第22回「みなとスポーツフォーラム」リポート(岩渕健輔氏)

岩渕GMが語る「日本代表強化計画」

5月21日に開催された、東京都港区と日本ラグビー協会が主催する「みなとスポーツフォーラム 2019年ラグビーワールドカップに向けて」に、日本代表GMの岩渕健輔氏が登場した。

選手としては、創造力溢れるプレーで日本代表の司令塔として活躍し、ケンブリッジ大留学や、イングランド、フランスのプロリーグも経験した。36歳の若さで日本代表GMを務める岩渕氏が、「日本代表強化計画」について語った。

■「強化の点と点をつないで線にする」

岩渕健輔

岩渕健輔氏

本日は日本代表GMとして「日本代表強化計画」についてお話しします。これまで、日本代表の強化はそれぞれ行われてきましたが、点と点になってしまっていました。私の仕事としてはその点と点をつないで線にすることだと考えています。2009年から協会のハイパフォーマンスマネージャーでやってきたことを、これからは代表でやっていくことになります。 まず、世界における日本の現状についてお伝えします。私たちは19年の日本開催ワールドカップでベスト8以上、7人制では16年の五輪でメダル獲得を目標としています。

現在の世界ランキングで日本は14位。過去最高は昨年の12位です。6月5日からのパシフィック・ネーションズカップ(PNC)で対戦するフィジーは16位ですが、トンガは9位、サモアが10位と日本より高く評価されています。PNCは上位のトンガやサモアと対戦できる貴重な機会となります。

14位から評価を上げて、19年ワールドカップで8強に入るために、強化の一貫指導体制の確立を目指しています。このことについてはエディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ(HC)と話し合いながら進めています。
一貫指導体制の確立のために、各代表の連携を強めて、日本代表のエディーHCから若手育成のジュニアジャパン、U20、高校代表のコーチ陣が集まる機会を増やします。これまでは各代表が連携をとることはあまりありませんでした。

■後半20分以降に失点が集中 目指すは世界一のフィットネス

この一貫指導で日本代表は何を強化すべきか。昨年のワールドカップを見ると、日本は後半20分以降に失点を重ねて突き放されています。過去のテストマッチを見ても、傾向は同じです。
まず、テストマッチ(国代表同士の試合)ではレベルの差があっても最初の20分は拮抗(きっこう)します。そして、後半20分以降に失点が増えます。日本はこの後半20分から、さらにテンポを上げるラグビーを目指します。そのためにはS&C(ストレングス&コンディショニング)の強化が必要です。ただ走るだけではなく、強いプレーが継続できるようにしなくてはいけません。
目指すのは世界一のフィットネスと、世界一のアタックです。

また、これまでのワールドカップで日本は24戦して1勝21敗2分けです。ワールドカップという極限の状況でベストパフォーマンスが発揮できていません。これは経験が少ないことも影響しています。ジョン・カーワン前HCの下で日本代表が欧州の強豪と対戦できたのは07、11年のイタリア戦のみです。しかも、この試合はワールドカップ直前だったため、イタリアにとっては調整の意味合いがありました。

どんどん強豪国と試合を組みたいのですが、実は19年までの上位国のスケジュールはほぼ決まっています。ワールドカップの成績でテストマッチの枠が決まっていくので、健闘したトンガやサモアは良いカードが組めています。

■世界トップ10に入るために覚悟を持って臨む

日本もこれからテストマッチで勝って、ランキングを上げて、上位国との対戦を増やしたいのですが、まず若手世代から国際経験を増やそうとしています。08年からユース世代はフランス、スコットランド、ウェールズ、イタリアと対戦してきました。そして高校代表ではこのレベルの国と戦えるようになってきました。

さらに若手を継続して指導するために「ジュニアジャパン」を立ち上げました。現在のスコッドは若手中心に37名で、2週間に一度のトレーニングを行っています。ここには日本代表のスタッフも参加します。6月15日にはPNCの試合を終えたトンガとジュニアジャパンが対戦、7月には日本代表と合同合宿を行う予定です。

日本代表の年間活動日数は112日、19年までだと784日になります。日本代表としてのゲーム数は1年で12試合、19年までだと84試合です。
代表として活動できる日数は世界的に見てもかなり多いです。恵まれた環境と言えるでしょう。上位国と試合を組むのは現状では厳しいですが、ワールドカップで結果を残すために覚悟を持って臨む必要があります。
6月にはフレンチバーバリアンズとしてフランスプロリーグの選抜チームと戦います。これも、できるだけ良い選手を集めてほしいとフランス協会に注文を出しています。

ジョーンズHCはよく「君は世界トップ10に入れる選手か? 君は世界トップ10に入れるスタッフか?」と言います。私は現在、日本代表GMを務めさせていただいていますが、世界トップ10に入れるように覚悟を持ってやっています。
今までワールドカップでしか厳しい試合ができず、経験が不足していました。ですから私はタイトな試合を、どんどん組む必要があります。そして、選手や監督、コーチ、スタッフの仕事をしっかり見極めていく必要もあります。
日本代表を強くするためのさまざまな活動をつないでいく。そのために私ができることをしっかり考えて、これからもやっていきます。

■「主将でチームは変わる。廣瀬はキャプテンシーに優れた選手」

以下は質疑応答の一部。

──U20日本代表がU20ウェールズ代表に7対119と大敗しましたが、強化はできているのですか?

先ほど、高校代表では良い勝負ができていると話したのですが(苦笑)。一昨年に高校代表がウェールズと対戦してきん差で敗れました。それから2年間でどうなったかを見るために試合を組んだのですが、かなり差がついてしまいました。
ウェールズはキャップホルダー(国代表での国際試合経験者)が4人いて、日本はゼロ。一人一人の差がありました。ウェールズは若手世代の強化がすごくうまくいっています。
現時点でこれだけの差があることが分かりました。そこを変えるために、まず勝てない理由を明確にして、ジュニアジャパンなどで継続して強化をしていきます。

──カーワンジャパンの財産としてはどのようなことがありますか?

「世界で一番良い環境作り」を進めてくれました。これは世界で勝つために必要なことで、その考えをもたらしたのはJK(カーワン前HC)でした。選手にとって非常に良い部分だったと思います。
ただ、実際にはこの良い環境がマイナスにもなりました。良い環境が当たり前になってしまい、タフな状況に対応できない部分が出てきたのです。
JKとは強化のためにいろいろ話しましたが、彼は「日本代表が勝つこと」を何よりも求めていました。それは日本代表のHCとしてプロフェッショナルな彼の考え方です。ただ、そのために強化が点と点になってしまい、つながらないという問題もありました。

──後半20分から失点してしまうのはなぜですか?

後半20分以降に足が止まってしまうのはサイズが違うことも理由のひとつです。体の大きい外国人選手を相手に攻撃を受け続けると、どんどん体力を削られてしまいます。
今年は世界一のフィットネスで攻め続けます。日本のスポーツ界を見ても持久系の競技は日本人に合っていますから、後半20分以降もしっかりコンタクトをしながら走れるように練習しています。
アジア五カ国対抗の時も日本代表は試合をしながら強化していました。これまでは代表で集まった時は戦術練習が中心になっていたのですが、今は厳しい練習をしています。
合宿でも早朝練習を含めた4部練習がありましたが、フィットネスが足りない選手は5時半から走っていました。

──廣瀬俊朗を主将に選んだのは?

主将でチームは変わるので、ジョーンズHCと薫田(真広)アシスタントコーチは長い時間をかけて話していました。主将はコーチと違う影響力があります。グラウンドで実際に選手に指示をできるのは、HCではなく主将ですから。
廣瀬はキャプテンシーに優れた選手で、非常に大きな貢献をしてくれています。代表として長く一緒に過ごすと、コミュニケーションも大事になるのですが、その面でも廣瀬は選手だけでミーティングを開くなどして、選手が話しやすい状況をつくっていると思います。

■岩渕健輔氏に聞く「あなたにとってラグビーとは?」

「点と点をつないでくれるものです。世界の国と国、人と人。社会や文化を超えて、ラグビーがつないでくれました。私もラグビーがあったからいろいろなところに行けましたし、いろいろな人と出会うことができました。ラグビーを通して自分なりに学んできたことを、残していければ幸せです」

今回のみなとスポーツフォーラムにおいて、参加者からの参加費と、会場での募金額の合計64,500円は、東日本大震災の義援金として日本赤十字社へ寄付させていただきます。

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