男女ともにアジアセブンズ総合優勝達成。
アジア地区1位としてサンフランシスコへ
14、15日の2日間に渡り、スリランカのコロンボで「ラグビーワールドカップ(RWC)・セブンズ2018」アジア地区予選を兼ねる「アジアラグビーセブンズシリーズ2017第3戦」および「アジアラグビー女子セブンズシリーズ2017第2戦」スリランカ大会が行われ、日本は男子が準優勝、女子は優勝。共に同シリーズ総合順位で1位となり、来年7月にアメリカ・サンフランシスコで開催されるRWCセブンズ2018への出場を決めた。
男女共にアジアシリーズ総合優勝を果たし、
photo by Kenji Demura
日が射せば、一気に体感気温は30℃を超え、しかもごく頻繁にスコールが来る。
ラグビーをプレーする環境としてはそれ以上はちょっと考えられないような蒸し暑さ。
おまけに大会期間中だけではなく、雨季の降水量のせいでグラウンドは「足首まで埋まる」(小澤大・男子セブンズ日本代表主将)、言ってみれば”田んぼ”状態。
男子は香港、韓国の2大会、女子は韓国の1大会を経て、共に同シリーズのポイント数で首位に立っていた日本だか、タフネスという意味では最も過酷と言っていいスリランカ大会の初日は本来のプレーが中々できない厳しいスタートとなった。
厳しいコンディションもあり大会初日は厳しい戦いが続いた男子セ
photo by Kenji Demura
男女合わせてのスリランカ大会初戦に登場した男子セブンズ日本代表はマレーシアに対して、いきなり自分たちのミスからボールを奪われ先制トライを許す苦しい立ち上がり。その後、4トライを一方的に重ねて最終スコアは28−7まで引き離して初戦を飾ったものの、ここまでの同シリーズの総合順位が7位のチームに対して「シンプルなミスからのターンオーバーで難しい試合にしてしまった」(ダミアン・カラウナ男子セブンズ日本代表ヘッドコーチ)。
一方、初戦で地元スリランカ代表と対戦した女子セブンズ日本代表も前半を5ー7とリードされて折り返す苦しい展開。試合後、「勝ち切れたことだけが良かった」と厳しい表情で語った中村知春キャプテンの攻守による活躍もあり、17ー7で逆転勝利を収めたものの、「変な余裕を持ってプレーしてしまい、自分たちのやりたいことが全然できずに終わった」(稲田仁・女子セブンズ日本代表ヘッドコーチ)。
経験の少ない選手が多い中、
photo by Kenji Demura
男女共に2戦目は内容を上げるかたちで、男子がフィリピンに29ー5、女子は韓国に43ー0で快勝。
迎えたプール戦最終戦はいずれも香港との対戦となった。
韓国大会を終えて3位につける香港をプール戦で倒しておけば、RWCセブンズ2018出場権獲得の可能性が一気に高くなる状況だった男子は立ち上がりから気迫溢れる香港にペースを掴まれ、「自分たちがやりたいプレーが最初からできなくて、自分たちのミスでリズム崩し」(小澤キャプテン)、前半5分までに0ー12とリードされる。
前半終了間際に橋野皓介のトライ&コンバージョンで5点差に迫ったものの、後半も先に香港にトライを奪われて、7ー19で敗れた。
「ゲームプラン通りできないなら、このチームでプレーする資格ない。規律を守らなくてはならない。選手たちはずっと言われ続けていることだ」(カラウナHC)
「ディフェンスで簡単に抜かれたり、そういう桜のプライドを持てない奴はグラウンドに立つ資格はない」(小澤キャプテン)
試合後、そんな厳しい言葉が飛び出すほどのショッキングな敗戦となった。
一方の女子も「1試合目の課題を2試合目は修正できたが、3試合目はしっかりポジショニングできているけどボールを奪い切れない。ディフェンスに回っている時間が長かった」という苦しい展開となり、前半を5−5で折り返す。
後半に入り、稲田HCが若手の成長株に挙げる最年少の平野優芽のトライなどで17ー5で競り勝ったものの、「アジアでも簡単には勝てない」(平野)現実を突きつけられるかたちでプール戦を終了した。
女子はライバルのカザフスタン、中国を撃破してシリーズ完全制覇
男子は準決勝で韓国へのリベンジを果たした後、決勝は香港に惜敗
翌日のノックアウトステージ初戦のカップ準々決勝。
「ゲームプランどおりに、シンプルにワイドワイドに攻めてフェイズを重ねて、そうすれば中に歪み出て来るので、そこで足の速い選手を走らせる。そのためにもミスをなくしてボールキープすることが大事だし、一人ひとりが桜のプライドを持って、戦っていきたい」(男子セブンズ日本代表・小澤キャプテン)
「ディフェンスでプレッシャーをかけてボールを奪い返す。あとは規律の部分。(プール戦では)試合を重ねるごとにペナルティが多くなってしまったので、しっかり修正したい。若い選手たちは、こういう経験をしたことがない。ここで勝ち切るのはすごく意味のあること」(女子セブンズ日本代表・稲田 HC)
男子は中国、女子はシンガポールとの対戦となったが、それぞれ前日のプール戦で出た課題を修正するかたちで内容のある勝利(男子=26ー12、女子=27−0)を収め、どちらも、勝てばRWCセブンズ2018出場が決まる状況でカップ準決勝を迎えることになった。
大会初日とは入れ替わるかたちで女子トーナメントが先行するかたちで進行した2日目のノックアウトステージ。
カップ準決勝第1試合でカザフスタンと対戦した日本は「縦の強さについていけなかった」(中村キャプテン)という韓国大会の反省も生かす形で立ち上がりからディフェンスを機能させた上でチャンスにはしっかりアタック。
前半2分に「有効なキックを蹴ってくれた」(同主将)という成長ぶりを見せた大黒田裕芽の敵陣へのキックを追った平野が自らも足にかけてドリブルしてインゴールで押さえ込み先制。
5分には相手のイエローカードによる数的優位を生かし、素早いパス回しでボールを回して、8月の15人制の女子ラグビーワールドカップでも活躍して「フィジカル面でも強くなった」と成長を実感して7人制に戻ってきたスピードスター堤ほの花がカザフスタンディフェンスを外側に振り切って連続トライ。
後半、カザフスタンに2トライを返されたものの、何度もトライセービングタックルでチームを救った平野に代表される粘りのディフェンスで2点差を守り切り、サンフランシスコ行きを決めた。
女子・
photo by Kenji Demura
わずか1コンバージョン差での勝利だっただけに、試合後サクラセブンズの選手たちには笑顔はなく「あくまでも目標は(アジアで)ナンバー1になって、ワールドカップに行くこと。次はもっと圧倒して、走り勝たないと」(中村キャプテン)と、中国との対戦となるカップファイナルでの快勝を誓っていた。
一方、前回の韓国大会で敗れた韓国へのリベンジ戦ともなった男子のカップ準決勝。
「相手はフィジカルにくる。受けずに自分たちから仕掛けよう。シンプルにゲームプランどおり、ワイド、ワイドに。フィットネスでは負けない」
そう小澤キャプテンが語っていたとおり、まともに走れない状況のグラウンドコンディションながら、立ち上がりから積極的に仕掛けた日本は開始45秒でパトリック・ステインが先制トライ。3分に韓国にトライを返されたものの、前半終了間際にはジェイデン・マックスが韓国ゴールを陥れて10ー5とリードしてハーフタイムへ。
後半、「自分たちのタックルミス」(小澤主将)で韓国に2トライ目を許して同点とされたものの、あくまでも自分たちのゲームプランを貫き、終了間際に橋野の好判断から飛び出した中野将宏の勝ち越しトライで前回大会のリベンジを果たすとともに女子に続きアメリカ西海岸行き切符を手に入れた。
男子・準決勝で決勝トライを決める中野。
photo by Kenji Demura
女子のカップ決勝戦の相手は前回大会同様、中国。どんどん悲惨になっていくグラウンド状況の中行われた「超絶泥試合」(中村キャプテン)だったが、厳しいコンディションの中では、いつも以上に気持ちを強く持ってプレーすることが重要になることを身を持って体験してきていたサクラセブンズのメンバーは立ち上がりから落ち着いたプレーぶりで、前半2分に桑井亜乃→平野→大黒田とつないで先制トライ。後半開始早々にも平野の思い切ったランから堤が外に振り切ってリードを広げ、中国の反撃を1トライに抑えて、アジアラグビー女子セブンズシリーズの完全制覇を達成した。
一方、前日に敗れていた香港との再戦となった男子のカップ決勝戦。日本はゲームプランどおりに戦えた時間帯も多く、前半1分に本村直樹、同6分に野口宜裕のトライで優位に試合を進めたが、この大会で目立った自分たちのミスでチャンスを逃して、逆に相手にトライを奪われるパターンで同点に追いつかれ、延長戦の末に14ー19で敗れた。
アジアでのタフバトルを制して、
photo by Kenji Demura
男子も3大会合わせてのアジアラグビーセブンズシリーズ2017総合順位では1位となり、男女ともにアジア地区1位として、来年7月にアメリカ・サンフランシスコで行われるRWCセブンズ2018に臨むことになった。