早大確実な勝利で2回戦に進出
日本選手権1回戦でこの対戦は3度目。全国1,400のクラブチームの代表としてこの選手権一勝を悲願とするタマリバだったが、14回の大学選手権優勝の勢いに乗る早大の力強さは揺るぎ無かった。前半の早大はキックオフのミスでスタートし、大学選手権決勝から1ヶ月以上空いた試合勘が危ぶまれた。11分にはラックの連取からタッチライン際に覚来が飛び込んで先制するが、タマリバのスローペースに合わせリズムが上がらない。タマリバはラックの停滞から早大FWをじらし、その周辺の攻撃でゲームの支配を試みる。特にラインアウトでは桑江主将を中心にゴール前で14人を並べるなど、思い切った作戦でスタンドのどよめきを誘う。毎回人数を変えるラインアウト、そこからの縦に長いモールを組んでの早大対策は、再三早大ゴールに迫るがもう一歩で押し切れない。早大は34分にWTB田中、38分にはゴール前のスクラムを強烈にプッシュしNO8豊田が飛び込みトライ。攻撃のテンポに苦しみながらも点差を拡げた(前半19-0)。

後半は立ち上がりからタマリバが戦い方に変化を見せた。SO竹山が思い切って前にしかけながらセーフティーゾーンを攻める。アングルを変えながらランナーが次々と飛び込み早大ディフェンスを崩しにかかる。前半とは一転してタマリバのテンポはアップし、タマリバのラグビーの持ち味がグラウンド全体に広がり始めた。しかし、ここからの受けの強さが今年の早大の特徴でもある。早大15人はグラウンド全体に拡がり、1対1の場面でしっかりタックルで止めきる強さを持っている。「日本一前に出るディフェンスを目指す」という中竹監督の言葉どおりに、穴のない、強いプレスがタマリバの攻撃を押し戻した。グラウンドを大きく使った攻防が始まると早大の攻撃力がよみがえり、5つのトライでタマリバを突き放した。ゲーム終盤からはSH櫻井、SO山中、CTB宮澤、坂井、WTB中濱ら1年生BKが快走を見せ、タレントの豊富さにスタンドを沸かせた(後半29-0)。早大は安定した戦いぶりで2回戦に進み、いよいよトップリーグの上位チームと対戦する。早大の掲げる「前に出るDF」「動き出しの速さ」、そして次の戦いへの秘策が、秩父宮の観衆にラグビーの魅力をたっぷりと見せてくれることを期待したい。(照沼 康彦)

早稲田大学 48-0 タマリバクラブ 早稲田大学 48-0 タマリバクラブ 早稲田大学 48-0 タマリバクラブ
早稲田大学 48-0 タマリバクラブ(2月23日、1回戦 at秩父宮ラグビー場)

タマリバクラブの高橋代表(右)と、桑江キャプテン タマリバクラブの高橋代表(右)と、桑江キャプテン

◎タマリバクラブ
○高橋清貴代表
「早稲田はご承知の通り、名実ともに大学チャンピオンです。我々は1,400のクラブの代表として何としても勝ちたい試合でした。十分に研究して臨みましたが、通じるところも通じないところもあった試合でした」

──通じたところは?
「今回、1年やってきたディフェンスと一人ひとりの仕事量を多くすること、ここは良かったと思います。ラインアウトも、早稲田のラインアウトを研究して合宿もして練習してきましたが、ある程度実績を残せたと思います。一つ一つの局面や対戦相手を研究して自分たちのラグビーをするのがこのチームの特長ですので、来シーズンもこれで臨みたいと思います」
──週5、6日練習すれば勝てるか?
「各自、週4日しかない中でも他に走ったりしています。各自のつけた力を土日に集めています。もちろん、週6日やれば強くなると思いますが、現在の環境でできることをやっていくだけです」

○桑江崇行キャプテン
「今日の試合はなんと言ってよいのか、過去2回、学生チャンピオンと戦ったのですが、これだけフィットしてベストメンバーで臨めた試合は今までで初めてです。気持ちよく戦えました」

──これだけ獲られたのは?
「点差自体は参考にならないと思います。今年の早稲田は一人ひとりがタックルするし、穴がないと思いました。狙えば抜けるというところがあまりありません。走り合いになれば勝てないので、時間をゆっくり使おうとしましたが、この戦術はつまらないと、20点差ついたぐらいから、俺らのラグビーをやろうぜというところで逆に獲られてしまいました」

早稲田大学 48-0 タマリバクラブ 早稲田大学 48-0 タマリバクラブ 早稲田大学 48-0 タマリバクラブ
 

早稲田大学の中竹監督(右)と、権丈キャプテン 早稲田大学の中竹監督(右)と、権丈キャプテン

◎早稲田大学
○中竹竜二監督
「大学決勝からかなりの日にちが経ち、日本選手権に臨むため、はじめて宮古島でキャンプしました。暖かいところでやることのメリット、デメリットはありますが。色々なことを知っているタマリバとやるとグダグダしたラグビーになってしまいがちなのですが、今日は次につながるゲームでした。プランとしては『ペネトレイト』で、1年間やってきたことを出そうと臨みました。タマリバはあまり前へディフェンスが出てこないので、自分たちから仕掛けるようにしましたが、1本目のトライはそれが出た良いトライでした。前半は、キャプテンの桑江君にモール、ラインアウトでやられて苦しみました」

──次の試合は?
「相手が決まっていないので、どう戦うかとかはないが、我々で準備できた日本で一番よいところを徹底して出すしかないと考えています。3つありますが、1つはおそらく日本一前へ出るディフェンスです。接点のカバーとかはありますが、これを日本のラグビー界に見せたいと思います。2つ目はイーブンボールへの働きかけで、おそらくトップリーグを含めて一番だと思います。3つ目は戦術的なことなので、今度の試合で見せられればよいなと。勝ったときに『奇跡の早稲田』と言われたくないので、今のうちに言っておきます」

○権丈太郎キャプテン
「今日の試合は、自分たち、今年の権丈組として本当に今までやってきたことを出そうと準備してきました。4年生は早稲田で残された時間は少ししかないので、練習から後悔しないよう尽くしてきました。今日は難しい試合でしたが、うちの持ち味が出て、内容的には良い試合でした。ディフェンスは最後、前へプッシュをかけていないので、社会人にはゲインされると思います。修正して、最後までディフェンスが行けるようにしたいと思います」

──次の試合は?
「タックルで刺さって刺さって、刺さりまくるだけです」