マッチリポート
トーナメント表


三洋電機ワイルドナイツ 20-37 サントリーサンゴリアス

【準決勝/2011年2月27日(日) at 東京・秩父宮ラグビー場】

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サントリーのアタッキングラグビー、三洋の鉄壁ディフェンスに勝利、9年ぶりの日本一

今シーズン、トップリーグのリーグ戦ではサントリーの逆転勝ち、そして、プレーオフ決勝では三洋が勝って優勝。日本一を決める両チームの今シーズン三度目の対決で、サントリーのアタッキングラグビーが三洋の鉄壁のディフェンスに勝り、80分間、三洋の攻撃を抑えて、9年ぶりの日本一を勝ち取った。
今シーズンのこれまでの両チームの試合内容を見ても、実力は互角。それぞれがどれだけチームの強みをいかに引き出すか、どれだけ相手の弱みをつけるかが勝負を分けることになる。

試合は、前半5分に、まず、三洋FB田邉がPGを決め、3-0とリードした。三洋は、9分、サントリー陣に攻め込み、ペナルティからの速攻でCTB霜村がゴールライン直前まで迫るがサントリーバックスもよくディフェンスに戻り、簡単にはトライを与えない。逆にその直後、サントリーはターンオーバーからカウンターアタック、WTB小野沢の好走で敵陣に入り、ラックから出たボールをSOピシが三洋のディフェンスの隙をついてゴール前まで運ぶと、そこからラインの外には回さず、タテにタテにとの連続攻撃で最後はSH日和佐-WTB小野沢とつなぎトライ(ゴール成功)、3-7として、試合の主導権を奪い返した。その後、両チームともにPGを決め、6-10となったが、両チームともよくボールを動かし、激しい攻防が続いた。

三洋はゲームメーカーのブラウンが準決勝での怪我で欠場し、この日、SOには入江が入っている。ゲームメークでは、入江は全く問題ないとは思えたが、この日のサントリーバックスのアタックは、SOピシを中心に意識的に内に内にと攻め、三洋のSO-CTBあたりでのブラウンが不在のディフェンスの穴をつくように狙っていたようだ。
前半33分、サントリーは連続攻撃で22m付近のラックから出たボールをFB有賀が内へ切れ込み、CTBニコラス-WTB長友とつなぎ、トライ(ゴール成功、6-17)とした後、37分にも、スクラムからのボールを受けたSOピシが三洋のSH田中・SO入江のタックルをかわし、中央にトライ(ゴール成功)、6-24のスコアとして前半を終えた。

三洋は18点のビハインドとなったが、準決勝の東芝戦でも17点の差をひっくり返した三洋を知るサポーターも、三洋の選手たちも、まだまだ充分逆転の可能性はあると思っている。
後半10分、三洋FL劉へタックルに入ったサントリーCTBニコラスとWTB小野沢が味方同士でぶつかり2選手とも怪我での交替となり、その直後、12分に三洋がラインアウトからの2次攻撃で最後はHO堀江からNO8コリニアシへいいパスを通し、トライを返した(ゴール成功、13-24)。これで試合の流れが三洋に変わり、準決勝と同じように、これから三洋の逆転へのドラマが始まるかと思えた。

しかし、この日のサントリーは後半に入っても崩れなかった。後半16分にはサントリーボールのラインアウトでFLクレバーから、直接、ボールをブラインドサイドでうけたHO青木がゴールラインを割り、ボールを押さえ(ゴール不成功)、13-29として、サントリーは三洋になかなか点差を詰めさせない。三洋も、19分に、自陣からのカウンターアタックから、CTB霜村が約50m好走し、最後はCTBノートンナイトが押さえてトライ(ゴール成功、20-29)、9点差まで詰めた。

だが、この日は「サントリーの日」(ジョーンズ監督)だったようだ。トライを取られても選手が円陣を組み、フィフティーンの集中力を最後まで切らさなかった。
豪州代表139キャップで、この日を最後にラグビーの現役プレーから引退するグレーガンが後半17分から交替出場した。37歳での最終戦でも全く衰えを見せず、リズムのいいボールさばきでバックスを動かし、後半25分、サントリーは8次にも亘る連続攻撃の後、WTB長友がトライをとり(ゴール不成功、20-34)、その後も、セーフティリードとするPGを加え、20-37と点差を離して、ノーサイドとした。

エディー・ジョーンズ監督が着任して1シーズン。「アタッキングラグビー」を掲げ、その通り、80分間走り切り、攻め続け、優勝を勝ち取ったサントリー。敗戦後も「やり切った」という実感を笑顔で示していた三洋。日本のトップレベルのラグビーを見せてくれたさわやかな試合だった。(正野雄一郎)

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会見リポート
 

三洋電機の飯島監督(右)と霜村キャプテン
三洋電機の飯島監督(右)と霜村キャプテン

◎三洋電機ワイルドナイツ
○飯島均監督
「最後は負けてしまったのですが、選手は本当に良く頑張ったと思います。なかなかチャンスが回ってこず、サントリーさんはチャンスをしっかり得点したのがこの結果になったと思います。選手は最後まで良く頑張りました。悔しいですね。これを糧にしていきたいです。チームの名前は何になるかは分かりませんが、ステップアップする一つのエネルギーとして、また頑張っていきたいと思います」

──来年も陣頭指揮を執るのか?
「サラリーマンですので、人事権は私にないので(笑)。ゆっくり休んで考えます」

──SO周辺を狙われたが?
「サントリーさんの攻撃は8割から9割SHとSOに仕掛けてきます。私たちのシステム、タックルで守れなかったということです。前半はセットの出し方、ラックのテンポがよくて、見極められず、うまく気持ちをコントロールできなかった部分があったかもしれません」

──トップリーグ優勝でモチベーションが下がったのか?
「難しいですね。負けた方がエネルギーが出るのが人間です。いまひとつチームの力を引き出せなかった私の力不足です」

○霜村誠一キャプテン
「お疲れ様です。グラウンドから見て、沢山のお客様に見ていただき嬉しく思います。本当にサントリーさんは強かったです。今年は準優勝に終わり悔しいですけど、しっかり笑顔で帰りたいと思います。2011ワールドカップイヤーでもあるので、盛り上げていきたいと思います」

──笑顔で、とは?
「負けたときは悔いが残るものですが、今日はやり切ったので、相手が強かったと認めるという意味です。ふてくされても仕方ないですからね」

──サントリーはそれほど強かったのか?
「前回も強かったです。前回はうちの方が強かったですが(笑) 」

──何が強かったのか?
「(横から飯島監督が『ラグビーが(笑)』と一言)僕がビデオを見てもサントリーさんの方がずっと攻めていたと思います」

──ディフェンスは?
「全然とは言わないが、いつもどおり機能できませんでした。サントリーさんのアタックが良くて後手後手で、下がってのディフェンスになり、うまくいきませんでした」

──トップリーグ優勝でモチベーションが下がったのか?
「達成感が凄かったです。さらに次の東芝戦に準備して、あれだけの試合に勝つこともできて、達成感プラス自信にもなりましたが、それがどう作用したかは分かりません。東芝、サントリー、うちと、どこが勝ってもおかしくありませんので、いつかこうなるときが来ると思っていましたが、今日がその日でした」

三洋電機 20-37 サントリー 三洋電機 20-37 サントリー
三洋電機 20-37 サントリー 三洋電機 20-37 サントリー 三洋電機 20-37 サントリー
 

サントリーのジョーンズ監督(右)と竹本キャプテン
サントリーのジョーンズ監督(右)と竹本キャプテン
グレーガン選手
グレーガン選手

◎サントリーサンゴリアス
○エディー・ジョーンズGM兼監督
「結果はすごく嬉しく思いますが、自分たちのプレーができたことが嬉しいです。サントリーらしくボールキープし、FW。明日から準備に入りますが、選手はすこしゆっくり休んでほしいと思います」

──終わった瞬間は何を考えたか?
「ビール飲みたい(笑)。今シーズンはずっと練習してきましたが、最後の練習に43人全員が臨んでくれました。サントリーのプレーのやり方は勇気がなければできないのですが、それができたと。シーズン序盤は3試合やって2敗。それが日本一になったことを嬉しく思います」

──試合のプランは?
「キープレーヤーを仕留めることです。三洋さんは外国人を頼りにしていて、前半は5人がFWで外国人でした。そこでコンテストに勝ったことが大きかったです。アタックでは我々は相手の10番、12番をターゲットにしました。そこでゲインできたことが良かったです」

──マン・オブ・ザ・マッチは?
「22名全員です。それに、今日、プレーできなかった選手がヒーローです。練習のときからハードにやってくれました。選手が試合より練習のほうがきついと言っています。常に100%で練習した選手、もちろんキャプテンも素晴らしかった。さらに、今日の眞壁は信じられないプレーをしてくれました。何が良いのか分からないでやっているところが良いですね(笑)」

──ジョージが残してくれたものは。
「ジョージは常に競争心があります。勝ちたいという気持ちですね」

──ジョージに一言を?
「引退するときですよ(笑)。彼をコーチできたのは嬉しく思います」

○竹本隼太郎キャプテン
「前回のプレーオフファイナルより、タフにフィジカルに戦うことができました。時間の足りない中、修正して、試合を通して自分たちのラグビーができたことを嬉しく思います」

──後半、三洋に続けて獲られなかったことが良かったが?
「本当は一つも獲られたくなかったのですが、やはり三洋さんは強いので、獲られたときは、次はリラックスして正確なプレーをしようと声を掛けて、それができたと思います」

──頻繁に円陣を組んだが?
「やはり、言いたい選手が多いが、ハドルを組むことによって一人の言葉に集中し、1つのプレーに集中できたと思います」

○ジョージ・グレーガン選手
「サントリーの選手として良い終わり方ができました。今シーズンは大きなチャレンジをしましたが、準備、姿勢、態度、スピリッツが去年までとは違いました。サントリーのアグレッシブ・アタッキングラグビーは難しいし、三洋さんはとても良いチームで、決勝で勝つことは難しかったのですが、やり遂げることができました。1対1のアタック、ディフェンスが良かったと思います。(オーストラリアの、と言い間違えがありましたが、訂正して)サントリーのスタイルのラグビーは、若い選手もいるのでさらに成長して、長い間日本のラグビーを牽引すると思います」

──日本のラグビーへの提言は?
「日本のラグビーは3年前と比べてすごく良くなっています。トップリーグでも4から5位までのチームは向上しています。さらに上げ続けることですね。試合の流れも良くなり、そのことで選手も良くなっています。これはあるべき未来です。もし、できたら日本のラグビーに希望が持てます」

──ゲームコントロールが難しい場面で入ったが?
「すべてのゲームで後半20分過ぎからは重要です。今日はやっている選手が、今までやってきたことを信じることができました。特に疲れているときにやるべきことをやるのが信頼感を生みます。シーズン最後までハードに一生懸命練習をしたのが、決勝で勝てた要因です」

──日本での一番良い思い出は?
「今日、日本選手権に勝てたことです。他にもあるのですが、思い出が多すぎて難しい。家族にとっても日本は良かったです。プレーしている間にエディーにコーチしてもらえて良かったです」