――声を荒げたあの監督、顔が青ざめたこの監督――

12月10日(土)、東京・大崎ゲートホールにおいて、前年のシーズンの大学選手権でベスト4に残った大学の監督にお集まりいただき舌戦を繰り広げていただく、大学ラグビートークバトルが今年も開催されました。

会場は大崎ゲートホール
会場は大崎ゲートホール

始めに日本ラグビーフットボール協会の和田副会長から
「来週から大学選手権がスタートします。そのプレイベントとして本日、4大学の監督にお集まりいただきました。大学ラグビーとともに日本ラグビーが発展してきたといっても過言ではありません。面白い、エキサイティングなラグビーが展開されるよう、皆さんで盛り上げていただければと思います」と挨拶があり、コーディネーターの村上氏、上田氏が登場。いよいよ開幕です。

「きょうは清宮が暴言を吐かないように、抑えるために来ました」と上田氏が第一声を発すれば、「ぼくの役目は、上田さんが暴走しないように抑えることですから」と村上氏。
そして早稲田大学・清宮克幸監督、関東学院大学・春口廣監督、同志社大学・山神孝志コーチングアドバイザー、法政大学・齋藤実監督(着席順)が紹介され、席につきました。
なお同志社大学から出席予定だった中尾監督は、合宿のため都合がつかず、急きょ、山神孝志コーチングアドバイザーの代理出席となりました。

■「全国大学ラグビー トークバトル2005」出演者

パネリスト
早稲田大学・清宮克幸監督
関東学院大学・春口廣監督
同志社大学・山神孝志コーチングアドバイザー
法政大学・齋藤実監督(着席順)
コーディネーター
上田昭夫(日本ラグビーフットボール協会コーチ委員会副委員長)、
村上晃一(ラグビージャーナリスト)
司会
石川洋(NHKアナウンサー)

 

 

冒頭から余裕の早稲田・清宮監督
石川: さっそくですが、清宮さん、山神さん、齋藤さんは同期なんです。
上田: 齋藤さんは初めてだから初々しいね。はじめの二人(清宮氏・春口氏)はさんざん出てるからふてぶてしいけど。
石川: それでは大学選手権のトーナメント表からご覧いただきましょう。
村上: 注目は大阪体育大学と明治の対戦ですね(客席ウケる)。でも、左のヤマは清宮さんのところが楽勝ですかね、上田さん。
上田: まあね‥‥早慶戦でも50~60点は差が開くとは予想していましたから。
村上: (右は)東海・帝京が面白そうですし、大東と関東が勝ち上がってくると12月25日の対戦の2回戦の対戦も楽しみです。早稲田・慶應(になるかもしれない)の2回戦も指定席券はもうないみたいですし。
石川: それではトーナメント表を見ながら、各監督さんにお話をうかがいましょう。
清宮: 大阪体育大学・明治は花園ですよね。花園でやる明治は弱いんですよね(客席ウケる)。その逆で、大体大は東京に来ると渋谷とか六本木行っちゃうんでぜんぜんだめ(客席ウケる)。あと東海・帝京はそんなに面白くないような‥‥関東学院と大東文化は面白いですねえ(笑)。
早稲田大学・清宮克幸監督
早稲田大学・清宮克幸監督
上田: 石川さん、ちょっとしゃべり過ぎじゃないですか?
石川: それでは春口さん。
春口: んー‥‥人のことを言えるようなチームじゃないですからねえ。とにかく日本体育大学とは、わが母校ですので、大切にいかないとと思っています。有賀のお父さんも日本体育大学ですし。次、大東文化が来たらどうしようかな‥‥天理にがんばってもらいたい(客席ウケる)。
清宮: けっこうスクラム強いみたいですよ(客席ウケる)。
上田: 今年の日体大はいいですよね。
石川: 大東文化にはリーグ戦でかなり苦しみましたよね。
春口: うん、いまも苦しい(笑)。
石川: 同志社大学からは中尾監督に代わって山神さんに急きょお越しいただきました。コーチングアドバイザーというのは、コーチとは違うのですか?
山神: ふだん東京にいるものですから、週末しかみられませんので。
石川: 中尾さんは、あまりここには来たくない、という噂もきいておりますが‥‥。
山神: 中尾さんはあまり好きではないようです。東京が嫌いなのか、ここでイジられるのが嫌なのか‥‥(客席ウケる)。
石川: そして法政の齋藤さんも初めてです。今シーズン、初めて指揮をとられて、大学選手権にはどのように臨まれますか。
齋藤: いや‥‥みな強いんで‥‥学生から「あまりいらないことを言わないでくれ」と言われてまして(笑)。頼むから品位を落とすようなことを言わないでくれと。
上田: 存在感はいちばんありますよね(客席ウケる)。でも村上さん、福岡大学も強いですけど、法政は明治と当たる可能性が高いわけで、ここも面白いですよね。
村上: 面白いですね。
清宮: 福岡大って見たことないでしょ、上田さん。村上さんもないでしょ。夏にやったんですよ。今年の福大はかなりちがいますよ。うちの3(本目)くらいとやってどうか。トップリーグに3人行きますよ。
上田: そういうの詳しいね(客席ウケる)。
清宮: なんでも知ってますよ(さらに客席ウケる)。
石川: 齋藤さんがじっーと見てますよ。
清宮: じゃ、この後の懇親会で。
上田: 余裕だよねー。清宮がここ(コーディネーターの席)に座ったほうがいいんじゃないの。
石川: 山神さん、慶應と当たる京都産業大学は今年どうですか。
山神: ぼくらの頃は、地味な練習をさせたら日本一だ。無駄な練習では日本一だと言われてたんですよ(客席ウケる)。でもいまは、豊田自動織機にいたコーチが入っていて、変わってきて、監督の大西さんとの相性がいいんじゃないでしょうか、若いチームですが、ハマるといいところまでいきますよ。
村上: 1・2年生が多いんですが、豊田自動織機を強くしたミルステッドさんがコーチになっていいチームになってますね。
上田: 京都産業大学は毎年5月に関東に来て、慶應と試合をするんですよ。シンプルで素直なラグビーをしますよね。
村上: 京産大が上がってくると、早稲田のセカンドジャージが見られます。
法政・齋藤監督の爆弾発言に場内どよめく
石川: ここで、こちらのデータを見ていただきましょうか。
村上: ものすごい簡単なデータですけど。早稲田が圧倒的に失トライが少ないですね。それから同志社が、得点力が高い。
■4大学チーム成績(リーグ戦のみ)

大学名
リーグ戦
順位
総得点
総失点
得失点
総トライ
失トライ
反則
(FK含む)
早稲田大学
1位
459
57
402
73
8
74
関東学院大学
1位
351
119
232
55
16
71
法政大学
2位
224
184
40
33
27
78
同志社大学
1位
501
110
391
75
17
72

 

上田: 今年は関東も一敗して、リーグ戦が混戦だった。だからダントツに勝った早稲田・同志社は、こうしたデータではよくなっちゃう。
石川: 清宮さん、どうですか。
清宮: これ(データ)はあんまり意味ないですね。
村上: こっから話を膨らませていただかないと‥‥。
清宮: 強いて言うなら、総トライ数は早稲田が73、同志社が75でほぼ同数。それで総得点が40ほど同志社が多いというのは、キッカーがいいんでしょうね。
村上: (同志社の)君島君のキックはいいですね。
山神: 彼は元はサッカーをやってたんですね。キックは上手ですね。軽いキックを蹴ります。
上田: 彼はU19日本代表だったので、いっしょに遠征に行きました。ゴールキックは100%の力でなく、非常に正確でした。若干、けがが多いのと、ディフェンス力が当時は弱かったけれども、トーナメントではとても強力な武器になるでしょう。
村上: 君島選手はディフェンスのとき、スタンドオフのポジションにいないんですよね。代わりに正面選手が入ってくる。正面選手はものすごくよくなってますね。コンタクトプレーに強くなった。
山神: 君島はかなりタックルされるんですよ、マークがきつくて。でも、君島もディフェンスよくなってきてます。
■4大学トライゲッターランキング


早稲田大学

関東学院大学

法政大学

同志社大学

名前

TRY数
名前
TRY数
名前
TRY数
名前
TRY数
菅野朋幸
8
北川智規
14
友井川拓
6
宇薄岳央
16
佐々木隆道
5
有賀剛
5
野村直矢
5
正面健司
9
五郎丸歩
5
阪元弘幸
5
小笠原仁
4
浦真人
6
畠山健介
4
吉田正明
5
高山将一
4
釜池真道
6
今村雄太
4
土佐誠
4
和田耕二
2
田原章太郎
4
矢富勇穀
4
林時光
3
成田秀悦
2
大橋由和
4
池上真介
4
櫻谷勉
3
大村篤
2
森田尚希
4
若野祥大
4

 

 

村上: 特徴的なのは早稲田の選手が各ポジションまんべんなくとっていることですね。プロップの畠山選手も4トライですからね。関東学院や同志社は、ウイングにトライが集まっていますね。チームカラーが出ているかと思います。
石川: 北川選手はすごいですね。
春口: オープンサイドですから。
村上: 同志社の宇薄君もオープンサイドですから、多いですね。でもブラインドサイドの正面君でも9トライもとってますね。
石川: たしかに早稲田はまんべんなく‥‥どこからでもトライがとれますね。
清宮: はい。
上田: ぼくは早稲田については、矢富の4トライが印象的ですね。彼は今までにないタイプで、サイズも大きいし、元々センター、ウイングなのでスピードもあるし。ところで法政はどうだろう、バランスがとれてますかね。
村上: スクラムハーフの選手が複数、入ってます。
清宮: 友井川は元々ハーフだったのをウイングにしたんですか?
齋藤: いやー‥‥。
清宮: よけいなこと言っちゃいけないから?
上田: いいですよ、しゃべって。
村上: 同志社はバックスのトライが多いですね。
上田: しかし関東学院の北川君の14トライはダントツですね。
石川: 関東学院は去年のメンバーも多く残って、今年も強いというのがファンの印象だったと思うんですが、リーグ戦では苦戦もありました。
春口: 今年は春にケンブリッジに勝って(少し油断して)、リーグ戦の途中にオックスフォード遠征したのがいけないって言われたんですよね(客席ウケる)。それで東海大学に負けて。
関東学院大学・春口廣監督
関東学院大学・春口廣監督
清宮: ちょうど(東海に)負ける3日前くらいにテレビの収録があって、終わって去り際に、東海強いですよーって言ってたんですよ(客席ウケる)。
春口: たしかに東海がしっかりしているという印象はあったんですよ。油断ですかねー。海外行ってワイン飲んだりしたから。その敗戦が尾を引いて、ケガ人も出たし。
上田: でも立て直してきたじゃないですか。
清宮: 田井中は戻さないんですか?
春口: 明日(の法政とのジュニア戦の結果しだい)。
齋藤: うちは森田と野村がジュニアとして出ますので‥‥。(一同、色めき立つ)
清宮: そりゃあないでしょう。(客席どよめく)やめましょうよーそういうの。どう思います、上田さん?
上田: ジュニア選手権にレギュラークラスを出すっていうことは、(本来なら)ジュニア選手権に出る選手のチャンスを逸することになるわけですよ。ぼくはそれは許せない。
清宮: ホントに出すの?
齋藤: はい、メンバーはひととおり出しますんで。よろしくお願いします。
清宮: Aチームじゃないの、それ。(表をみて)このトライしたメンバーひと通り出るの?
齋藤: そうですね(どよめく)。‥‥うそうそ、うそです(笑)。
石川: 齋藤さん、面白いですねー。
上田: 春さんも驚いてたもん。
石川: 森田選手はけがをしてましたし、野村選手との兼ね合いはどう考えてますか。
齋藤: まったく別の人種ですね。森田は、あの、感性で動くタイプのプレーヤーなんですが、野村の場合は行き当たりばったりで。
村上: 同じことじゃないですか(笑)。
齋藤: すみません、帰っていいですか(客席ウケる)。
早稲田・矢富選手の秘話、明かされる
石川: さて、村上さんに各チームの注目選手をあげていただきました。早稲田は青木選手、今村選手です。
清宮: 青木は今年いいですね。特にこの2試合、慶應・明治戦はすごくいい。スクラムも強くなってるし。彼はプレーを継続・持続させる能力がすごく高い。
石川: 桑江選手が卒業して、今年のフォワードはどうかという話もあったと思うのですが。
清宮: 桑江は別に誰も頼ってなかったですよ。頼られるタイプでもないし。みんな好き勝手にやってましたしね。「桑江はほっといていい。7人でまとまろう」って(客席ウケる)。
石川: 今村については。
清宮: 今村は今年いいですねー。慶應の松永さんが、今村が足が速いのを知らなかったみたいで、ビックリしてました。もっとマークしとかなきゃって。
上田: 今村ってエリートアカデミーで育てたんだよね。
清宮: なにも教わってないって言ってましたよ(客席ウケる)。
上田: 彼はね、センターとしてはまだスキルがない。ただ身体能力が高い。
清宮: いやいや、そのへんはじっくり教えましたよ。いまうちのバックスでパスのスピードが速いのが今村と曽我部です。リストが非常に強くて、ポンと手首だけで20メートルくらいパス投げられます。試合ではなかなかそういうプレーはみせませんが。
村上: 写真でみると、脚の筋肉は馬みたいですよね。
清宮: ほんとに地面を蹴る音がすごい。
石川: 村上さんがあげた2人に追加するとしたら?
清宮: 中心はキャプテンですけどね、今年は誰がキープレーヤーになるのか、分からないですね。矢富もあるし、曽我部もあるし、五郎丸もあるし。
上田: ハーフ団が面白いよね。
春口: 矢富なんかは、慶應はいちばん翻弄されてたよね。
上田: 慶應だけじゃないと思いますけどね。
春口: なにするか分からない。
上田: 若干、持ちすぎの感がありますが。持ちすぎでもゲインされるとイヤなタイプではありますが。
清宮: 彼は高校(京都成章)のとき、センターだったんです。12番。で、高校の1・2年ではスクラムをちょっとかじったという情報があって。高3の6月に伏見工業と試合をするっていうので京都成章の監督に電話して「スクラムハーフで使うんだったら見にいくけど」って言ったら、いきなり12番から9番に変えたんですよ(客席ウケる)。で、1試合みて可能性を感じました。