日本ラグビーフットボール協会における
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I) 推進宣言
- D&Iに対する当協会の姿勢
ラグビーには、身体が大きい人や小さい人も、足が速い人や力がある人も、様々な身体特性をもった選手それぞれが活躍できるポジションがあります。また、日本代表では、出身国や人種、言葉や文化が異なる選手が‘One Team’となり活躍しています。このような競技特性があるラグビーにとって、「ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包摂性)」とは元来高い親和性があり、これを体現し続けていくことはラグビー界の本分であると言えます。我々は、スポーツ、そしてラグビーがもつ「人々を感動させ、心動かすちから」を通じて社会に貢献することを約束するとともに、ラグビーの真価を発揮すべく、D&Iの推進に関して下記2点を宣言いたします。
- ●我々は、人種、国籍、年齢、性別、性的指向・性自認、宗教、信条、文化、障がい、価値観、ライフスタイルに関係なく、ラグビーへの関わりを希望するすべての人を受け入れることを約束いたします
- ●我々は、ワールドラグビーの憲章にも掲げられている「品位-Integrity-」「情熱-Passion-」「結束-Solidarity-」「規律-Discipline-」「尊重-Respect-」の精神を広く発信することで、多様な思想や価値観をもった『誰もが生きやすい共生社会』の実現に向け、一層の努力をしてまいります
- D&Iを推進することの意義
我々は、スポーツを通じて人々が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営むことができる社会の実現に貢献するために、D&Iの活動を推進します。ラグビーが誰もが楽しめるダイバーシティ(多様性)を持つスポーツであり続けることには、以下のような意義があると考えています。
- 様々なバックグラウンドを持つ人々への理解と認識が深まり、オープンで誰もが受け入れられる生活環境を実現することができる
- ラグビーをする層、支える層、楽しむ層が拡大され、より多くの人がラグビーに触れる機会が増えることで、色々なサポートやパートナーシップの可能性を拡大することができる
- 日本ラグビー界におけるD&Iの取り組み方針2021
東京オリンピック・パラリンピック競技大会では、「多様性と調和」が基本コンセプトの1つとして掲げられ、共生社会をはぐくむ契機として、我が国に多大なる影響を与えました。この大きな流れを止めることなく、レガシーとして後世に残していくために、ラグビー界においてもD&Iの取り組みを一層強化していく必要があると考えています。その第一歩としては、色々な「声を聞く」ことから始め、聞こえた声を様々な施策の中でひとつずつ実現していくことが重要であると考えています。
我々は、これまで長きにわたり、ラグビー憲章等を通じた価値感の共有をはかってきました。それは、これからも変わらずに継続してゆきます。また、2021年3月に、JRFUとしての「JAPAN RUGBY中期戦略計画2021- 2024」を策定し、公表しました。この中で、「誰でも、いつでも、どこでも楽しめるラグビー社会をつくる」や「ラグビーのチカラを使って、社会の役に立ち、世界を守る」を目標として設定し、また、「ラグビー憲章やラグビーのバリューを発信するコミュニケーション」を具体的な業務プランとして掲げ、D&Iを含めた理念の実現を目指した各種活動を開始しました。今後は、この中期戦略計画の推進を通じて、D&Iに対する行動計画(アクションプラン)を実施してゆくことで、誰もが生きやすい共生社会の実現に貢献していくものといたします。
以上
◎D&Iに関するJRFUのこれまでの取り組みと課題 2021
JRFUのこれまでのD&Iに関する取り組み
JRFUではこれまでも、全てのプレーヤー、コーチ、レフリー、関係者、ファン、その他全てのラグビー関係者にとって、ラグビーがオープンで、差別のない、魅力的なスポーツであり続けるための施策に取り組んできました。ノンコンタクトのタグラグビーなどを活用し、生涯スポーツとしてのラグビー普及活動を推進しているほか、各連盟と連携の上、障がい者ラグビーを紹介する機会を設けるなど、年齢や障がいに関わらず、誰もが気軽に参加できる競技であることを目指して現在も活動を継続しています。女子ラグビーの普及に関しては、女性の指導者やマッチオフィシャルの育成体制の整備など、女性が参加しやすい環境の整備を進めています。さらに、ラグビー関係者への行動規範や規程の中で差別の禁止を掲げるとともに、国際交流や道徳教材を通じたダイバーシティ教育を行っています。
また、我が国のラグビーを統括する組織として、自らが多様性を受け入れる体制の構築を進めています。2018年に設けたインテグリティ相談窓口では、ラグビーにおける暴力行為等に関する相談を外部弁護士が受け付ける体制を整備し、併せてインテグリティ教育の機会を継続的に設けることで、差別的な行為や言動の解消に努めています。2021年には、スポーツ中央競技団体ガバナンスコードで求められている女性理事割合40%以上という目標を達成し、多様な意見を取り入れた活発な議論を促進しています。
JRFUにおける足元の課題
JRFUでは、D&Iに対する取り組みを積極的に奨励推進していますが、未だ多くの課題があるのも事実です。例えばジェンダー平等に関して、協会職員における女性の割合は約27% であり、経営職は7名のうち女性は0人、部長職 15 名のうち女性は1名のみとなっており、人材の採用、育成、活躍推進は経営上の課題であります。そのほか、障がい者の職員登用含め、多様な人材が活躍できる職場環境の実現に向けた課題は、まだまだ未整備な部分が多く、今後は多面的な調査を実施した上で、ひとつひとつ対策を講じていくことが重要であると認識しています。
ラグビーのプレー環境に関しては、競技人口における女性の人数は、2011年の2,446人から2020年には5,130人と大きく増加していますが、総競技者数91,892人に対してはわずか6%弱にとどまっており、今後のさらなる取り組み・対策が求められています。特に、コンタクトスポーツであることから、男女や大人子どもが入り混じってラグビーを楽しむ環境を整備していくことには難しさがあり、乗り越えなければいけないことが多くあります。プレーヤーウェルフェアを最優先した競技環境の整備について、更なる検討が必要と考えています。
◎D&Iへ向けたJRFUのコミットメント 2021
JRFUは、このD&I推進宣言を実現するため、我々自身が多様性を受け入れ、体現する必要があると考えます。その目的を実現するため、2024年度末(2025年3月末)までに以下の項目を達成することにコミットいたします。進捗については今後協会ホームページやアニュアルレポートにて報告してまいります。
<女性の活躍促進へのコミットメント>
JRFUは、多様性のある職場が新たな発想や視点を生み、組織の活性化やイノベーションを促進することにつながるものであると考えます。当協会の職場における女性の活躍促進は、ラグビー界のD&I推進にとっては必然であり、また、”世界一の協会”を目指すうえで当然ながら達成してゆくべきものであると考えています。この視点から、JRFUでは、以下の目標値を掲げ、達成に向けた各種取り組みを推進してまいります。
- 女性の理事の割合 40%以上 (2021年9月現在 40%)
- 女性経営職(事業遂行責任者)の登用 1名以上 (2021年9月現在 0名)
- 女性部長職(部門長)の割合 15%以上 (2021年9月現在 6%)
- 女性の職員割合 35%以上 (2021年9月現在 27%)
<多様性を持った共生社会の実現に向けてのコミットメント>
ラグビーが”誰でも、いつでも、どこでも楽しめる”スポーツとなり、”ラグビーが世界一身近な国へ"というミッションを実現するためには、全ての人たちがラグビーと関われる環境を整備する必要があります。そのために、JRFUでは以下の点にコミットいたします。
- 障がいを持つ方の協会業務への関わりの促進(障がい者雇用/委員会委員)
- 障がいを持つ方・高齢者・女性・子供など全ての方が楽しめるラグビー観戦環境の整備
- 各種障がい者スポーツ団体との連携協定促進
- 理事、経営職を含むJRFUマネジメント層の国際化促進
- ラグビー界でのLGBTQへの理解の促進
これらのコミットメントに対しては、今後多面的な調査を実施したうえで、具体的なKPIを設定してまいります。
その他のアクションプランについてはこちらをご参照ください。
2021年9月15日制定