イングランドから金星を挙げるなど着実に成長した姿を披露

若手も自信を深め北九州でのベスト8入りへステップアップ

 

1月26〜28日、オーストラリアのシドニーでHSBCワールドラグビー女子セブンズシリーズ(以下ワールドシリーズ)第2戦が行われ、日本代表は初日のプール最終戦で強豪イングランドから初白星を奪ったものの、初戦の対ニュージーランド、第2戦の対アメリカと大敗を喫したことが響いて、目標のベスト8入りは果たせず、ノックアウトステージではチャレンジトロフィートーナメントへ。

大会第2日に行われた同トーナメント初戦でフィジーに敗れたものの、最終戦(11位決定戦)ではパプアニューギニアに41—5で快勝して、11位で大会を終えた。

 

イングランドなど2勝を挙げたサクラセブンズ。北九州でのベスト8入りへ着実にステップアップ
photo by Kenji demura

 

初戦でいきなり過去5シーズン中4度シーズン女王に輝いているニュージーランドと対戦したサクラセブンズ。

ドバイセブンズでも課題として出た「大会の入り、試合の入り」で、またも失敗してしまう。

 

「まず初戦の入り。練習の中でも、各練習の入りというのは、試合の入りを意識するようにドリルでも言ってきた。そこはやってくれると思う」

 

開幕前、稲田仁ヘッドコーチはそう期待感を表明していたが、ニュージーランド戦の立ち上がりは、想定していた内容とは全く異なるものになってしまう。

 

「アタックを継続することがチャンスにつながる。そのためにまずはセットプレー、ラインアウト、キックオフでのボールの獲得が重要になる」

 

同ヘッドコーチはそんなポイントも語ってくれていたが、立ち上がりからセットプレーでのボール確保に苦しみ、数少ないマイボールもブレイクダウンでターンオーバーされるなど、0分、2分、4分とニュージーランドにトライを許していきなり0—17と大きくリードされる最悪の展開に。

 

それでも、6分にキックオフを自陣深くでキープした後、ワールドシリーズ初出場ながら先発に名を連ねていた大竹風美子が自陣22m付近で相手のディフェンスギャップを突いて加速。一気にニュージーランドゴール前まで前進した後、ラックからしっかり球出しをして最後は田中笑伊が飛び込んだ。

 

いきなり初出場のNZ戦でトライにつながる快走も見せ、世界に通用する素材であることを印象付けた大竹
photo by Kenji demura

 

コンバージョンも決まって10点差に追い上げたものの、直後のキックオフでミスが出た後、ニュージーランドに1トライを加えられ7-22でハーフタイム入り。

 

後半も稲田ヘッドコーチが「アタックチャンスがほとんどなかった」と振り返ったとおり、キックオフでなかなかボールキープができず、ボールキープできた場合もミスやペナルティでボールを失い、そこから一気にトライを持っていかれ、4トライを重ねられた(最終スコアは7—48)。

 

続く対戦相手はドバイ大会ではニュージーランドを破り、最終的には準優勝したアメリカ。

初戦のニュージーランド戦に比べれば、日本のアタックチャンスは増えたものの、キックオフやボールキャリーでのミスが目立つ展開は変わらず、一方的に計6トライを重ねられて0—38での大敗となった。

 

「アタックでキープし続けるというのが課題だったが、1試合目、2試合目はそれができなくてすぐにボールを取られてしまった。ボールを取られたらトライを取られちゃうのと同じこと」(横尾千里)

 

目標である8強入りのため、稲田ヘッドコーチは予選プールでの戦い方に関して、「(ドバイ大会のような)大差のゲームではなく、食らいついていって、最後僅差の勝負に持ち込むというゲームを予選プールでやる。次のレベルに行くためにキックオフの最初のところの集中力とそこからアタックの継続。失点してもそこから集中し直して、自分たちのやることをやっていく」と、その方向性を語っていたが、残念ながら最初の2試合はイメージとは全く異なる内容・結果となってしまった。

 

大竹、田中、平野の10代トリオが全試合先発

 

そして、迎えた予選プール3戦目。

対戦相手は、ドバイ大会では幻のトライが認められていれば勝敗が入れ替わっていてもおかしくない善戦をした同じ相手イングランドだった。

 

ニュージーランド、そしてアメリカに対する大敗で、現実的にはすでに目標だった8強入りの可能性がほぼなくなった状態で迎えたイングランド戦。

モチベーションの維持が難しい状況での戦いになることも想定されたが、登録メンバー12人中半数が20歳以下という若いチームは最初の2試合とは全く異なる内容で、2013-2014から4シーズン連続でトップ4の座を守り続けたイングランドに対して、「ベスト8を目標にしてきて、いつも同じ結果でどこか慢心しちゃうようなところもあった。でも、ここで1勝できるか、すごく大きいから、この試合にかけようとみんなで言っていた。みんなが強気に行けた」(横尾)という積極的なプレーを続けた。

 

試合開始のキックオフはレシーブに失敗したものの、前にディフェンスでイングランドにプレッシャーをかけて、こぼれ球を拾った大竹が相手ゴールに迫り、スクラムから再び大竹、そして中村キャプテンが前にボールを運び、最後は田中が先制トライ(2分)。

続くキックオフからイングランドに独走を許したものの、平野優芽が諦めずに追いかけてゴール前でいったんは止めたプレーにもサクラセブンズがいい精神状態でこの一戦に臨んでいたことがうかがえた(平野の好タックルの後もボールを継続したイングランドが3分に同点トライ)。

6分には、敵陣深くで相手にディフェンスでプレッシャーをかけて、ブレイクダウンで大竹が相手にうまく絡んでPKチャンスをつかみ、中村キャプテンが相手ディフェンスの隙を突くかたちで自ら飛び込み、前半を12—5と7点リードして折り返した。

 

イングランド戦で勝ち越しトライを奪う中村主将。攻守双方での圧倒的な存在感は相変わらず
photo by Kenji demura

 

後半開始のキックオフからも敵陣深くでイングランドにディフェンスでプレッシャーをかけて相手のミスを誘い、ラインアウトからディフェンスギャップをついた鈴木彩夏がイングランドゴールを駆け抜けてリードを広げ、後半4分にイングランドに1トライを許したものの、前に出るディフェンスでミスを誘い、最後の1分半ほどはボールキープし続けて金星をものにした。

 

「アタックは空いているスペースにボールを回す。ボールキャリアが持ちすぎて、ラックサイドで仕掛けすぎいたので、そこを変えた。ディフェンスはもっとダブルでタックルにいく。1枚だとまたピックしていかれるので2枚で。粘り強くやってくれた。

これで何かひとつつかんだかな。自分たちのアタックの時間確保ができれば、結果は出せる自信はつかんだ」

 

中村キャプテンがそう代弁するとおり、若いチームにとっては少なくない自信につながるイングランド戦勝利だったものの、前述どおり最初の2試合での大敗が響いて、目標だったカップトーナメント進出は果たせず、大会2日目は9〜12位を決めるチャレンジトロフィートーナメントで戦うことになったサクラセブンズは同トーナメント初戦(準決勝)でフィジーと対戦。

 

ここでも再び課題であるファーストゲームでの入りに失敗するかたちでノーホイッスルトライを許すなど、後手後手に回り10—19で敗戦。

気を取り直して臨んだ11位決定戦ではパプアニューギニアに41-5で快勝。

ドバイ大会よりも順位をひとつ上げるかたちでワールドシリーズ第2戦の戦いを終えた。

 

「前回0勝だったのが今回は2勝。1歩か半歩かわからないが、前進はしている。ただし、最初の2試合で対戦したようなトップの4チームとの差はまだまだ大きい。トップとの一番の差はベーシックなスキル。プレッシャーを受けてもベーシックなことが正確にできるかどうか。あとは、一番の強みでもある運動量のところ。フィットネスで勝たないとだめ。もう一度、いままでやっているプログラムに関しても見直して、次の北九州はなんとしても8位以内に入る」

 

稲田ヘッドコーチはそんなふうにシドニーでの戦いを総括し、地元開催となる次回大会に向けての課題を語る。

 

一方、中村キャプテンは「イングランドに勝てたのは大きかった。私も含めて、若い子、チームにとって自信にはなった」と、目標のベスト8入りは届かなかったが、トップ4に限りなく近い存在であるイングランドに勝ち切ったことの意義の大きさも強調。

だからこそ、「フィジー戦、勝てる試合落とした」ことには反省しきりでもあった。

「ドバイからアタックのフィジカルファイトにこだわってやってきたので、行き過ぎ。もうちょっといいところでボールを出して、サポーターもキャリアに任せて、早く入れなかった。

相手によって戦法変える賢さ、スマートさも必要。

アタックのクォリティを上げていかないといけない。ターンオーバーからの失点があまりにも多い。そこを北九州に向けてフォーカスしていきたい」(同キャプテン)

 

全試合で先発した田中もドバイ大会に比べ落ち着いたプレーぶりが目立った
photo by Kenji demura

 

10代の3選手(大竹、田中、平野)が揃って全試合で先発するなど、世界トップとの戦いの中で若手が貴重な経験を積んだことも確か。

サクラセブンズにとっては、4月に控える地元・北九州大会でのベスト8入りへ向けて、着実にステップアップした姿を披露してみせた、真夏の南半球での戦いとなった。

 

text by Kenji demura