東芝ブレイブルーパスがヤマハ発動機ジュビロに対して、堂々とした横綱相撲を見せた一戦だった。試合開始時間には、雨も上がり、気温は低いがグラウンド状態もまずまずの中で風下ヤマハのキックオフで試合は開始された。『前半最初10分のブレイクダウンがすべてだった』と、試合後の記者会見でヤマハ堀川監督が語ったように、東芝が一対一の強さでヤマハを圧倒した。 東芝は、4分中央ラックから右へ大きく展開、CTBマクラウド-WTB吉田でトライ。11分には、得意のモールを押し込みポスト直下にNO8ホルテンがトライ。14-0とリードする。ここまではスクラムはヤマハやや優勢。ライアウトは両チーム共に不安定だった。東芝は、28分に廣瀬、35分に立川がトライとたたみかけ、28-0と大きくリードする。40分を過ぎてからヤマハは、東芝ゴール前に殺到し連続攻撃を仕掛けるが、東芝のディフェンスは固く、無得点で前半終了。(東芝28-0ヤマハ) 後半は青空も見える天気で開始された。ヤマハは、4分東芝ゴール前のモールから右へ展開FBウィリアムスがコーナーぎりぎりにトライ(東芝28-5ヤマハ)。その後交互にトライを取り合い(東芝40-10ヤマハ)勝敗の行方はほぼ決まった。32分東芝PR笠井が反則の繰り返しでシンビン。アドバンテージを得たヤマハは再三ライン攻撃を仕掛けるが実らず、逆に40分東芝はヤマハのミスからのボールを拾いBKでつないでトライ。(東芝47-10ヤマハ)結局そのまま試合終了。 試合を通して、ヤマハのアタックが東芝のディフェンスを崩せなかった印象。東芝はラインアウトも修正され、全員がグランドを走り回り良い試合内容。決勝戦での好ゲームを期待したい。(新井章久) 堀川監督(右)、木曽キャプテン 東芝ブレイブルーパス 47-10 ヤマハ発動機ジュビロ(2月18日) ◎ヤマハ発動機ジュビロ ○堀川隆延監督 「こういう天候にもかかわらず、磐田からヤマハのファンの皆様にお越しいただいて、素晴らしい環境で準決勝を戦うことができたことに感謝いたします。1年間サポートしてくれたすべてのスタッフ、家族の皆様にも感謝いたします。スコアのとおり、1対1の勝負で東芝さんのほうが上でした。ヤマハのラグビーは後半30分過ぎにようやくお見せできたかと思いますが、前半のブレイクダウンがすべてでした。しかし、去年の7位から大きく成長できた1年だったと思います。足りないものを見つけさせてくれた東芝さんに感謝したいと思います。課題が見えたので、もっと強くして、来年、東芝さんと戦いたいと思います。想定以上にブレイクダウンと2人目、3人目のうまさ、強さを感じました。悪天候で、こちらはゲームプランとしてキックを使っていこうとしましたが、ファーストフェイズからなのか、3次からか、選手に混乱をさせてしまった部分がありました」 ○木曽一キャプテン 「悪天候のなか、グラウンドに足を運んでくださったファンの皆様、1年間ヤマハに声援を送ってくださったサポーターの皆様にお礼を申し上げたいと思います。正直いって、頭の中は真っ白で、いろいろな思いがありますが、堀川監督が申し上げたとおり、点差が物語っています。完敗です。前半、受けてしまったのがキーポイントでした。東芝さんのプレッシャーが強く、前でディフェンスできず、力のなさを痛感しました。ブレイクダウン、1対1の強さに課題があります。もう一度、初心に戻って来年もやっていきたいと思います。ディフェンスの強いチームは他にもあると思いますが、東芝さんはディフェンスからブレイクダウンの仕掛けが早くて強いと思います。僕自身のコンディションは悪くなかったのですが、やはりトップリーグチャンピオンの相手だけに乳酸が溜まりましたね(笑)。東芝さんはモールを押して人数が減ってきたところでアウトサイドを突くという、本当にシンプルだけど止めにくいラグビーでした。敗因は、モールを作らせたことです」 薫田監督(右)、冨岡キャプテン ◎東芝ブレイブルーパス ○薫田真広監督 「試合前の天候で、雨上がりの風が心配でしたので、慎重に考えました。おそらくヤマハさんは後半は2人の外国人がキックで細かく蹴ってくるだろう、風下になったときの苦しさとラインアウトが獲得できないときのリスクを考え、もう、今までどおり攻めるしかないとキャプテンと相談して、前半、風上を選択しました。誤算だったのは、ラインアウト、特に宮下のところで獲れたこと(笑)。今日の試合の一つのポイントでした。ここ何試合かのディフェンスも良く、今日は2トライは獲られましたが、冨岡中心になかなか崩れないラインコントロールをしてくれて、感謝しています。 残り1試合となりました。トヨタさんとは本来のラグビー、真っ向勝負をお見せできるのではと思います。個人的なことですが、東芝の監督として、また、冨岡キャプテンとずっと5年間一緒にやって来てのラスト1試合ですし、また、このチームの最大の目標を日本選手権においてきましたので、特別な思いがあります。選手たちにはここまで来たので、最後はリラックスして楽しんでもらいたいと思います。前回のトヨタとの試合では、スタートメンバーが違います。最大のポイントはあの試合では廣瀬がWTBで吉田大樹がSOでしたが、今は逆で、得点能力が違います。今日、選手にはこの1年、練習してきたオプションを出し惜しみせずすべて出しなさいと言いました。トヨタさんの今日のメンバーはまだ見ていませんが、後半、インパクトプレーヤーが入って、外にスピードのある良い選手がいるので注意したいと思います。うちも宮下、石澤を使って、面のディフェンスが崩れなかったのは収穫でしたし、バツベイも間に合いそうですので、両チームにとって22名の(入れ替えの)駆け引きも楽しみたいと思います。 (清宮監督のシナリオが崩れたが?)私が言うことではないと思います(笑)。現実に日本選手権の最後に戦うのは大変なことです。僕もトヨタさんのほうが強いのかなと、正直思っていました」 ○冨岡鉄平キャプテン 「ゲーム前から、雨がやみ、風が強くなりそうなので、陣地は風下を選択しようと思っていましたが、急遽、最終的に監督が『思い切って前半から行ってしまおう』と判断して、風上を獲り、皆、一気に乗ってゲームに入っていけました。うちは、いつも2本獲った後に獲られているのですが、今日は3本、4本と連続して集中力が切れずに獲れたのが良かったと思います。ヤマハさんは前回と印象が変わりませんでした。前回はこちらのメンタルな面の問題があり、負けるべくして負けた試合でした。うちも、その後、プラスアルファの経験をしてきましたので、今日は今までやってきたことを出せました。今日の結果は皆の成長の証だと思います。トヨタさんは今シーズン、ラグビーやってきて、一番強いチームだと感じています。はっきり言って、大阪では僕はトヨタさんが勝ち上がると思っていました。僕も、前回のアフターマッチファンクションで、ぜひもう一回やりたいと言った相手です。一番魅力あるチーム同士ですし、お互い監督がチームを離れることが決まっていますので、両チームとも気持ちを込めた試合ができると思います」