウトのセットプレーで、いかにタイミングのいいボールを供給できるかは勝利へのキーポイントになる。

「コンテストエリアで接戦に持ち込めば、いい試合ができる」(ジョーンズHC)という言葉通り、マイケル・ブロードハースト、ヘンドリック・ツイ、菊谷崇のFW第三列を軸にFW陣がどこまで健闘できるかが勝敗を分けることになりそうだ。

フィジー戦で途中出場ながらジャパン唯一のトライを記録したWTB福岡が先発へ
photo by RJP Kenji Demura
フィジー戦は出番がなかったWTB藤田。福岡と共に若きスピードスターの活躍に期待がかかる
photo by RJP Kenji Demura


ウェールズの大型FW第3列、指令塔ビガーの動きに要注意

FW戦で互角に戦えれば、BKラインは楽しみなメンバーが揃った。スーパーラグビーのハイランダーズでも活躍する田中は、プレッシャーのかかった局面で素早くパスをさばき、機を見てサイドをすり抜ける突破力もある。タックラーに思いきりよく接近してパスができるSO立川とのコンビは、ウェールズBKラインにとっても脅威となるはずだ。

この試合が、3試合目のテストマッチとなるクレイグ・ウィングも、長くスピードあるパスを繰り出し、自ら抜け出すスピードもある。トンガ、フィジーに対しても何度もラインブレイクしたマレ・サウとのコンビは、ウェールズの若いBKラインを凌駕する可能性がある。もちろん、この両CTBは、ディフェンス面でも要だ。
「自分の仕事をして、フィジカルに戦っていきたい。相手は大きいし、強いのは分かっているが、自分はディフェンスラインを崩されないように体を投げ出していきたい」(クレイグ・ウィング)

この4人で防御を揺さぶり、福岡、藤田の俊足WTBを走らせる展開に持ち込めれば、花園ラグビー場の観客席は大いに盛り上がることになる。
「世界トップ5のチームと対戦できる機会はめったにないので、出場することができて光栄です。今回は、自分の力がどこまで通用するか試せるいい機会なので、全力で日本のために走り切ります」(福岡堅樹)

対するウェールズは、15人のキャップ数がちょうど100。20歳前後の選手が半数を占める若いチームだ。ただし、近年のウェールズは、20歳前後に将来楽しみな選手がひしめいており、今回のメンバーも、数年後のウェールズ代表の中心になると期待されている選手が揃う。サイズを見てみると、FWの平均身長191.1センチ、体重110.6キロ、BKは、平均身長185.3センチ、体重91.5キロと、大型でパワフルだ。特にFW第三列の3人(アンドリュー・クームズ=193、109、ジェームズ・キング=193、102、ロブ・マカスカー=193、108)は、FW第二列の経験も豊富で、ここで日本に大きく圧力をかけてくるだろう。

日本にとって要注意は、SOダン・ビガーの動き。シックスネーションズ2013(北半球6カ国対抗)で優勝したレギュラーSOで、防御ラインに極限まで接近しながらプレーでき、その位置から多彩なパスを繰り出せる。ビガーに自由に走られると、日本の防御ラインが翻弄される可能性もあり、ビガーがボールを持った瞬間にタックルに入れるくらいの圧力をかけたい。

ウェールズ代表は、現在、オーストラリアに遠征中のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズに15名が参加しており、来日メンバーは若手中心だが、それでも、この試合は、正式なテストマッチ。ウェールズの選手達にもキャップが与えられる。IRBの主要8カ国に日本が勝ったのは、1989年のスコットランド戦があるが、これは、スコットランド・フィフティーン(選抜)としての試合だったため、正式なテストマッチで日本代表が主要8カ国に勝ったことはない。史上初の快挙に向け、日本代表の挑戦が始まる。

途中出場のフィジー戦でも悪条件の中、ソリッドなプレーぶりが光ったウィングがミッドフィールドを締める
photo by RJP Kenji Demura
悪条件の中、ジャパンウェイを見せられなかったフィジー戦から立ち直った姿を見せられるか
photo by RJP Kenji Demura