予選プールではNZ、サモア、スコットランドと対戦
逆境を乗り越え、コアメンバーとしてSWS初白星を

12月5、6日、HSBCセブンズワールドシリーズ(SWS)2014-2015第2ラウンドとなるドバイ大会が行われる。
今季、SWS全9大会に参加する資格を得た日本は、09年にRWCセブンズも行われたドバイのザ・セブンズ競技場で、15チームからなるコアチームの一員として初の1勝をものにした上で、上位進出を目指す。

(text by Kenji Demura)

豪州大会では0-59で完敗した、王者ニュージーランドとの再戦でドバイでの戦いをスタートさせる男子セブンズ日本代表
photo by RJP Kenji Demura
前回以上のモチベーションで来るNZに対して「存在感をしっかり出していく」(瀬川HC)戦いをしたい日本(写真は豪州大会NZ戦での羽野)
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コアチームとして初めて臨んだSWS2014-2015第1ラウンドの豪州大会(10月11、12日=ゴールドコースト)。
初日の予選プールで対戦したサモア、ニュージーランド(NZ)、フランス、2日目のボウル準々決勝でのアメリカ、同シールド準決勝でのケニアと、計5試合を戦って5敗。
直前のアジア競技大会で金メダルを獲得した男子セブンズ日本代表にとっては、改めて厳しい世界の壁を痛感する大会となった。

「集まった時には『セブンズとは』から始まった」
ゴールドコーストセブンズ開幕前にそう語っていたのは、坂井克行キャプテン。
前述のとおり、豪州大会の前週に行われたアジア競技大会で3大会連続となる優勝を果たしていた日本だが、韓国・仁川で金メダルを獲得したメンバーのうち、翌週のSWSでプレーしたのは4人のみ。
「セブンズ自体初めてで、何が何だかわからず来たというのが正直なところだった」(芦谷勇帆)というように、初めて世界レベルのセブンズの大会を経験するメンバーも少なくなかった。
想定していたコアメンバーに故障者が相次いだことなどもあり「ぶっつけ本番」(瀬川智広ヘッドコーチ)という状況で臨まなければならなかったことを考えれば、結果的に大会最終戦となってしまったケニア戦で後半6分までリードするなど、チームの急成長には目を見張るものもあった。
「やればやるほど、どんどん良くなったので、もう一度このメンバーでプレーしたいと思っている」と、坂井主将が語ったとおり、全敗に終わったものの、若手の成長も明らかだった豪州大会から2ヶ月弱。

今回、コアチームとしての初勝利を目指す男子セブンズ日本代表は再び多くのメンバーを入れ替えてドバイ入りしている。
アジア競技大会、豪州大会共にプレーしたのは、坂井主将、桑水流裕策、羽野一志の3人のみ。
アジア競技大会金メダリストでは、鈴木貴士が復帰。
一方、アジア競技大会には参加せずに豪州大会でプレーしたメンバーは三木亮平、首藤甲子郎、後藤駿弥、百武優雅の4人。

多くのコアメンバーがコンディションの問題などで参加できなかったりと、直前合宿も少人数で行わざるを得ないのが現実でもあった。
メンバーも変わり、準備期間も短いという条件から言って、豪州大会同様、「ぶっつけ本番」度はかなり高い状態で臨むことになったドバイ・セブンズ。
5日に予定されている予選プールで日本が戦うのは、NZ、サモア、スコットランド。前述のとおり、NZとサモアは豪州大会でも対戦している。

前回の反省もふまえ、瀬川HCは以下のように予選プール最初の2試合に関する戦い方を説明する。
「NZに関しては、前回はNZということを意識しすぎて、よそ行きな、チャレンジの気持ちが全くないような戦いになってしまった。あまりにも何もさせてもらえなかった。アタックもほとんどできなかった。
なので、もう一度マインドをリセットすることが重要。僕たちの良さというか、やってきたことを出せるように再確認して臨む。ブレイクダウンでしっかりボールを出して、ディフェンスでも粘って。
ニュージーランドにとっても前回はふがいない大会になった(カップ準々決勝でイングランドに敗退)ので彼らもチャレンジしてくる。モチベーションとしては前回以上ではないか。そういう状況で僕らとしても存在感をしっかり出していかないといけない。
サモアに関してはアタックの部分ではいい形でフェイズを重ねられた部分はあった。それは継続していきながらトライにつなげていく。ディフェンスに関しては、本当に何回かしかチャンスを与えていないのに、それを全部トライにつなげられた。そこを4フェイズ我慢するかたちで何とか粘っていく」

一方、予選プール最終戦で対戦するスコットランドに関しては、今年5月のロンドンセブンズで破るなど、「トップユニオンの中では相性はいい」というのが瀬川HCの認識だ。
「今回のスコットランドの特徴も過去に勝った時のチームとそう変わっていないと思う。ここで必ずひとつでも勝つ。もちろん、カップに行くのが目標ではあるが、現時点ではひとつひとつ結果を積み重ねていくことが重要になる」

豪州大会のサモア戦ではいきなり坂井主将の先制トライ(写真)が飛び出したが、その後6連続トライを許し大敗。リベンジなるか
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坂井主将と共に前週のトップリーグの試合でフル出場した桑水流。「ボールキャリーが良くなった」と語るがコンディションが気になるところ
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状況判断が求められる方向での修正
経験値の高い選手たちの活躍に期待

再びメンバーが大きく変わり、事前準備も思うようにはできない厳しい環境の中、まずはコアチームとしての1勝を刻みたい日本。
具体的には、以下のような形で豪州大会からの修正点を絞り、ドバイ大会に臨むことになる。
「(豪州大会では)トライチャンスにトライを取り切れていなかった。アタックに長い時間かけても最後ゴールラインを割れていない。4対3とかになっても外側のスペースを使い切れなかったりした。原因はラインの深さだったり、パスの切り方だったり、不要にファーストレシーバーが流れてしまったり。流れてしまうと、相手はカバーDFで内側からしっかり追い上げてくるので、時間を殺してしまうことにもなる。
なので、ケースバイケースでトライチャンスでは浅く切っていったり、単純に速いパス回しをしたり。外国人はタックルでしっかりコミットしてくるので、しっかり引きつけたドローパスを使うと、そのまま外のスペースを使えるケースが多い。
そういう状況に応じた攻撃の切り分けをしようというのが今回の大きなポイントのひとつ。
それから、ブレイクダウンの質の問題がある。ターンオーバーされる割合は16チーム中ワーストに近い数字が出ているし、ボールを出せている率も他のチームに比べて圧倒的に低い。
日本はブレイクダウンとパスの回数が多いが、ブレイクダウンを持つことがいいことなのではなく、接点からいいリサイクルをする方法を考えてプレーしていく。
コンタクトシチュエーションの後、ボールが早く動いているのか動いていないのかを突き詰めて、コンタクトの前とコンタクトの中でどうしていくのかにフォーカスしていく。
ディフェンスでは、攻めて、攻めて、最後にボールを取られたら一気に走られるというパターンでの得点ばかりだったので、4フェイズ我慢できるディフェンスに切り替える。最終的には速いディフェンスをしたいが、合わせる時間もなく、前後に動き続けるフィットネスもなく、その状況でやりたいことだけやっても、恐らく結果は出ない。
現時点でやらなければいけないのは、まずはタックルができるシチュエーションを作ること。そのためには、出られない時には我慢して面をつくることを優先する方向に切り替えようとしている」(瀬川HC)

試合の中で多くの状況判断が求められる方向での修正ということもあって、瀬川HCはコアメンバーだけではなく、ベテラン勢の活躍にも期待を寄せる。
「吉田大樹はゲーム理解力が高いし、基本的なスキルもある。鈴木貴士はゲーム経験が少ないメンバーの中で経験値を持っている。
首藤は相当準備して来てくれている。コンディションも良さそうだ。1大会(豪州大会)経験したので、順応力というか、サモアだったり、NZだったりとまた同じ相手と当たるので、この相手にはこう戦う、というふうにイメージしたものを出してくれることを期待している。
ゲームの駆け引きも含めて、彼らの経験値が生きてくるはず」

今大会も厳しい条件での戦いとなるが、その厳しさを乗り越えなければ世界での勝利はつかめないことを知るメンバーも多いだけに、是が非でも次につながる結果を出してもらいたいところだ。

セブンズでは163cmの選手にこんな役割も。「セブンズモードに切り替わっている」という首藤は豪州大会の経験を生かし、さらなる貢献を目指す
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豪州大会、アジアセブンズシリーズ、大会を重ねるごとにセブンズへの理解度が深まっている百武。元々あるラグビー力への期待度も高い
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なんと7年ぶりのセブンズ日本代表でのプレーとなる吉田。ベテランらしいゲーム理解力でチャンスをつくり、ピンチを救うプレーに期待がかかる
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豪州大会では5戦5敗に終わった日本。ドバイ大会ではコアチーム入りして初となるSWS勝利を是が非でもものにしたいところだ
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