帝京大学 10-20 早稲田大学 (決勝/2009年1月10日 at東京・国立競技場) 第45回全国大学選手権大会 決勝戦は晴天の国立競技場(東京)で22,344人の両チームを応援する熱いファンが見守るなか、帝京大学(関東対抗戦1位)と早稲田大学(関東対抗戦2位)が決勝を戦う(今年の関東対抗戦では帝京大が18対7で勝利)。帝京大は初の決勝進出で初制覇に挑み、早大は2年連続15度目の優勝に挑む。 選手入場~両校校歌演奏後の午後2時10分、早稲田大がキックオフ。なお、この試合はシャパンラグビー トップリーグでも採用しているタイムキーパー制度が導入された。 開始早々、帝京大は早大に積極的にプレッシャーをかけ、前半5分には敵陣22mセンター付近での相手ペナルティよりチャンスを掴みFB船津選手(3年)がPGを決め先制(3-0)した。続く9分には敵陣22m付近LOよりラックから左右に攻撃をしかけ、FLボンド選手(1年)がラックサイドより抜け出し攻め込むもののボールか繋がらず追加得点できず。早大は直後のスクラムよりWTB早田選手(2年)が右サイドから抜け出し早いボール展開で攻め込むがボールが繋がらずチャンスをモノにできない。その後も両チームの熱い攻防が続いたが、早大は前半30分にFB田邊選手(3年)がPGを決めて同点(3-3)とし、前半終了間際には敵陣GL前10m付近での帝京大ペナルティをスクラムを選択し、No8豊田選手(4年)がスクラムサイドより相手ディフェンスの穴を突いてトライ(ゴール成功)し10対3と早大リードで前半を折り返した。 後半は風上に立つ早大が開始早々より積極的に速い展開でワイドに攻め込み、後半19分に相手ペナルティよりPGを決め先制し、続く後半23分には敵陣22m付近LOよりのラックでサイドを突く連続攻撃でNo8豊田選手(4年)が豪快にトライ(ゴール成功/20-3)を決めて帝京大を突き放す。 しかし帝京大は後半38分に自陣より連続攻撃で果敢に早大陣に攻め込みGL前左サイド5m付近のラックより右サイドに速い展開でボールをまわしWTB野田選手(4年)がトライしFB船津選手(3年)がゴール成功(10-22)、試合は最後まで熱い攻防が繰り返されたが早稲田大学が2年連続15度目の優勝を勝ち取った。 優勝した早稲田大学は2月7日から始まる第46回 日本ラグビーフットボール選手権大会1回戦で、全国クラブ大会優勝チームとの戦いに挑み、帝京大学は同大会でトップチャレンジ1位チームに戦いを挑む。(佐藤克則) 帝京大学の岩出監督(右)と、井本ゲームキャプテン 帝京大学 ○岩出雅之監督 「今シーズン、秋からひとつずつ積み上げたことを今日のゲームに出すことができました。良いパフォーマンスが結果につながれば、なお良かったのですが。ここまでの準備はコーチングも選手もがんばってくれました。多くの強いチームがありますが、特に早稲田さんを目標にここまでがんばってきました。この舞台に立てたことが今シーズンの良い結果だったと思います。 試合前、学生には今シーズン最後の試合ということでなく、これからの良いスタートになるようにと言って臨みました。そういう意味では勝利もほしかったですが、また、新しいチームにとって必要な課題も見つかったと思います。早稲田さんは対抗戦でのわれわれの勝利から2ヶ月間、鍛えてこられた力、中味で、戦えることが嬉しく思える試合でした。早稲田さんの勇気あるプレー、しっかりしたプレーに敬意を表します。ゲームとしては、シンビンを出し、14人で戦う時間が多く、両フランカーがいないという2次での仕掛けができない部分が大きかったと思います。うまくFWが前へ行き、われわれの強みの部分を引き出すという今シーズンの全試合で戦ってきたゲームプランで臨みましたが、早稲田さんの良いディフェンスに阻まれました。終盤は思い切って回してトライを獲ったが、新しいチームにはボールの継続をイメージしたラグビーをしてもらえれば良いと思います」 ──スクラムなど、総じて手こずったのか? 「20分、7人で戦っていたので、実際の力はちょっと見えないですね。8人でしっかり組めていれば、押せていたと思います。今日は早稲田さんのスクラムの良さが出たのではないでしょうか」 ──早稲田は変わったのか? 「敗戦で、見えにくい部分で良い要素をつかまれたのではないでしょうか。良いしぶとさが出ていて、キャプテンが良い2トライをしましたが、そこへの準備を他の選手がやって一つになっていました」 ○井本克典ゲームキャプテン 「最高の舞台で、われわれとしては優勝という結果をもぎ取ろうと思っていましたが‥‥。今日の試合は、お互い、本当にすべてを出し切ったゲームでした。秋と今では、お互いに力をつけてきたチームで、こんな結果になったのは、本当に一つ一つの小さなところで、まだ、早稲田さんのほうが上回っていたのか分かりませんが、胸を張って帰りたいと思います」 ──前半、深く蹴りこまなかったのは? 「風上ということもあり、しっかりエリアマネジメントしていこうと。敵陣に入ってスコアして帰るというシンプルなブランだったが、それをさせてもらえなかったと思います」 早稲田大学の中竹監督(左)と、豊田キャプテン 早稲田大学 ○中竹竜二監督 「今日は、最初から僅差の厳しいゲームになると思っており、小さなミスを減らしていかにキチッと点を取るか、われわれはディフェンスのチームなので、いかに帝京さんに攻めてもらうかが課題でした。学生には、ラグビーやる時間はないよと伝えていました。それを打ち砕くのがダイナミック・チャレンジで、素人が見ても馬鹿にされるようなチャレンジをするんだと言ってきました。個々は体格も実力も帝京さんが上で、豊田のキャプテンはそのためにやってきたと、今年のテーマでした」 ──対抗戦ではスクラムで負けたが? 「対抗戦でやられましたが、ビデオを見るとうちがよかった部分もありました。今日は、想定どおり、人数が同じであってもスクラムも行けると思っていました。自信の根拠は明治さんとやって、自分たちの悪いところを修正して、スキルもスクラムワークも確実に進めてこられたからです」 ──試合前の練習は? 「ウォーミングはまあ‥‥、豊田がいい奴だなあと。落ち着いているなあと思って見ていました。どちらかというと関東学院戦と東海戦の前のほうが目の色が違っていました。最後に(試合に出られない)4年生がダミーを持ってくれて、豊田が当たったんですが、この数年間の中で、一番すごいものを見たなと思いました」 ──豊田主将の評価は? 「これは難しいですね(笑)。一日くらいかかります。彼をキャプテンにして、ダイナミック・チャレンジと、彼に一番ふさわしいスローガンにして、いわゆる普通のチームをまとめようとするキャプテンシーではチームも沈むと思いました。僕が会った選手のなかで一番人に対して温かい男です。自分がキャプテンぽくなっては駄目と、暴言を吐きまくれと言ってきました。豊田も苦しかったと思います。チームも変わって全員が豊田を理解してくれて、今日のゲームでも一番暴れてくれました。天性の力、誰より素直で、誰より純粋で見本を見せ続けてくれたキャプテンです」 ○豊田将万キャプテン 「相手が帝京さんと決まったときから、こんなにリベンジする絶好のチャンスはないとワクワクしていました。シーズン途中、いろいろあったけれど、中竹さんが背中を押してくれたので、今日の勝ちがあったと思います」 ──前半、最後にショットを狙わなかったのは? 「3点より、7点のほうが良いと思って(笑)」 ──良い入り方だったか? 「相手も強いし、体も大きいし、コンタクトでもやられた部分がありましたが、徐々に慣れてきて、ディフェンスしていても全然獲られる感じがしなくて、ディフェンスしていれば大丈夫と選手からも声が聞こえてきました。結果的には僕のトライもできたのですが、意外と落ち着いてやれました。自陣からトライが獲れるとは思っていませんでしたから自陣にいたらディフェンスしようと、あせることはなかったです」 ──試合前は? 「アップに行く前からいらいらしていて、僕が何か言っても、帝京さんのことしか考えられなくなっていて、目がおかしくなっているのもいて、4年生がダミーを持ってきてくれて、それで我に返ってくれたと思います」