昨夜来の雨も上がり、試合開始頃には青空ものぞく天候となった。グラウンドは湿ってはいるが、プレーにはそれほど影響がなさそうな状態。
トーナメント独特の張り詰めた雰囲気の中、風下 慶應義塾大学のキックオフで試合は開始された。慶應義塾大学はいきなり逆サイドに蹴るが、東海大学は落ち着いて対応した。3分の慶應義塾大学はラインアウトから右へ回し逆サイドの11番 出雲が参加し、あっさりトライ。ゴール成功で0対7。19分、慶應義塾大学ゴール前のモールから右隅へトライ。ゴール成功して7対7。その後、一進一退が続いたが、43分東海大学ゴール前でフェイズを重ね6番 山崎がトライ。ゴール成功して7対14。前半終了。東海大学ラインアウトがやや不安定。対して慶應義塾大学はのびのびとプレーし、バックスの攻撃も評判通り、キレのある動きだった。

後半10分、慶應義塾大学フォワードがラッシュし、3番 廣畑がトライ、ゴール成功で東海大学7対21慶應義塾大学。さらに14分、慶應義塾大学21番 浜本がトライ。ゴール成功。7対28。流れは完全に慶應義塾大学となった。28分東海大学は自陣から回しバックス、フォワードがつないで最後は、7番 荒木が中央にトライ。ゴール成功。14対28。その後、東海大学は慶應義塾大学ゴール前に迫り、再三モールで攻撃するが、慶應義塾大学の守りを崩せずノーサイド。14対28。東海大学は普段の力が出せず、80分間が過ぎてしまった印象。慶應義塾大学はラインアウトのマイボールを確実に保持し、タックルもすばらしかった。久々にタイガー軍団の魂を見せつけた。慶應義塾大学は、6年振りの国立(準決勝)進出。明治との好ゲームを期待したい。(新井章久)

東海大学 14-28 慶應義塾大学   東海大学 14-28 慶應義塾大学   東海大学 14-28 慶應義塾大学
東海大学 14-28 慶應義塾大学(12月23日、2回戦 at秩父宮ラグビー場)

東海大学の木村監督(右)と、森脇バイスキャプテン 東海大学の木村監督(右)と、森脇バイスキャプテン

◎東海大学
○木村季由監督
「今日はどうもありがとうございました。自分たちのやりたいことを明確にして臨みましたが、慶應さんのすばらしいタックルと自分たちの形をしっかり出し切ろうというプレーの前に、我々が思い描いていたプレーができずに敗れた試合でした」

――特に今日のためのゲームプランは。
「今までどおりのゲームプランで、速くディフェンスを揃えて出て行くこと、攻撃では状況の中でどのプレーが有効か見極めることを目指しましたが、ミスからリズムが崩れました。特に今日のために何かをしようということはありませんでしたが、慶應さんのバックスの決定力も、タックルは間違いなく低く突き刺さってくることも分かっていましたので、入られてはいけないと準備はしてきました。FW勝負ということでなく、バランスよく、基本的にFWで崩してゲインしていくプランでした」

○森脇秀幸バイスキャプテン
「えー‥‥。今日の試合では慶應さんの低いタックルに対して、自分たちもずっとやって来た低いタックルをやり続けると決めていました。ちょっとしたミスからタックルが高くなって、小さなミスを修正できなくなって、持ち味のタックルを出せなくなって慶應さんの良いようにやられた試合です」

――前半はかなりターンオーバーし、意図したゲームだったようだが。
「前半はいつも相手も元気で、思い通りに行かないのがほとんどとコーチ陣から言われています。前半、風上で陣地を取るのがある程度うまくいったのですが、後半、相手が風をうまく利用して内側にプレッシャーをかけて来て、セットピースで安定せず、悪循環になり、ディフェンスも受けに回ったのが敗因だと思います」

東海大学 14-28 慶應義塾大学   東海大学 14-28 慶應義塾大学

慶應義塾大学の林監督(右)と、中浜バイスキャプテン 慶應義塾大学の林監督(右)と、中浜バイスキャプテン

◎慶應義塾大学
○林雅人監督
「リーグ戦覇者の東海大学さんに挑戦するということで、とにかく『入り』のプレーを前後半ともやろうと臨んだのですが、非常に良い入り方を学生がしてくれました。ディフェンスも、とにかく低くタックルにいこう、それで負けても良いね、と学生には言ってきました。アタックでは、とにかく前へ出る、外に振るのは止めようと言ってきましたが、終始、点差も良い状態で試合を進めることができました。最後の20分くらい、ずっとディフェンスしていましたが、あそこで守りきれたのは学生たちにとって大きな自信になったと思います。久しぶりに勝って正月を迎えられるのは非常に嬉しく思います」

――外に振らないのは持ち味を封印したことになるのでは。
「選手が壁の中に突っ込んでいく状態にあったので、センター陣で仕掛けていけば必然的に外へは回ると考えていました。選手はガチガチに硬くなっていて、もっとリラックスしろと言っても無理だが、大舞台を経験して、すこしできるようになったと思います」
――(準決勝の)明治戦に向けて。
「まず、試合に向けての気持ち、自信が違います。前回はウォーミングアップから圧倒されて、いきなり3トライ取られてどうしようもなかったですが、今は『入り』が良くなり、ディフェンスが低くなったし、バックスも守れるようになったと思います」

○中浜聡志バイスキャプテン
「金井主将が怪我で出られず、僕らの精神的支柱の金井を国立に出させたいと言い続けて、チームが一つになれたのが勝因だと思います。一人目のアタックで倒れてはいけないと監督から言われていたのですが、予想以上に東海大さんの絡みが強く、苦戦しました。サポートを速く外に展開すれば相手のほうが体が大きい分、走れないと監督に言われた通りでした(笑)」

――山田君は突破できなかったが。
「大阪体育大学戦もそうでしたが、山田に集中するのは読まれているし、出雲も増田も良いアタックをしますので、どの選手も活躍できるサインに変えています。それでチーム力が落ちるということはありません」
――明治戦に向けて。
「11月3日(明治大学との対戦=29対29)のときは、僕自身もタックルが高くて、大きいFW、BKにゲインされることが多かったのですが、意識して、皆、タックルは練習でもすごく低く入れるようになったので、次の試合はもっとできると思います」