アイルランド戦でワンステージ上がったサクラフィフティーン

オーストラリアを破ってさらにワンステージ上げ、ベスト8へ

 

 

アイルランドのダブリンで開催中の女子ラグビーワールドカップ(WRWC)2017は、現地時間17日にプール戦最終日を迎える。

 

初戦のフランス戦で試合の入りに失敗して14—72と大敗した後、続くアイルランド戦では立ち上がりから主導権を握ったものの、最後に力尽きて14—24で逆転負けを喫した。

 

ここまで2戦2敗の日本だが、プール戦第2節終了時点で、参加12チームの中、日本も含めた5チームが勝ち点0で並んでおり、プール最終戦の対オーストラリア戦(日本時間25:00)と、同日に行われる他のプールの3、4位グループの対戦(イタリア−スペイン、ウェールズ−香港)の結果如何で、日本にも目標であるベスト8入りの可能性が残されている。

 

最終戦でオーストラリアを破り、目標のベスト8入りを目指すサクラフィフティーン

 

「入りの20分とラストの10分をテーマにしてきた」(有水剛志ヘッドコーチ)」

しっかり試合に入ることとしっかり試合を終わらせることにこだわってきたサクラフィフティーンだが、フランス戦は女子日本代表として15年ぶりにWRWCの大舞台に立った緊張感もあって、試合の入りに失敗。

こだわってきたはずの前半20分までに4トライを奪われて0—22と大きくリードされた。

 

アイルランド戦では、課題を完璧に修正するかたちで自分たちのリズムでラグビーを続けて前半は14−0とリード。それでも、後半パワープレーヤーを多く投入し、FW周辺での勝負を徹底してきたアイルランドに追い上げられ、ラスト10分で10点を奪われて力尽きた。

 

「アタックでもディフェンスでも我慢して自分たちのテンポでプレーできれば通用する。でも、それを80分間やり続けなければいけない。80分間、ギリギリの状態に向き合う覚悟はあるか。そういう話を相当した」(有水HC)

 

初戦で出た課題を修正して、前回ベスト4の開催国を追い詰めたことで、同HCは「(チーム力は)ワンステージ上がった」と評価。

8強入りのために勝利が求められるオーストラリア戦は、相手どうこうではなく、自分たちのラグビーを試合を通して貫けるかどうかがポイントとなる。

 

「通じるプレーがあるかどうかを求めているわけではない、1試合トータルで通じるかどうか。そこをもう一度、求めたい。(戦い方は)変えようもない。(次のオーストラリア戦で)もうワンステージ上げたい」

 

 

「チャンスが何回も来るわけじゃない。来たチャンスをしっかりものにする」(齊藤キャプテン)

 

アイルランド戦ではスクラムを選択してペナルティトライ。豪州戦もセットプレーがひとつのキーに

 

4チームずつ3組に分かれてプール戦が行われているWRWC2017。

 

第2節終了時点で、ニュージーランド(10)、カナダ(9=以上プールA、)イングランド(10)、アメリカ(10=以上プールB)、フランス(10)、アイルランド(8=以上プールC)の6チームが2戦2勝。

それ以外の6チームはまだ勝ち星がなく、いずれも3、4位チーム同士の対戦となる第3節でいい結果を残すことがベスト8入りの条件となる(各プール戦の成績をもとに、1〜12位までの暫定順位を決め、それぞれ1〜4位、5〜8位、9〜12位のグループに分かれて順位決定トーナメントが行われる)。

 

現在、世界ランキング7位のオーストラリアはフランスに対しては0−48で大敗したものの、初戦ではアイルランドに対して17—19と互角の戦いぶりを見せている。

 

アイルランド戦では前に出るDFが機能。豪州戦では80分間プレッシャーをかけ続けたい

 

もちろん、世界ランキング14位の日本にとって格上の相手であることは間違いないが、フランス、アイルランドと、格上の相手との対戦を続ける中で、80分間、自分たちのラグビーを続けさえすれば、十分に世界と戦っていける感触もつかんでいる。

 

「FWは全部良かった」

SH津久井萌がそう感嘆したとおり、アイルランド戦の前半は「(フランス戦で)相手に合わせて高くなったところを修正できたし、相手が揺さぶってきても、細かいコミュニケーションを取りながら対応できた」(PR南早紀)というスクラムでペナルティトライを取り、「全体的には前に出るディフェンスができた」(FL鈴木彩夏)と守りの圧力でもしっかりプレッシャーをかけ続けた。

 

もちろん、オーストラリア戦ではそんなアイルランド戦の前半40分間のラグビーを80分間続けられるかがポイントになる。

 

エリアマネージメントやチャンスにいかに取り切るか。SO山本副将を中心にBKの判断力も重要になる

 

「前後半とも自分たちのラグビーをやり切って、勝ち切りたい。アイルランド戦では、後半の入りで、崩れた。ボールキャリーのところで何回もペナルティ取られている、そこが修正点」(HO齊藤聖奈キャプテン)

 

 

さらに言うなら、「(アイルランド戦は)取り切るところで取り切れなかった。チャンスが何回も来るわけじゃない。来たチャンスをしっかりものにする」(同キャプテン)ことができるかどうかも、ワンステージが上がれるかどうかの鍵になる。

 

アイルランド戦ではキックによるエリアマネージメントの精度も上がり、我慢強くフェイズアタックを続けることもできたが、実際にトライに結びついたのはスクラムによる認定トライを除けば、1度のみ。

 

チャンスにどうトライを取り切るのか。

ハーフ団やCTB陣などBKのキープレーヤーたちの判断力アップも目標のベスト8入りのためには必須となりそうだ。

 

photo and text by Kenji Demura