「一番難しい」米国戦を修正能力で乗り切り
世界中に感動を与える3勝目で有終の美

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アメリカを28ー18で下して3勝目。間違いなくRWC2015で最も印象に残るチームとなった日本代
photo by Kenji Demura

英国時間11日夜(日本時間12日未明)、イングランド西部グロスターでラグビーワールドカップ(RWC)2015プールB最終戦の日本—アメリカ戦が行われ、前半に松島幸太朗、藤田慶和の両WTBの2トライ、後半も途中出場のNO8アマナキ・レレイ・マフィがトライを加えた日本が28—18でアメリカに競り勝った。プール戦を3勝1敗を終えた日本だが、勝ち点で南アフリカ、スコットランドの後塵を拝する形となり、目標だった準々決勝進出は果たせず、RWC2015での戦いを終えた。

「一番難しい試合になる」
そう語っていたFLリーチ マイケルキャプテンの想定していた通りの試合となった。
「アスレティックなチーム」。
7人制代表でセブンズワールドシリーズのベスト7に選ばれた経験を持つザック・テスト、2大会前のRWCで大会ベストトライに評される快走ぶりで世界を驚かせたタクズワ・ングウェニアの両WTB陣に代表されるように、「アスレティックなチーム」(エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ)であるアメリカ代表。
3日前の南アフリカ戦は主力を温存してまで日本戦にかけてきただけに、前半はむしろ日本にプレッシャーをかけるシーンも多かった。

アメリカのキックオフをキャッチングミスする不穏な立ち上がりの後、前半5分にはアメリカSOのAJ・マクギンティにPGを決められて先制を許す。

それでも、試合後アメリカFBクリス・ワイルズ主将が「日本とアメリカに違いがあったとしたら、ミスが出たか出なかったか」と振り返った通り、相手のミスに乗じる形で日本は試合の主導権を握る。

前半7分、SO小野晃征のゴロパントの処理をアメリカDF陣がもたつく間にWTB藤田が再確保してチャンスにつなげて、最後は右WTB松島が余裕を持って大外を走りぬけて逆転。

同24分にアメリカにしっかりフェイズを重ねられて、WTBングウェニアにトライを返されるが、日本も28分に「チャンスがあれば入っていいと言われていた」というWTB藤田がモールから押さえ込んだ後、FB五郎丸歩がゴールとPGを加えて17—8で前半を折り返した。

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前半7分にトライを決めるWTB松島。RWC2015で世界に通用する姿を見せたひとりとなった
photo by Kenji Demura

「日本ラグビーの立ち位置を変えた。
選手たちはヒーローだ」(ジョーンズHC)

「ハーフタイムにはディフェンスのエナジーが十分じゃないと感じていた。タックルから可能な限り早く立ち上がって、ラインを作り、スペースを与えないように指示を出した」というジョーンズHCは後半最初から「もっとアタックするため」PR畠山健介とNO8アマナキ・レレイ・マフィを投入。

期待に応えたNO8マフィが後半22分にも「自分でタッチでとお願いした」というラインアウトを組んだモールの後アメリカディフェンスを突き破ってトライを奪って加点。

後半31分に、攻め込みながらのターンオーバーからアメリカにトライを奪われて7点差に追い上げられたが、最後まで慌てずボールキープしながらアタックし続けた結果、アメリカが反則をおかして、同37分にFB五郎丸がダメ押しを決めて、苦しい内容ながら勝ち切り、成長した姿を見せて有終の美を飾った。

「今日はディフェンスの規律ができていなかった。ラインスピードを上げるのと、チョップタックルをするようにしたら、勢いを止めることができた」
リーチキャプテンは、自分たちで体の大きい相手に対して修正してきたディフェンス力がプール戦最後のアメリカ戦でも勝因となったと胸を張った。

試合前に、涙を見せて選手たちを送り出したというジョーンズHCは試合後の記者会見で「疲れました」と前置きした上で、「選手たちはとても素晴らしかった。15〜20%ほど下がっていたが、アメリカにやりたいラグビーをさせなかった。
こういう試合を勝てたことが、チームの成長の証だ」と選手たちを讃えた。

「スタジアムの来る途中で、日本の旗を振っているファンがたくさんいた。みんな日本人には見えなかった。
自分たちはサポーターたちを楽しませ続けることができた。
大会を通して、日本のプレーヤーのクオリティを示すことができたし、それは世界一のハードワークによって達成できたもの。
彼らはヒーローだ。子供たちはヒーローになりたがり、真似をする。日本ラグビーの立ち位置を変えた。野球やサッカーではなくラグビーをするようになる」(ジョーンズHC)

3勝1敗の成績を収めながら、目標だった準々決勝に進めなかったのは不運でしかないだろう。
間違いなく世界中の人々に勇気と感動を与えた日本代表は12日、帰国の途に着く。

text by Kenji Demura

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photo by Kenji Demura
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photo by Kenji Demura