今シーズン、関東学院に破れ日本選手権で一矢報いたい早稲田大学と、来シーズンにトップリーグ入りを決め、学生には負けられない古豪・九州電力キューデンヴォルテクスとの興味ある対戦となった。 早稲田大学のキックオフで始まり、両チームのFW集散はほぼ互角の中、前半4分に早稲田大学ゴールラインから10m付近の右サイド九州電力ボールのラインアウトを、BKが左に展開しゲインラインを突破。SO齊藤が倒されながらもFBピーターにパスし、ピーターがパワーを生かしゴール左中間に先制トライ。 怪我を押して出場していた早稲田大学東条キャプテンが、残念ながら12分で入替。一方、九州電力もBKの要のナイサン・グレイが、前半14分に怪我のため交代。 前半22分。九州電力自陣5mからの早稲田大学ボールのラインアウトのこぼれ球を、NO8林がうまくリカバリーし、そのまま左中間に持ち込み同点トライ。 前半27分、九州電力自陣中央10mライン付近のラックを九州電力がターンオーバー。SO齊藤から受け取ったFBピーターが抜け出し、約40mを走り抜き最後は早稲田大学CTB今村の追走をゴロパントでかわし、自らボールを押さえ左隅にトライ。ゴールも決まり12対5。 前半30分、ハーフラインやや右側から九州電力のノータッチキックを、SH矢富→FB五郎丸→CTB今村と繋ぎ、今村が九州電力のタックルをかわし、右中間にトライ。ゴールも成功し12対12の同点。 前半38分、早稲田大学自陣22m付近からの、九州電力の連続攻撃。SO齊藤がガラ空きの早稲田大学インゴールへショートパント。またまたピーターが左中間で押さえトライ。ゴールも成功し19対12。 前半ロスタイムの43分に九州電力はPGを決め、22対12の10点差で前半を終了。 後半開始早々、中央付近九州電力ボールのこぼれ球を早稲田大学がセービングしターンオーバー。右へすばやく展開し、FB五郎丸が九州電力自陣右側深くにキック。このボールを九州電力がカバーするが、さすがに人数が足りずペナルティー。ここで、早稲田大学はラインアウトを選択。マイボールラインアウトからのモールで九州電力を押し切り、19番笠原右中間にトライ。ゴール成功し22対19の3点差となる。 後半15分には九州電力のキックを、センターライン左付近からWTB管野がFB五郎丸へロングパス。五郎丸はWTB首藤へとつなぎ、首藤は九州電力のディフェンスを振り切り約30mを走り切り右中間へトライ。ゴールも成功し22対26と逆転。 後半18分、早稲田大学自陣10m付近のラインオフサイドを、九州電力は左奥へタッチ。早稲田大学ゴール前からのラインアウトでモールを作り、これを押し込み、昨年卒業した早稲田大学OBのFL松本がトライ。ゴールも成功し29対26と再逆転。 後半20分を過ぎあたりから、九州電力のFWが早稲田大学FWにプレッシャーを掛け始め、早稲田大学はマイボールスクラムの確保にも苦労しだす。 勝負所となった時間帯。 九州電力は、後半29分にハーフライン付近左サイドから、2人飛ばしのパスを受けたFBピーターに繋ぎ、ピーターは早稲田大学BKラインのずれたスペースを旨く突き、最後は早稲田大学WTB首藤を振り切り右隅へトライ。ゴールも決まり36対26と10点差とした。残り10分で10点差となり、勝負はほぼ決まった。後半のロスタイム42分に早稲田大学WTB菅野が意地のトライを返すが、最後は36対33でノーサイドとなった。 九州電力FWのブレイクダウンでのプレッシャーとBKの要所要所でのタックル、そしてミラーの個人技が目立ったゲームであった。早稲田大学はBKでは引けを取らなかったものの、FWの中心メンバーを怪我で欠き、接点での劣勢を克服できなかった。(児玉隆一郎) 中竹監督(右)、東条キャプテン 九州電力 36-33 早稲田大学(2月3日) ◎早稲田大学 ○中竹竜二監督 「前半から、激しく強いラグビーをして来ることは分かっていましたが、思っていたより簡単にターンオーバーされたのが象徴的な試合でした。後半は、早稲田のラグビーをしようとしましたが、矢富が徹底的にマークされ、2人、3人と絡まれて結局はチャンスを失ってしまったのが敗因です。 ミラー選手については、今シーズンの情報がなく、作戦の立てようがありませんでしたが、一発で行かれたり、カウンターキックありと力のある選手でした。このチームに勝てなかったのはうちの力の足りなかったところです。来季のことは考えていませんでしたが、今年のチームのブレイクダウン、修正する力など良いところを残していきたいと思います。今日も指先まで意識された目の覚めるようなイーブンボールへのセービングもありましたので、選手たちを称えたいと思います。ただ、ディフェンスではチームとして確立できず、徹底できなかった部分があり、そこが僅差を詰められなかった原因です。個々の倒れない力、意識、ディフェンスラインをすばやく整備する力など、ベースのところをもう一度チームとして徹底していきたいと思います」 ○東条雄介キャプテン 「ブレイクダウンのところで劣勢になってしまいました。しかし、ターンオーバーやキックカウンターから持ち味の外へ回すラグビーをして、ラインアウトも修正した点をお見せすることができたと思います。単純に力の差で負けたと思います。確かに、僕自身も練習できず、バイスの後藤も怪我で、学生ですのでテストで人が揃わなかったことなどはありましたが、言い訳に過ぎません。最終的に早稲田の力がまだまだ足りなかったのかと思います」 神田監督(右)、川嵜キャプテン ◎九州電力キューデン ヴォルテクス ○神田識二朗監督 「今日は学生相手ということで、やったことのないタイプと試合をやるので、選手には予期せぬことが起こるがバタバタしないように言ってきました。しかし、開始早々グレイが壊れてしまい、プランが崩れました。陣地を取って、敵陣で勝負しようとしましたが、2、3、ミスキックでカウンターを食らって厳しいゲームとなりました。ただ、ピーターをフルバックで使い、タッチキックを蹴らず、奥へ蹴ってくると思っていましたので、それは、うまくはまったかと思います。 最初のトライは準備していた形でしたが、シーズン中の継続した攻撃で得点するいつものプレーができなかったのではないかと思っています。次は望んでいたトップリーグのチームとの試合で、ここまで1年やってきたことを出して、僕らの力がどのくらいのレベルにあるのか確認したいと思います。日本選手権に出場できるのは名誉あることです。 早稲田のOBとしての発言ですが、今シーズンは良く頑張ったが、ややディフェンスの弱いところがあったと思います。しかし、激しいランニングラグビーをしたし、厳しいタックルもしてくれたし、新しい選手もこの試合に出て良い経験になったので、来年も頑張ってくれるのではないかと思います」 ○川嵜拓生キャプテン 「試合前から早稲田さんは良いチームだと思っていました。特に対策は立てませんでしたが、自分たちのやってきたことを確実にやろうと臨みました。しかし、この雰囲気で正確にプレーできないところがあり、自分たちのペースを終始つかめませんでしたが、それが今日であって良かったと思います。1週間、FW、BKできる限りの修正をして頑張っていきたいと思います。特に大学では、早稲田と関東学院はレベルの高いラグビーを続けていますので、自分たちのほうが弱いのではと感じていました。九州の中ではこういう試合はなかったですが、トップチャレンジでプレッシャーのあるゲームをやったおかげで、十分対応できたのだと思います。九州での試合は九電の応援ばかりですので、こういうゲームが体験できて良かったと思います」