――虎視眈々と探りあいからスタート。そして次第にヒートアップ!――

森喜朗会長
森喜朗会長

12月9日(土)、東京・大崎ゲートシティホールにおいて、前年に大学選手権でベスト4に残った大学の監督にお集まりいただき舌戦を繰り広げていただく、「大学ラグビートークバトル」が今年も開催されました。

はじめに日本ラグビーフットボール協会の森喜朗会長から挨拶がありました。
「日本協会としては、2015年のワールドカップを日本に招致することを表明しています。それはただ日本でやりたい、ということではない。ラグビーをもっと国際的なものに、グローバルなものにしたいからです。
いまの大学生は、2011年、2015年のワールドカップの中心選手となる世代です。大学レベルに満足しないで、さらに上、そして世界をめざしてほしい」

続いてコーディネーターの村上氏が紹介され、「早稲田の3連覇や、関東学院の10年連続の決勝進出などが注目されていますが、今回は各大学とも力が拮抗しているので、第一回戦から何がおこるかわからない、楽しみな大会です」と挨拶。今回も白熱したトークバトルが展開されました。

当日、大崎の会場までお越しいただけなかった、すべての大学ラグビーファンの方のために、会場の模様をお伝えいたします。

■「全国大学ラグビー トークバトル2006」出演者

パネリスト
早稲田大学・中竹竜二監督
関東学院大学・春口廣監督
同志社大学・中尾晃監督
法政大学・武村秀夫監督(着席順)
コーディネーター

村上晃一(ラグビージャーナリスト)

司会
黒氏康博(NHKアナウンサー)

 

 

すべり出し快調な早稲田・中竹監督
司会: それではさっそく始めましょう。村上さん、まずは今回のトーナメント表をみて、全体的な印象はいかがでしょう。
村上: 一回戦から、どうなるかわからない面白いカードがならびましたね。
司会: あまり三連覇は意識したくない、という中竹さん。いかがですか。
中竹: まず、どうしてこんな感じになったんでしょうね。同じリーグの1位(早稲田)と3位(慶応)が早めにあたるとか‥‥。
村上: あとで、大学委員長でもある武村さんに聞いてみましょう。
左が司会の黒氏アナウンサー、中央が村上氏。右は中竹監督
左が司会の黒氏アナウンサー、中央が村上氏。右は中竹監督
春口: 一回戦は、法政と福岡大の対戦が一番面白いと思います(会場ウケる)。
司会: 一昨年は(福岡大と九州で対戦して)、苦労されましたか?
春口: 九州男児はすごくタックルいいですからね。(法政は)こわいんじゃないかな。
中尾: 村上さんと席を替わりたいぐらいの心境です。今年は一回戦から盛り上げたい。それ以上のコメントはありません(会場ウケる)。
司会: (一回戦の対戦相手)慶応はどうでしょうか。
中尾: 前にも対戦しているんですが、とにかく、なるべく良い状態で試合に臨みたいと思っています。
中竹: うちは同志社を応援しています(会場ウケる)。
村上: 武村さん。この組み合わせは、大学委員長でもある武村さんが中心になって決めたわけですよね。
武村: 委員長の立場から言いますと、一回戦で、対抗戦・リーグ戦の、同じ地域にあたらないようにというのが一番です。そして、人為的なことは一切やっていない、ということを理解してください。法政の監督としては、一回戦は6:4ぐらいの割合で、なんとか勝てるかな? と思っています。
村上: やっぱり、みなさんハッキリしたことは言いませんね。公式戦で、慶応と関東学院の試合を年に一回ぐらいはみたい、という声もありますが。
春口: やってみたいですね。慶応の百周年の時にやって、それが最初で最後です。武村さん、この組み合わせは仕方ないですよね。以前、わたしたちも九州へイイ旅をさせてもらったことがありました。あれですごく強くなった。でもお金がかかってね。宿泊先も自分たちで探さないといけない、練習場もないんですよ。そんな状態ですよ、日本のラグビーは‥‥もう愚痴はやめよう(会場ウケる)。

 

ホメ殺し?あり、自画自賛あり。心理戦がスタート
司会: さあ次は、各大学の特徴をデータからみましょう。
中竹竜二監督 (早稲田大学)
中竹竜二監督 (早稲田大学)
村上: 昨年は早稲田の清宮さんに、「リーグが違うから意味がない」と言われました。
中竹: いや非常に意味があると思いますよ。やっぱり数字でしょう。データは大切です。
司会: 前監督との違いをだそう、という意図がありますか?(会場ウケる)
中竹: 関東さんと比べると、総失点、トライも負けていますね。
村上: かなり関東学院を意識されていますか。
中竹: 非常に意識しています。今日は「打倒、春口さん」で来ました。
司会: 何か前監督の清宮さんからアドバイスは?
中竹: さっきまで電話で打ち合わせしてました。春口さんのテンポにのるな、と。
村上: 春口さんへは一般の方から、清宮さんがいなくなって寂しいのでは? という質問もあったようですよ。
春口: (小さな声で)もっと早く、いなくなっても‥‥。先日の早明戦の試合をみましたが、新しい監督はハーフタイム(のテレビインタビュー)で、よくあれだけしゃべれますね。ボクはインタビューされても、うまく応えられないですよ。(明治の)藤田監督も「後半、いきます。勝ちます」だけでしたからね(会場ウケる)。さっきから良くしゃべるなぁ、と関心しているんです。やっぱり数字が読めるからですよ。わたしなんか、数字が読めませんもん。
司会: それは視力の問題ですか。
■4大学チーム成績(リーグ戦のみ)

大学名

リーグ戦

順位

総得点

総失点

得失点

総トライ

失トライ

早稲田大学

1位

440

74

366

69

11

関東学院大学

1位

304

69

235

50

8

法政大学
(日大戦不戦勝)

2位

193

147

46

29

21

同志社大学

3位

226

121

105

33

18

 

春口: このデータはわからないですよ。もしウチが明治とやったら、もっと点数が上がったかもしれないし。法政と試合するまでは、もっと良かったんです。明治や慶応とは試合してないですから。だから意味が無いかなぁ‥‥。
中尾: 同志社は昨年と比べると、得点力半減なんです。半分以下ですね。素直に今年のウチの結果かな、と思っています。
村上: 去年、一昨年のトライ王の宇薄君が、今シーズンは4トライだけですもんね。
中尾: うまくボールが出ないこともあるでしょうし‥‥。
村上: 暗い話になってしまいましたね。武村さん、救ってください。
武村: この表をみると、法政は何から何まで一番下ですね。それでも2位になったのは素晴らしいことです。わたしの力かもしれません(会場、ウケる)。
会場の様子
会場の様子
司会: でも武村監督は7月からですよね。
武村: はい。斉藤くんがある事情で辞めることになり、OB会で「勝手に時間がつくれるのはお前しかいない」ということで、決まりました(武村氏は、東京・四谷にある長善寺の住職でもある)。
村上: これで6年連続ベスト4ですね。今回はぜひ優勝を、というところですか?
武村: そうですね。どのチームも同じでしょうが、2回戦が大きなポイントになると思います。それを突破しないと、正月を国立競技場で迎えられませんから。
村上: その対戦相手は、どちらだと思いますか?
武村: まったくわかりません。帝京大学は近くなので、よく一緒に練習などをやっていますから、試合のやり方はある程度インプットしています。京都産業大学とは夏合宿では試合をしました。すごくフォワードに力のあるチーム、というイメージです。ウチはそこが弱いので、対戦することになったら、相撲の「はたき込み」みたいなカタチで勝たないと。小錦にぶつかっていくようなものですから。
村上: 京産と対戦された中尾さん、いかがですか。8年ぶりに敗れてしまったわけですが。
中尾: 8年間も負けていなかった、という印象はないですね。確かにフォワードで攻めてくるのが、京産のスタイルです。

 

ゲームプランがズバリ的中? 早明戦裏話
司会: 次は4大学のユース代表選出の状況です。
村上: 早稲田は多いですね。
中竹: ん?、誰がそうなのわからないですね。前監督からも、高校時代の活躍は関係ないよ、と言われてます。
司会: じゃあ、この数字も意味がないと(会場、笑い)。
村上: 前の清宮監督は『何でこんなに明治が多いんだ!』と過激に言っていましたが。
司会: 早明戦が終わってみて、去年の明治との違いを感じましたか?
中竹: フォワード一辺倒でくる、とはっきり打ち出してくれたので、やりやすかったですね。いわゆる昔の早明戦のスタイルに戻ったので、ファンの方には良かったんじゃないでしょうか。
司会: 明治はかなりバテていましたか。
中竹: 前半の15分ぐらいから相当キツそうでした。でも、ウチは9人ぐらいしか試合していませんでした。バックスがヒマで、寒くて固まってしまうんですよ。いざバックスにボールがまわると、急には走れないので、試合中でもストレッチをして、ちゃんと準備しておくようにと言っていました。「あれは戦術だから気をつけろ」、と(会場、笑い)。
村上: 明治のヘッドコーチはハーフタイムに、「後半、絶対逆転します」と言ってましたが、後半はかなり疲労が見えてましたね。
中竹: そうですね。明治の選手の顔を見たら、「もう大丈夫だろう」と思いました。試合後に藤田さんが「早稲田がスクラムを組ませてくれなかった。逃げてる」みたいなコメントをしていましたが、明治が再三スクラムを選ばなかったんですよ。逆だと思いますけどね。
村上: 試合前から『走り勝つ』と言っていましたが、相手を疲れさせる、というゲームプランだったのですか?
中竹: はい。そのパターンに持っていけて良かったです。
村上: 春口さんは、今年の早明戦はどうでしたか?
春口: ‥‥あまり興味なかったです(会場ウケる)。
後半に、(早稲田が)あれだけメンバーを替えたでしょう。早明戦らしくなかったなぁ。伝統のゲームとしては残念ですね。それに明治の藤田監督が、あまりにも「フォワードでいくんだ」というのも、面白くなかった。実は明治が強いのは、バックスが強いときなんですよ。「まずはフォワードから」ということでしょうが、今ひとつでしたね。
早明戦の結果は当然ですよ。早稲田には五郎丸、今村、矢富、それに曽我部といったバックスに重戦車が揃っていて、それにウイングも速い。そこに「フォワードだけ」では‥‥(会場に笑い)。
春口 廣監督 (関東学院大学)
春口 廣監督 (関東学院大学)
去年もそうですが、早稲田のフォワードは弱そうに見せているだけで、ものすごく強いんですよ。わたしは勝負は、1番から3番の戦いだと思っています。早稲田と戦うことになれば、1番と3番に勝たなくちゃいけない。でも、そう言うと2番が奮起してくるんでしょうから、あまり言いたくないなぁ‥‥早明戦が日本の大学ラグビーを引っ張っていくとなると、あの明治では、ちょっと寂しかったなぁというのが正直なところです‥‥あれっ、シーンとしちゃった(会場に笑い)。
司会: データについては、どうですか。
春口: ウチは9人ですか。そんなにいない気がするんですが。今のメンバーの仙場や北川も違いますよね。だからあまり意味がないと思います。
村上: 中尾さんはいかがですか。
中尾: よく代表選考の基準がわからないですからねぇ。ウチはこういう人材しか採れない、というのもありますから一概に言えないですね。

 

人材は西から東へ。そして付属からライバル校へ?
村上: 次のテーマにいきましょう。「東高西低」ということで、人材は西からどんどん東の大学に流れています。中竹さんも高校は九州ですよね。
中尾: そうです。たぶん九州の人は関西より、東京に行きたい人が多いと思いますよ。
村上: 飛行機で羽田への方が、新幹線で大阪へよりも、はやく着くし?
武村: わたしは、それよりも付属の法政二高から早稲田へ行ってはいけないと思いますがね。小吹選手が入れば、もう少し法政も変わったと思いますよ(来年卒業する小吹選手は法政二高の出身)。今後そういうことがないようにお願いします。