日本選手権2回戦の第1試合は、日差しが春を想わせる秩父宮に7,500人余りの観客を集め、今季限りでの引退を表明した朽木監督率いるトヨタ自動車ヴェルブリッツと、来季からトップリーグ入りする神田監督率いる九州電力キューデン ヴォルテクスとの間で行われた。

トップリーグ4強を誇るトヨタ自動車に、九州電力の力がどこまで通用するのか。試合は開始早々2分、敵陣10mでのマイボールラインアウトからBKに展開、左右に揺さぶりをかけたトヨタがWTB遠藤のトライで先制。廣瀬の代わりにSOに入ったオレニのゴールも決まり7-0。続く7分にもラインアウトからBKに展開し、オレニが個人技で相手を抜き、ゴール下にトライ。ゴールも決まり14-0とリードした。
その後もトヨタの怒涛の攻撃は続き、WTB遠藤の3トライを含め、前半だけで8トライ、九州電力を0点に抑え、54-0と大きくリードした。

後半も一方的な展開かと思わせたが、開始4分、九州電力はゴール前のラックからBKへ展開。LOジャロッドがライン参加し、最後は強引に押し込んでこの試合初のトライ。ゴールも決め7点を返した。しかしトヨタは11分に正面が今日2つ目のトライ、終了直前の37分には、後半から入ったLO菊谷がトライを決め64-7と突き放す。ロスタイムに入った42分、九州電力はLOジャロッドが意地のトライを決めるも、結果は64-14でノーサイド。LO2人を中心に、FWが積極的に前に出て、FW・BK一体の攻撃を見せたトヨタ自動車が終始九州電力を圧倒した。

試合後朽木監督は、昨年の日本選手権で早稲田大学に負けた事をモチベーションにしてこの1年やってきたとコメント。来週は、その当時の早稲田清宮監督が現在率いるサントリーとの一戦。トヨタ自動車がどのような戦いを見せてくれるのか楽しみだ。(佐伯直宣)

九州電力 14-64 トヨタ自動車 九州電力 14-64 トヨタ自動車 九州電力 14-64 トヨタ自動車
 

神田監督(右)、川嵜キャプテン
神田監督(右)、川嵜キャプテン

 

九州電力キューデン ヴォルテクス 14-64 トヨタ自動車ヴェルブリッツ(2月11日)

◎九州電力キューデン ヴォルテクス
○神田識二朗監督
「トップリーグの4強との対戦ということで楽しみにしていました。トヨタの攻撃をファーストタックルで止めることができず、前半で勝負がついてしまったのは残念ですが、後半は風上でコミュニケーションをとって強い気持ちで戦ってくれて、次につながるゲームだったと思います。ジャッカルで絡めず、速く球を出されました。メンタルな面でも、こちらから仕掛けなくてはいけないところで仕掛けられず、集中力にも差があったと思います。今後は13試合、タフなゲームが続きますので、怪我人も多く出ます。選手層を厚くし、しっかりした身体づくりをして、いつもチーム全体がベストの状態で、高いレベルで戦いたいと思います。スクラム、ラインアウトの精度を上げることも必要だと感じました」

○川嵜拓生キャプテン
「ベスト4とやれる良い機会でチャレンジしようとゲームに臨みました。やはり、実力の差を見せられ、前半で勝負が決まってしまったのは残念です。後半は戦えたので、是非この経験を生かして、秋までに実力をつけてトヨタさんと当たりたいと思います。気持ちの面でトヨタさんから見習うことがありました。トヨタさんのFWのブレイクダウンの激しさはやはり想像していたとおり強かったです」

九州電力 14-64 トヨタ自動車 九州電力 14-64 トヨタ自動車 九州電力 14-64 トヨタ自動車 九州電力 14-64 トヨタ自動車
 

朽木監督(右)、麻田主将
朽木監督(右)、麻田主将

 

◎トヨタ自動車ヴェルブリッツ
○朽木英次監督
「昨年のこの時に、早稲田さんに敗れて、それをモチベーションにして1年やってきましたので、正直、嬉しく思います。今日、サントリー戦、東芝戦と240分、死力を尽くそうとグラウンドに出ました。前半、相手のブレイクダウンがトップリーグと比べて弱かった感触が後半の緩みにつながったと思います。アタックではボール継続がテーマで、順目の攻撃を速く、プレッシャーをかけようという2点でしたが良くできたと思います。メンバーを代えてやや押し込まれるケースもあったが、日本選手権のこの試合のためにやってきたことは出せたのではと思います。後半、リズムが悪くなったときには、麻田、廣瀬、難波のコミュニケーションをとって、チームの意思を統一する力が大きいので、廣瀬が100%で行けるようなら次は廣瀬を使います。
(辞意を表明されたが?)監督を引き受けたときに3年で強いチームを作るというプランがあり、昨年で一区切りと、もともと思っていました。それが、早稲田に敗れて、トップ4のチームが学生に敗れるのはあってはならないことだと思い、責任を果たす意味でももう一年続けることにしました。あってはならないと東芝の薫田にも言われてしまう(笑)。東芝が早稲田に負けたのがそれまでで最後だったので、薫田はいつも喜んでくれる(笑)。反則について、チームの中でしないようにという声が出てきて、意識が上がってきました」

○麻田一平主将
「九電に対してチャレンジ精神をもって試合に臨もうといってきました。前半はFWがブレイクダウンなどで圧倒してくれて、早い球出しができました。後半は受けてしまい、あまり良くない結果となってしまいました。チャレンジせずして、次の試合もその次も勝てません。しっかりチャレンジ精神で相手にぶつかりたいと思います。
(監督の勇退は?)あまり、その話は選手の間ではしません。まあ、監督だけでなく、チームは1年間で終わるわけですから、集大成としてこの3戦にかけるという意気込みで臨んでいます。トップリーグの試合ではサントリーさんのセットの強さ、ディフェンスのプレッシャーを受けてトヨタのアタックができませんでしたので、攻撃のときにユニットで練習してきたバックスの力を出して前進できれば、接点で圧倒できると思います」