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日本選手権とトップリーグ3位を競う戦いは、ヤマハ発動機ジュピロとトヨタ自動車ヴェルブリッツの対戦となった。

 

開始直後、ヤマハ陣深く攻め込んだトヨタはFL姫野和樹キャプテンを核に、FW、BKが一体となってヤマハゴールラインを目指して突進を繰り返す。ヤマハDFは、トヨタフィフティーンに対して一歩も下がることなく、タックルには闘志が溢れ、起きて戻って前にを繰り返す。ブレイクダウンへのこだわりではなく、タックルでの前進が徹底されているかのようだ。

しかし前半4分、勢い余ったCTBマレ・サウが危険なタックルでシンビンに。

トヨタはSO樺島亮太のPGで先行(3-0)し、さらにヤマハゴールに迫る。

 

ここからの15分の闘いが勝敗を分けた。攻撃の要、CTBマレ・サウを欠いて14人となったヤマハのDFの集中力は乱れを見せない。タックル後のFWの拡がり、BKの外側への落ち着いた対応、最後尾のFB五郎丸歩の安定感とその間のスペースを埋めるSH矢富勇毅の判断力。ピンチの時間帯にチームの形を整えたヤマハが、マレ・サウがゲームに戻るタイミングで、逆にこのゲームの流れを掴まえることとなる。

 

19分、トヨタのラインアウトでのオーバーボールを奪うと、ヤマハはSO大田尾竜彦が外側に展開。ターンオーバーから、定石通りに少ないパスでボールをタッチ際に大きく動かす。ボールのラインは乱れたが、うまくキックを使いWTB田中渉太が初トライ(7-3)。

28分には、トヨタゴール前に攻め込んだヤマハFWがモールを押し込む。SO大田尾は、トヨタDFのギャップを探す。レフリーのアドバンテージのジェスチャーを確認しつつ、飛び出すDFの背後にショートパント。そのボールにCTBマレ・サウが走り込んで見事なトライ(14‐3)。

さらに35分、グラウンドを大きく使い、拡がるトヨタDFのギャップをCTBマレ・サウ、HO日野剛志が切り裂いてビッグゲイン。トヨタDFがSH矢富の動きに目を奪われた瞬間、FL八木下惠介がボールを抱えゴール下に飛び込んだ。(21-3)

 

ヤマハは、後半に入るとさらに攻撃を加速する。スクラムの強烈なプッシュを起点に主導権を奪い、№8堀江恭佑を中心にドライブを繰り返す。後半5分、スクラムのサイドアタックからFWが突進を重ね、最後はCTBマレ・サウが

ギャップに飛び込んで会心のトライ(28-3)。

 

一方、トヨタは35分、LOジェイソン・ジェンキンスがショートサイドを突破。後半5分にSOに入ったライオネル・クロニエのDF裏へのショートキックにCTBイェーツスティーブンが飛びこんでこの試合唯一のトライを奪った(28-10)。

この日のトヨタは、セットプレーでプレッシャーを受け、ゲームの流れを掴むことなく敗れた。連戦の疲れもあり、チームのパフォーマンスは不発。

しかし、ルーキーでありながらキャプテンとしてチームを引っ張った姫野和樹のさらなる飛躍と強力FWの来季の復活に期待を込めたい。

 

ヤマハは、シーズン最終戦を笑顔で飾った。

スクラムの強さを取り戻し、DFのギャップを探しながら無駄のないアタックで効率良くトライを奪い、ヤマハらしさを取り戻した。

その司令塔として君臨したSO大田尾が、この日を最後に引退する。トップリーガーとして14年、ゲームのコントローラーとして、グラウンド全面にボールを動かし、ヤマハのラグビーを支え続けた。

 

2019年のワールドカップが近づくなかで、ルーキーとベテランの躍動に魅惑されるトップリーグの一戦だった。

 

(照沼 康彦)