小野澤の最多キャップ新記録を白星で祝えず
悪コンディションの下、フィジーに完敗

6月1日、フィジーのラウトカで『IRBパシフィック・ネーションズカップ(PNC)2013』第2節、フィジー―日本戦が行われ、日本は豪雨という条件もあって、テンポのあるアタックをほとんど見せられず8―22で完敗。
前節のトンガ戦に続いて、今季のPNCはこれで2戦2敗。エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ体制になってからのPNCでは5連敗となってしまった。
日本代表の次戦は8日、大阪・近鉄花園ラグビ―場での『リポビタンDチャレンジ2013』、対ウェールズ戦が予定されている。

(text by Kenji Demura)

photo by Kenji Demura
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1週間前のトンガ戦。前半12分までに2トライを失うなど、試合の入りに失敗したことが、敗因のひとつとなった日本代表。
 
過去のPNCで一度しか勝っていないフィジー戦に向けて、「試合の入りが一番大切」(NO8菊谷崇ゲームキャプテン)であることは間違いなかった。
 
その試合の入りに、再び日本は失敗する。
 
キックオフから日本陣に攻め込んだフィジーはスターWTBシレリ・ボンボの突破からきなり開始40秒で先制トライ。
 
早くも日本は5点のビハインドを背負うことになった。

昨季のPNCでも日本の試合はすべてホームゲーム。今季も第1節のトンガ戦は横浜で戦うなど、エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ率いる日本代表にとっては、この日のフィジー戦が初のアウェー戦。登録メンバー23人中半数以上の12人がフィジーでのテストマッチ未経験者でもあった。
 
この試合で通算80キャップとなり、日本代表歴代単独1位となったWTB小野澤宏時が先頭でグラウンドに入場。試合開始の笛が吹かれるまでは、どこか祝福ムードも漂っていたラウトカ・チャーチルパークだったが、いきなり試合開始とともに強烈なアウェーの洗礼を受けたかっこうに。
 
それでも、試合後「あのトライで目が覚めたところはあった」と、現役選手としては小野澤に次ぐ代表キャップ数を誇るLO大野均が振り返ったとおり、日本は粘り強いDFでこれ以降得点を許さず、前半は5失点のみ。
 
一方、アタックに関しては、激しい雨が降り続く厳しい条件もあって、日本らしいテンポは全く見られず終い。
 
先制トライを取られた直後に、PKで敵陣深く攻め込むチャンスがあったのをキックミスで逃した後は、前半終了間際に自陣深くからのCTBマレ・サウとWTB今村雄太の好走でフィジー陣22m内に攻め込むまでは、自陣に張りつけの状態が続いた。

photo by Kenji Demura
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「ただ一人良かったのはFLリーチ」(ジョーンズHC)

「あの状態で5点差で折り返せたのはラッキーだった」(SO田村優)
 
前半、圧倒的に攻められながらも、1トライを奪われただけ。
 
間違いなく、後半の巻き返しに期待がかかる展開。実際、後半開始直後、リズムを取り戻した日本が攻め込み、6分にFB五郎丸歩バイスキャプテンがPGを決めて5―3。
 
厳しいコンディションもあり、まず点差を詰めることは自体は妥当だっただろうが、この後、再びテンポを上げきれない時間帯が続くことになってしまう。

「ハーフタイムで後半の最初からテンポを上げようという話をしていたのに、それを無視するようなかたちになってしまった。雨ということもあって、ゲームのコントロールということを意識しすぎて、本来なら早くセットして、早く出すというような場面でも、スローテンポになるようなサインを出してしまったり。テンポを上げようする意思をあまり伝えられなかった」(菊谷ゲームキャプテン)
 
テンポを上げられない日本を尻目に、フィジーは日本のミスから、あるいはクイックスローから、CTBに入っていたネマニ・ナドロのパワーや、WTBボンボのスピードを生かして、チャンスを生かし切って、9分、29分とトライを重ねて、勝負も決めた。
 
日本はようやくロスタイムに小野澤に替わって途中出場していたWTB福岡堅樹が1トライを返したが、さらにフィジーにも1トライを重ねられ8―22で敗れた。
「ゆっくりとしたペースの中で、自分たちもゆっくりしてしまった。コントロールしたわけじゃなく、グダグダとしたまま、80分間プレーしてしまった。どこかでパーンとテンポを変えなきゃいけなかったのに、変えられなかった」
 
試合後、そんなふうに悔やんだのは、日本代表最多キャップ新記録を白星で飾れなかった小野澤。
 
ジョーンズHCも「全てはコーチングの責任。選手はベストを尽くしている」としながらも、「タックルもよくなかったし、スクラムもよくなかったし、ブレクダウンもうまくいかない。フィールドプレーもダメ」と落胆を隠さなかった。

「全責任は自分にある。今日一番良かったのはリーチ(FLマイケル)。それ以外に良かった選手は見当たらない。今季は自分のコーチングをほとんど受けていない選手だけが良かった点から言っても、自分のコーチングに責任があるのは明らかだ」(同コーチ)

「この厳しい試合から何かを得るのか、ただの負け試合にするのかは自分たち次第。まずは、しっかり前を向いてこの1週間過ごせるようにしていきたい」(菊谷ゲームキャプテン)
 
ウェールズ戦は厳しい南太平洋での敗戦から這い上がり、もう一度、自分たちのアタッキングラグビ―を取り戻す意思があるのか、試される試合となる。

photo by Kenji Demura