早稲田大学 大隈講堂 全国大学ラグビー選手権のプレイベント「全国大学ラグビー トークバトル2004」が、12月9日、東京・新宿区の「早稲田大学 大隈講堂」で行われました。当日は、635名のお客様にご来場いただきました。ありがとうございました。
以下はその内容です。
 

冒頭、日比野・日本ラグビーフットボール協会会長代行よりご挨拶
日比野: 今日はたくさんの方に足をお運びいただき、協会を代表して厚く御礼申し上げます。トークバトルを始める前に2つ、お詫びいたします。1つは、日本代表の(ヨーロッパ遠征における)惨敗でございます。私どもも非常にショックを受けておりますが、こんな状況でワールドカップを招致するとは何事だと、お叱りの声も多く届いております。しかし私どもは、日本代表を強くするためにも、日本のラグビーを盛んにするためにも、ワールドカップの招致活動に全力をあげることが一番と考えております。もう一点は、昨年、大学選手権の制度改革を行い、リーグ戦形式を採り入れたことです。試合数を多くし、観客の皆さんにより楽しんでいただこうということで始めましたが、経費の問題、また出場チームからも調整が難しいという話があり、わずか1年で元のかたちに戻すことになりました。
以上の2点について、心からお詫びいたします。
さて大学ラグビーが、いよいよ選手権大会に入ります。今年は早稲田が本命だといわれています。私は中立の立場ではありますが、大変うれしく思っています(会場、ウケる)。しかし大学生ですから、どこのチームも紙一重。どんな試合が展開されるのか、私も楽しみです。今日のトークバトル、そして大学選手権の試合を、ぜひお楽しみください。
 

「全国大学ラグビー トークバトル2004」出演者
パネリスト 関東学院大学・春口廣監督、早稲田大学・清宮克幸監督、
法政大学・山本寛監督、同志社大学・中尾晃監督(着席順)
コーディネーター 村上晃一(ラグビージャーナリスト)
司会 石川洋(NHKアナウンサー)・竹林宏(NHKアナウンサー)

 

各種データから、各チームを分析
石川: 今回はコーディネーターとして、村上晃一さんをお招きしています。村上さん、大学ラグビーの今シーズンは、どうみていますか。
司会の石川アナ(左)と村上氏
司会の石川アナ(左)と村上氏
村上: 皆さんご存じのとおり、早稲田が独走してます。しかし法政がよくなってきましたし、関東学院も法政には負けましたが、それ以外は全勝。各チームが差を詰めてきているので、この選手権、意外と面白いのではないかと思っています。
石川: それではまず、各チームを数字の面から見ていきましょう。NHKのハードウェアと呼ばれている竹林アナウンサー、お願いします。
各リーグの成績(1試合平均)
トライ
失トライ
反則
関東学院
7.71
2.71
9.71
早稲田
10.71
1.43
10.85
法政
7.42
2.28
9.28
同志社
10.00
2.22
10.22
会場の様子

 

村上: トライ数をみると、早稲田がダントツなんですが、同志社が10トライということで、やはり関西では頭抜けた存在だということが分かります。春口さん、この数字はどうですか?
春口: 反則を少なくしようということでシーズン当初からやってきたんですが、多いですねえ‥‥それでも早稲田より少ないですねえ(会場、ウケる)。
石川: トライ数はどうみますか。
春口: 今年は得点力がなかったですね。フォワードでほとんど取れなかったから。去年はフッカーの山本あたりのトライが多かったですからね。
石川: 続いて、早稲田。申し分のないトライ数、そしてディフェンスだと思いますが。
清宮: たぶん早稲田は前半の反則が少ないんですよ。後半になると点数がついてしまって、どうも"あら探し"をされている感じがするんですよ。
竹林: 後半の反則のほうが多かった試合が、7試合中3試合‥‥(会場、ウケる)。
石川: 法政大学はまんべんなくいい数字ですね。
山本: この4チームのなかでは、いちばんトライに結びつける力が少ないということですね。失トライについては、少ない印象はありました。
石川: (勝利をあげた)関東学院との試合はすごかったですね。
山本: 関東学院さんがすごかったから、我々も頑張れたということです。
春口: やっぱりあれだけお客さんが入ると、法政が有利になりますよね(会場、ウケる)。
石川: 村上さん、今年の法政は?
村上: 去年よりはちょっと苦しいかなと思っていたんですが、最終的にはまとまってきた。法政の選手って、思いきり走っていくじゃないですか。気持ちがいいくらい。法政は毎年そうなんですが、やはり山本監督の手腕ですか?
山本: いえいえ、私ではなく、先輩たちが築いてきたものを踏襲してきたのではないかと思います。ま、反則が少ないのは、レフリーに恵まれたのではないかと。
石川: 同志社大学。このシーズンの関西リーグは方式が少し変わって試合数が増えていますが。
中尾: 10月の頭から、毎週ずっと試合が続いたので、きつかったですね。じっくり練習をする時間がとれなかった。
石川: それでは竹林さん、同志社の特徴がわかる、次のデータをお願いします。
竹林:
竹林アナ

各大学の主なトライゲッターを並べてみました。数字はトライ数です。同志社は関東よりも試合数は多いんですが、1年生が多いんですね。宇薄選手が15。1年生のトライ数が群を抜いています。

主なトライゲッター ゴールキッカー
関東学院 北川(10)、有賀(6)、田井中(6) 田井中 65.4%
早稲田 松本(8)、桑江(7)、佐々木(5) 五郎丸 73.5%
法政 山本(9)、田沼(8)、小笠原/大隅(6) 森田 74.3%
同志社 宇薄(15)、正面(12)、平(7) 平 75.6%

 

中尾: 宇薄はU19日本代表のひとりで、非常にスピードがあり、けっこうトリッキーな動きをします。ふだんは、おとなしい子ですけどね。
石川: 同志社というと正面選手のイメージが強いですがね。
村上: たぶん平君、仙波君の両センターがいいので、ウイング(宇薄選手)にチャンスが生まれて、トライが取れているのではないかと思います。正面選手は、けっこう自分ひとりでトライを取れますよね。ところで(ドレッドにした)正面君のヘアースタイルはどうなんでしょう?(会場、ウケる)
中尾: どないしたんや、って最初はびっくりしたんですが、マスコミの方などにも、けっこう評判がいいようで、本人も気に入っているみたいです。
村上: 大学ラグビー界のウマンガっていわれてますね。
清宮: 去年、中尾さんが監督になられて茶髪禁止にしたじゃないですか。それまで同志社といえば15人中ひとりぐらいしか黒い髪がいませんでしたから。当然でしょうと評価していたんですが、あの(正面君の)頭は許してるんですか。
清宮克幸監督
中尾: 茶髪云々ということではなくて、チームの規律をしっかりししようということで、まあ頭のことから入ったといいますか、あまり細かくこれはダメ、あれはダメということはいってませんから。
村上: 早稲田は茶髪禁止ですか?
清宮: もちろん禁止です。
村上: ドレッドヘアーも?
清宮: 禁止ですけどね、去年それに近いやつがいたんですよ。「お前テンパーか?」ってきくと「テンパーです」ってだまされて。いま5年生やってますけどね。
石川: 関東は?
春口: 禁止はしてませんけど、ひとりもいません。スキンヘッドはいっぱいいますけど(会場、ウケる)。
清宮: うちも(茶髪は)禁止ではないですよ。ただやるやつがいないだけで。禁止なんて言ったことは一回もないです。
村上: でも顔が禁止って言ってますよ(会場、ウケる)。
石川: 清宮さん、(主なトライゲッターをみると)やはり今年の早稲田はフォワードが強いのでしょうか。
清宮: フォワードは(シーズンを通して)ずっと出ているメンバーなんですよ。バックスは全部の試合に出ている選手がいなくて、みんな2~3試合ずつしか出ていない。フォワードとバックスのトライ数の比率は、春からだいたい5:5ですね。
石川: 法政はバックスのほうがいいですね。
山本: そうですね。バックスのトライ数が、特に両ウイングが多いですね。その選手を使い続けた、ということもありますが。
石川: 春口さん、そのへんは法政と対戦するときに分析していたと思いますが。
春口: 法政はね、たぶんセンターがいちばん突破力があるとは思っていたんですが、ただ、人のことよりも自分のことで‥‥うちはフッカーが揃っている程度で、フォワードが少ないでしょ。今年はぜんぜん走れないし。だから、トライに行かない。そこですよね、今年、弱いのは。フォワードが走れるようになってきたら‥‥もう時間がないか(会場、ウケる)。もうフォワードなしで、全部バックスでいくとか。たとえばフランカーの阪元なんてセンターですからね。竹山もバックスですし。この(主なトライゲッターの)表にフォワードの選手がひとりでも出てきていればよかったのですが。
春口監督
ベスト4以上を狙う監督たちの"頭のなか"は‥‥
石川: (今年のトーナメント表が映し出され)まず村上さん、注目のカードをあげていただけますか。
村上: 1回戦でいうと、まず明治-大体大ですね。ぼくが大体大出身ということではなくて、関西の中尾さんに加勢したいということであげさせていただきました(笑)。それから帝京-立命館、京産大-大東文化、あたりがけっこう面白いかなと思います。もちろん(関東学院・早稲田・法政・同志社の)4チームが本命ですから、ベスト4に勝ち上がっていくとは思いますが。2回戦の準々決勝は、相当面白いと思います。あくまで予想ですが、関東学院にチャレンジする帝京、法政に挑む明治、同志社は慶應と、早稲田は大東文化と当たるでしょう。特に長居第2の2試合は注目です。ただ長居第2で、キャパが5000人くらいですから、お客さんが入りきれるかどうか心配です。
石川: 立命館と帝京、どちらが上がってくるか分かりませんが、関東はリーグ戦、帝京は対抗戦で、公式戦での直接の対決はありません。そこで竹林さん。
竹林: 違うリーグのチーム同士、春から秋にかけて、練習マッチ、オープン戦というかたちで対戦しています。関東学院と帝京の対戦をみると、5月に45-14、1月に43-14と関東学院の二連勝の後、交流戦というのがありまして、47-29で帝京が関東学院に勝っています。
春口: 有賀がいなかったんです(会場、ウケる)。
石川: 春ですから、チーム力はいまとはちがうでしょうし。
春口: 春はみんな勘違いしてたんですよね。先輩たちが強いから、自分たちも強いと思っていた。でもだんだん分かってきて、精神的に落ち込んできてたんでしょう。それでとうとう有賀がいなくなって、負けちゃった。
石川: あまり気にしてませんか。
春口: はい、このときのことは。
石川: (今度、当たるかもしれない)帝京については?
春口: 帝京はいやですね。赤いの見るだけでいやです(会場、ウケる)。
村上: 法政は恐らく明治とですね。2回戦。
石川: 山本さんはどう予想されていますか。
山本: 明治大学さんには、シーズン前に博多で勝たせていただいたんですが、非常に荒い試合になりました。そういう意味で心してあたらないとと思っています。ただ、その前に26日に(2回戦に)行ければいいなと思いますが。
山本寛監督
村上: 謙虚ですね。
石川: 本心じゃないですよね(笑)。竹林さん、シーズン前の法政-明治はどうでしたか。
竹林: 8月に対戦してまして26-19で法政が勝っています。
山本: 菅平でやらせていただいた。最後まで19-19でしたので、あまり参考にならないかと。そのあとうちは、早稲田さん、同志社さんにやられまして、こうした練習試合があったから、今年リーグで(優勝という)結果が出せたのではないかと思っています。
竹林: 同志社は9月に法政と明治に勝っています。その後、帝京に敗れています。
中尾: 関東に遠征しての3試合で、最後に帝京さんとやって、けちょんけちょんにやられました。
石川: その同志社は1回戦、まだ決まっていない関東第5代表、すなわち筑波と東北学院の勝者と当たります。(注/12月12日の試合の結果、筑波大学が関東第5代表に決定)
村上: ふつうにいけば、筑波が来るでしょう。そして、まあ同志社が勝つでしょう。2回戦は慶應が来ると思います。今年の慶應は決定力のある選手がいますし、面白い試合になるのでは。
中尾: 5月に慶應とやって負けてるんですね。一所懸命やるだけです。
石川: 清宮さん、どうかしましたか。
清宮: 私はさっきから、(2回戦の)長居第2がどうしても気になって‥‥、花園はあいてるんですよね。
石川: 次の日から高校ラグビーが始まるということで。
清宮: (順当にいけば)関東-帝京、そして慶應-同志社。この2試合を長居第2でやらせるというのは‥‥。(会場から拍手)
春口: 2007年、2011年(のワールドカップ)にね、日本のラグビーを担うのは、この人たちでしょ。長居はいいけど長居第2ですからね。
清宮: 信じられませんね。
村上: 清宮さんは、他のところの心配をする余裕がありますね(笑)。みているのは準決勝あたりでしょうか。
清宮: そうですね、準決勝くらいから‥‥この間の試合で負傷者が何名か出ているので、ベストメンバーがそろうのが準決勝からですかね。
村上: ちなみに1・2回戦は誰が出られないんですか。
清宮: それはちょっと‥‥。
石川: 去年は春口さんがこういう感じだったんですよね。
春口: そんなことないですよ。去年も必死だったですよ。人のグラウンドの心配なんてとても‥‥でもありがたいです。
なんとか早稲田のペースを乱してほしい
石川: さあ村上さん、最終的に準決勝に残りそうなのは。
村上: この4つ(関東学院・早稲田・法政・同志社)ですよ。ここにいらっしゃるからというわけでなく、1月2日に国立競技場に進むのは、この4チームでしょう。
竹林: そして過去、リーグ戦で優勝を逃しながら大学選手権で優勝した例もいくつかあります。清宮監督がキャプテン時の早稲田もそうでした。春口さんいかがでしょう。
春口: そうですね、早稲田以外の3チームにもチャンスはあるかもしれません。早稲田がメンバーをとっかえひっかえ使っているうちに調子が狂ってきて‥‥。
石川: そうするためには?
春口: 同志社にも法政にも悪いけど、(決勝には早稲田・関東学院が)来るでしょう。(トーナメント表の)右側のチームには、いかに早稲田を狂わすか、期待してます。左側は、法政・明治・帝京・関東ですか、ここを(関東が決勝まで)スムーズに行って、早稲田が混乱していてくれればちょうど互角くらいかな。やっぱり中尾さん、準決勝で、髪の毛みんな切らせるとか、もしくは清宮が嫌いな茶髪にみんなするとかして、なんとかペースを崩させないと(会場、ウケる)。まず、大東に期待してるんですよ。大東がいったとしても、その後、同志社で調子を整えられるとまずいから、法政がいくにしろ、うちがいくにしろ、なんとか早稲田のペースを乱してほしいところです。
石川: 中尾さん、かなり強い要望が寄せられてますが。
中尾: 全員、正面みたいな頭にしましょうか(会場、ウケる)。
中尾晃監督
石川: 赤いジャージーを着てもいかもしれません。
中尾: そうですね(笑)。
石川: これまでの話でも、早稲田が抜きんでているということなんですが、清宮さん、その通りですか。
清宮: ええまあ‥‥。去年、関東が優勝して、そこで「清宮、待ってるぞ」とお声をかけていただいて、今年は「待ってないと怒るよ」と言いたい。
村上: けっこう皆さん、共通点があって仲がいいんですよね。中尾さんと山本さんは高校で先輩・後輩ですし、中尾さんが高校ジャパンのキャプテンだったときにウェールズ遠征をして、その次の年に清宮さんが高校ジャパンのキャプテンとしてニュージーランドへ遠征。その両方に春口さんはトレーナーとして参加しているんですね。
春口: 昔はよく面倒みたもんですよ(会場、ウケる)。清宮がケガしたんですよ。初戦でね。それでほとんど食べられなくて。
清宮: 唇が割けてしまったんです。ペロンとカーテンみたいに。病院に(春口さんが)いっしょについてきてくれまして。
春口: その後、化膿したんです。膿も出てきて。それを毎朝ケアしてあげてた。ああいうのを、忘れちゃいかんなあ(会場、ウケる)。でも、そういう怪我をしても続けてましたから、ものすごいファイターですよ。ものすごいやつだなあと思いました。そういうやつが(早稲田の)監督になって、うちのグラウンドに来て「試合をしましょう」といわれたときには、感動しました。
石川: それでは会場の方からの質問に答えていただきましょう。まず春口監督へ。「早稲田と試合をするときには、どのようなゲームプランをたてますか?」
春口: とにかく早稲田はすべてにおいて関東学院を上回ろうとしてますから、どこかひとつ崩せれば、たとばスクラムならスクラムだけということでやってます。
石川: 中尾さん、今年の同志社でひとつ早稲田に勝てるところをあげていただけますか。
春口: ヘアースタイル(会場、ウケる)。
石川: 次に清宮監督への質問。「他の大学を指導するとしたら、どこがいいですか?」
清宮: うーん、面白いところでは大東文化ですかね。自分たちのカタチを持っていないチームという意味で。潜在能力が高そうで、しかしコーチングがなされていないイメージがありますので。
石川: 山本監督へ。「法政はアメリカンフットボールも強いですが、お互い刺激を感じていますか」
山本: そうですね、アメリカンフットボールとあと駅伝と、ラグビーがそろって年末年始に活躍したいというのは、ひとつの励みになります。
石川: そして中尾監督。「関東の大学にはどうやって勝ちますか?」
中尾: 関東はたしかに関西よりもレベルが高いですが、トーナメントで一回勝負、何が起こるかわからんというところで、学生たちに期待しています。
石川: 注目の選手は。
中尾: やはり正面、ハーフの竹山、それから平でしょうか。
村上: 平選手はいいですね。
石川: トークバトルはこれで、ノーサイドとなります。皆さん、ありがとうございました。

運営協力:早稲田大学リスの会