後半ボールを動かして会心の逆転劇
カップ決勝で香港下し五輪出場権獲得

11月7、8日、香港でリオデジャネイロオリンピック(リオ五輪)のアジア予選となる「7人制ラグビーアジア予選 香港大会」が行われ、カップ決勝戦で大方の予想通り、香港と対戦した日本は0-10の劣勢から後半2分の後藤輝也を皮切りに連続4トライで鮮やかな逆転勝ち。
念願のリオ五輪出場権を手に入れた。

「決勝まで行けば、間違いなく勝つ自信はある。ただし、そこに行くまでに、先を見てしまうと難しい。一戦、一戦しっかり戦っていくことが必要だし、その一方で、メンバーの体力の温存も重要になる」

今回の予選開幕前に、瀬川智広ヘッドコーチはそんなふうに2日間の戦い方のイメージを語ってくれていた。
初戦の中華台北戦(7日11:38)を38—0で完封勝ちしたのを皮切りに、続くシンガポール戦は66—0(同14:49)、初日最終戦となった韓国戦(同17:38)も47-0。

一夜明けた翌8日午前中に行われたプール最終戦の中国戦(10:46)も、6トライを一方的に重ねて34—0。
「セブンズは2日目の1試合目が難しい」(瀬川HC)という分析もあった中国戦も含めて、予選プールで奪ったトライ29に対して、失トライ数は0。

「正直、力の差はある」(同HC)という、中華台北、シンガポールだけではなく、「韓国はいままで若いチームだったのが、ベテランが戻りいままで以上にフィジカル。中国は調子の良かった青島大会(中国セブンズ=)に出場していたメンバーが戻ってきている。コンタクトの強さを前面に出してくる。ポテンシャルは高い」と警戒していた、韓国、中国をも完封。

続くカップ準決勝(同14:38)でもプール戦同様、立ち上がりからスリランカを圧倒。
まさに圧倒的な強さを見せてカップ決勝に勝ち進んだ。

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カップ決勝戦後半2分、後藤輝が流れを変えるトライを奪う。思い切りの良さが生きた
photo by Kenji Demura

ボールを動かすスタイル取り戻し
後半はアウェーの重圧はね除ける

予想通り、カップ決勝戦での対戦相手となったのは、地元・香港。
今季のアジアセブンズシリーズ第2戦のタイセブンズでは試合終了間際までリードされ、何とか延長戦で勝利をものにするという接戦も経験しており、まさにアジアにおける好敵手と言っていい相手との決戦となった。

「アウェーの香港コールにのまれた」(桑水流裕策キャプテン)という日本は、カップ準決勝までの落ち着いたプレーぶりから一転。
前半2分、9分と香港に連続トライを許し、いきなり10点のビハインドを背負う最悪の展開となる。

「香港はコンタクトエリアのスキルが高い」(瀬川HC)と警戒していたブレイクダウン回りでプレッシャーをかけられ、そこに人数をかけすぎたことでできた外のスペースを攻められての失トライだった。

フィットネスやボールを動かす能力では日本が勝っていることは過去の対戦からも明らかだったが、だからこそ香港が立ち上がりの時間帯に接点の部分で圧力をかけてくるのは、ある程度予想されていたこと。
過去のアジアシリーズでの対戦でも何度も経験してきたことでもあったが、香港スタジアムでのアウェー戦という舞台装置も作用して、ピッチ上の7人は端で見ているよりもパニックになっていたようだ。
「焦らなかったと言えば嘘になる。『焦るな、焦るな、絶対、自分たちの時間くるから』と声を掛け合っていた」(羽野一志)

3トライ目を狙う香港に攻め込まれるシーンもあったが、好守と相手の反則で何とか守り切り、0—10のままハーフタムへ。

「後半はゼロからスタート。前半は自分たちが準備してきたことを何もプレーしていない。まずやってきたことをやろう」
瀬川HCからの指示を受けた選手たちは、後半に入ると「とにかく、まずはボール動かす」(桑水流キャプテン)自分たちのラグビーを取り戻す。

後半開始の日本のキックオフ自体は10mラインに届かず失敗するが、その際の相手の動きを見て、これから自分たちがやろうとしているラグビーが間違っていないことを確信したという。
「ペナルティをもらったら『Pからゴー』で。(後半開始のキックオフが)“ノット10”になった時、明らかに向こうはゆっくり来た。香港はそういうラグビーをしたいんだなというのがわかったので、(ペナルティキックが)こっちにきた時には迷わず行った」(坂井克行)

後半2分に自陣でPKを得た日本は迷わず攻めて、左サイドを後藤輝也、右サイドを合谷和弘、羽野一志、中央を レメキ・ロマノ・ラヴァと確実に相手DFを崩した後、最後は「1対1なら勝負できる自信があるので、そこで勝負した」という後藤輝が左サイドで香港ディフェンダーを振り切って反撃開始。
「ボール動かしてトライを取ったので、これでいけると。ラッキーで取ったトライではなく、準備してきたプレーで取った」(坂井)

この追撃トライで勢いに乗った日本は続く5分には敵陣22m内に攻め込んでからのムーブでボールをもらったレメキが「(香港DFが)みんな前に出たので、前に行こうと。気持ちがそのまま出た」という高く飛び上がるダイビングトライを中央付近に決めた後、坂井のゴールで逆転。

さらに、7分に合谷、8分に坂井がトライを重ねて、後半だけで24点を挙げる攻撃力を見せつけるかたちで逆転勝ちを収めて、五輪切符を勝ち取った。

「勝てばリオデジャネイロ五輪に出場、負ければ最終予選に回るという一度切りのこの大会は、いつもとは違った。ホッとしたというのが、今一番の感想」(瀬川HC)

プレッシャーを乗り越えて、リオ行き切符を勝ち取った男子セブンズ日本代表は9日夕刻、香港から凱旋帰国の途につく。

text by Kenji Demura

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後半5分にはレメキが香港ゴールにダイブ。膝の状態は万全ではなかったが奮闘した
photo by Kenji Demura

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カップ決勝戦後半8分、最後を締めたのは前主将の坂井。落ち着いたプレーでアタックをリードした
photo by Kenji Demura

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カップ決勝で香港を破ってリオ行きを決めた後、選手たちに胴上げされる瀬川HC。「ホッとした」と正直に語った
photo by Kenji Demura

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念願の五輪出場権を獲得し「スタートラインに立てた」(桑水流主将)。リオでメダル獲得を目指す
photo by Kenji Demura