世界8位相手に対等以上の内容で引き分け
RWC2019での8強入りへ大きな手応え掴む

リポビタンDツアー2017 フランス遠征中の日本代表が現地時間の25日(日本時間26日早朝)、パリ郊外ナンテールでフランス代表とのテストマッチを戦い、過去の対戦で9戦9敗だった6カ国対抗の雄に対して一歩も引かないプレーぶりを80分間続けて23—23で引き分け。

パリ郊外の新多目的アリーナでフランスを追い詰めた日本。2019年へ向けてポジティブになれる内容だった
photo by Kenji Demura

過去のラグビーワールドカップ(RWC)で3度の準優勝を誇る世界ランキング8位のチームにアウェーで互角以上の戦いをしてみせたことで、22ヶ月後のRWC2019日本大会での8強入りへ大きな手応えを掴んだ日本代表は現地時間の26日午後、帰国の途についた。

「自分たちがいまどこの地点にいるのかはっきりする」(FLリーチ マイケルキャプテン)
そんな位置付けを意識して臨んだフランス戦。

「今回は最初からゲームスピードを上げていきたい」
39−6で快勝した1週間前のトンガ戦で途中出場してゲームテンポを上げることに成功したパフォーマンスが高い評価を受けて、フランス戦では先発に回ったSH流大がそう語っていたとおり、日本は試合開始とともに「空いているスペースを攻めて、空いてなかったら蹴る」(SO田村優)スタイルで、フランスにプレッシャーをかけ続けた。
ハーフ団のキックで敵陣深くに入り込み、WTBレメキ ロマノラヴァ、FL姫野和樹、CTBラファエレ ティモシーなどが敵ゴール内にキック処理をしたフランスBKを追い詰めてゴール前スクラムを勝ち取り、その後のアタックでフランスの反則を誘って、5分にSO田村がPGを決めて先制。

フランスに1PGを返されたものの、24分には「(自陣からでも)チャンスがあればどんどん攻める。そういうプランでもあったし、自分も積極的に仕掛けるということはできた」と、試合開始から鋭い走りでフランスDFを切り裂いていたFB松島幸太朗がインサイドブレイクするかたちで大きなゲインを稼いで敵陣に入り、CTB立川理道がさらに楔を打ち込むかのように縦に進んだ後、FL姫野、HO堀江翔太というFW陣が外側にできたスペースをアタックして左隅にトライを決めた。

ハーフタイム直前に、フランスにラインアウトからモールサイドを突破されて逆転を許したものの、日本のアタックは十分に通用。
守りでも、27分に日本ゴールの左コーナーフラッグ際に飛び込んだフランスWTBをCTB立川が必死に追いついてタッチラインに押し出してトライを許さなかったシーンに象徴されるような堅守が目立った。

「FWの一員として、まずはスクラム、そしてセットピースでのプレッシャーとディフェンスが第1の仕事。それさえしっかりやれば、いいかたちがつくれる」
前日の記者会見でリーチ主将がポイントだと語っていたセットプレーやモールでも後手になる場面はほぼ見られず、後半40分での逆転へ期待を抱かせるかたちでのハーフタイム入りとなった。

「日本のスクラムはとてもコンパクトで、何度か押してプレッシャーをかけようとしたが、日本が速くボールを出して、うまくいかなかった」と、日本のスクラムを評価したのはフランスHOギエム・ギラドキャプテンだ。

後半2分にトライを決めるCTBラファエレ。80分間アタックマインドを持ち続けた
photo by Kenji Demura

「フランスのような大きなチームと戦えて自信になった。
これ以上でかいチームは中々いない」(リーチキャプテン)

ハーフタイムには、2023年のRWC開催が決まったフランスのベルナル・ラポルト ラグビー協会会長と岡村正・日本ラグビーフットボール協会会長が揃ってエリスカップのプレゼンテーションをするというイベントが執り行われ、やや喧騒感が残る状況で後半戦に突入したが、前半の入りをさらに上回るようなテンションで日本がいきなりテンポを上げる。

前半もエッジの効いた走りでラインブレイクを繰り返していたWTBレメキが大きくゲインし、「前半はいい感じで組めていた」というスクラム以外のコンタクトシチュエーションでもフランスFWと対等に渡り合っていた印象だったPR具智元、LOヴィンピー ・ファンデルヴァルト、FL姫野和樹などが直線的に前に出て、最後はNO8アマナキ・レレイ・マフィからパスを受けたCTBラファエレがフランスゴールにダイブ。

「トンガ戦はアタックのマインドセットが足りなかった。どこからでもアタックしていくということを確認して、後半もマインドを維持できた」(FL姫野)

ハーフタイムでのアタッキングマインドの再確認が、いきなりトライにつながり、SO田村のゴールも決まって再び日本がリード。
この後も日本は何度もチャンスをつくるが、「チャンスを逃したところは直していく」(FLリーチキャプテン)というこの試合での課題が響いて、得点には結びつかない。
逆に、フランスはキックパスでのトライも含めて、キックで得点を重ねられて、後半28分時点で18—23と5点をリードされたが、試合終了7分前にまたもFL姫野の突破から途中出場していたPRヴァル アサエリ愛が飛び込んで同点となり、残りの時間帯もフランスに全く攻めのかたちを作らせず、どこか余裕さえ漂わせながらの引き分けとなった。

何度も効果的なボールキャリーでチャンスを作ったFL姫野。フィジカルなフランスにも完全に通用した
photo by Kenji Demura

「今日はボールを多く動かしたが、アタックメンタリティがそうさせた。フランスに勝つにはボールを持って、回して、走らないといけなかった。フランスは違うディフェンスだったのでボールキープが必要だという判断だった。
2019年に向けて、いいバックボーンができ始めた。いいツアーになったと思う。これからもハードワークを続けて、スマートに、毎回同じ戦い方ではなく工夫していく」(ジョセフHC)

「2年後のラグビーワールドカップに向けて誇れる試合だった。開始から最後までアタックのマインドセットを持ち続けたことは誇れる。フランスのような大きなチームと戦えて自信になった。これ以上、でかいチームはなかなかいない。しっかりモールを止めた。ペナルティも取られなかった。スクラムは後半少し崩れたところがあったので、そこは修正しないといけない。
今日の試合でFWのメンタリティが上がった。FWのメンタリティはトップクラス、ワールドクラス。どこにも負けない」(リーチキャプテン)

ちなみに、フランスのスポーツ紙『レキップ』 のチームパフォーマンスに対する評価は、フランスの3.5に対して、日本は5.4。
地元メディアも日本の方が内容がよかったことを認めているのだ。

試合後、明らかにフランスよりも多くの賞賛を受けていた日本。22ヶ月後の世界8強入りに手応えをつかんだ
photo by Kenji Demura

「フランスがペナルティを狙ってきたのは嬉しかった」と同キャプテンが語ったとおり、結果にこだわってきた世界ランキング8位のフランスと対等以上に渡り合っての引き分けは、日本が世界8強相手にも自分たちのラグビーを貫けるだけのベースを持つようになっていることの証明と言えるだろう。
2019年に向けてポジティブになれる2017年の最終戦だった。

text by Kenji Demura