慶応義塾大学は28-33と5点ビハインドで迎えた後半37分過ぎ、ハーフウェイ付近で得たペナルティキックをSO古田京が敵陣深くタッチに蹴り出した。慶応義塾がそのラインアウトで確保したボールを中央付近へ運んだ瞬間、大東文化大学FL河野良太主将が低く鋭いタックルに入り、慶應義塾のノックオンを誘う。残り2分を切った所での大東文化ボールのスクラムとなり万事休す。フルタイムを告げるホーンが鳴る中、大東文化SO大矢雄太が外へ蹴り出し、2大会ぶり(2016年1月2日以来)となる大学選手権準決勝進出を決めた。

大東文化は、「自分が監督しているこの5年間で最も強い」(青柳勝彦監督)というスクラムと、出足の早いディフェンスによって終始慶應義塾にプレッシャーをかけ、前半12分にスクラムでのペナルティトライを奪った。18分にはラインアウト後のアタックからWTB岡新之助タフォキタウ、22分には敵ゴール前でのスクラムプッシュでNO8アマト・ファカタヴァが飛び込み、前半23分までに0-21と差を広げた。その後慶應義塾の逆襲を受け、21点あったマージンを失い、同点で後半へと向かう。

大東文化は後半、慶應義塾に先制され、この試合初めてリードを許した。しかしそこからは慶應義塾に追加点を許さないディフェンスや相手のミスにも助けられ、次第にスクラムでの自信を取り戻して行った。それに応えて、新鋭SH南昂伸がラックサイドをすり抜けて28-28の同点へ戻す。このまま同点(トライ数/ゴール数も同じ場合は抽選)か、という憶測も出てきた後半26分、またも慶應義塾の反則で得たPKからタッチ、ラインアウト、モールでゴール前まで迫り途中出場のLO服部鋼亮が決勝点となるトライを上げ、そのまま逃げ切った。

一方敗れた慶應義塾は、学生随一の脚を持つFB丹治辰硯が攻守に渡ってチームを牽引。スピード豊かなランやワンタッチのパスでチャンスを作り、WTB宮本瑛介も2つのトライに絡んでいる。前半32分には、ラインブレイクした後にWTB金澤徹へと繋ぎ、ゴール前でハイタックルを受けた金澤からリターンパスをもらい丹治自身もトライを上げた。しかし慶應義塾は、試合最後の場面に見られたように、チャンスになりかけた所で「相手のプレッシャーや自分達の無理なパス」(金沢篤ヘッドコーチ)によってノックオンで中断してしまう。そして相手の強みであるスクラムでプレッシャーを受けて、ペナルティを取られてはキックによって大きく後退させられる、という悪循環に陥ってしまった。試合後、金沢HCは「悔しい。ただ序盤の3トライ差をはね返すなど、出し切った学生達を誇りに思う」と話し、昨年に続いて準々決勝で敗退した戦いを振り返った。(米田太郎)