●2月29日(金)

九州での合宿二日目、いよいよ本日はジョン・カーワン(JK)、グラント・ドゥーリー両日本代表スタッフと薫田コーチングディレクターを中心としたATQスタッフによるアカデミーセッションの日です。昨晩、長時間にわたりインプットした事前情報を、実際にグラウンドで実践することになります。

まずは薫田コーチングディレクターより昨日ミーティングで説明されたジャパン・スタイル・ラグビーの四つのポイントが再確認された後、JKの大きな掛け声と共に、日本代表スタッフを中心とした午前中のディフェンスセッションが開始されました。ウォーミングアップの後、まずは四つのステーションに別れ、ディフェンスの個別スキルについてのドリルがローテーションで行われてゆきます。薫田コーチングディレクター、山本選手発掘統括マネージャーも加わり、

  1. タックルのコンタクトスキル
  2. ラインスピード
  3. ダブルタックル
  4. 1対1のアタックディフェンス

を数分単位でローテーションしながら実施してゆきます。これにより、選手たちは「ディフェンス」という技術をパート、パートに分けてポイントを理解してゆくことができ、この後のユニットでのセッションの下地ができてゆきます。JKコーチからは、時折厳しい激がとび、疲労と共にクオリティーが落ち気味な傾向をその都度修正してゆきます。ユニットでのアタックディフェンスでも、常に昨日レクチャーされたポイントの意識が強調され、次第に両チームの選手たちにも浸透してゆくのが目に見えて感じ取れます。後半にはかなりコンタクトの激しさも増し、白熱した練習が行われました。

最後には円陣が組まれ、グラント、JKから、「今日一番うれしかったのは、練習の中で進歩が見られたこと。とても良いセッションだった」という言葉が語られ、選手たちの目の輝きも増します。セッション終了後には、両コーチから、九州、関東の両チームコーチングスタッフに対してもポイントの説明が行われ、充実した午前中のセッションが終了しました。

午後は、薫田コーチングディレクター中心に、フェーズオプションを中心としたアタックセッションが行われました。まずはホワイトボードを使い、ATQアカデミーで昨年から行われているフェーズオプションについての考え方が説明され、これから行われるセッションのポイントの理解を深めます。

ウォーミングアップを経て、少人数のユニットでのアタックディフェンスから、最後にはグラウンドを大きく使い、徹底的にフェーズ攻撃での動きや、ディシジョンメーキングのトレーニングが行われてゆきます。途中、JKのセッションでも強調された、プレー中の原則、「見て、判断して、アクションする」ということも意識付けされ、様々な状況下で、どうアッタクオプションを選択し、動いて行くか、ということが叩き込まれてゆきました。また、ATQアカデミーではお馴染みになっている、途中途中でセッションを止め、チーム単位でプレーヤー同士で話し合い、修正し、精度を高めてゆくということも行われ、チームビルディングの要素も加えられてゆきます。

後半には、自然と白熱し、試合前の練習とは思えないほど激しいコンタクトがバチバチと繰り返され、見ている両チームスタッフも、少々ひやひやしたのではないでしょうか?

今回、一日だけではあったものの、こうした機会が三地域の代表選手に提供されたことは、非常に有意義なものであったと思われます。今後、関西、関東でも同様のセッションが行われ、ジャパン・スタイル・ラグビーの浸透が図られてゆきます。明日以降は、3月2日のゲームに向け、両チームそれぞれの活動に移り、いよいよゲームモードに入ってゆきます。皆様に於かれましても、3月2日の試合にはぜひ宮崎県総合運動公園に足を運んでいただき、今回このセッションを受けた選手たちがどのようなプレーをするか、ぜひ見に来ていただければと思います。

最後になりましたが、今回の合宿において多大なるご尽力をいただきました、九州協会、宮崎県協会の関係者の皆様並びに、宿舎である青島水光苑、ファシリティを提供していただきました宮崎県総合運動公園の皆様に、あつく御礼申し上げます。

JKからの熱い指導が行われる   グラントからもより実践的な説明が行われる
JKからの熱い指導が行われる グラントからもより実践的な説明が行われる

薫田コーチングディレクターもディフェンスラインスピードのセッションを担当   個別スキルからユニットでのアタックディフェンスに
薫田コーチングディレクターもディフェンスラインスピードのセッションを担当 個別スキルからユニットでのアタックディフェンスに

円陣が組まれ、選手たちにメッセージが送られる   両チームのコーチ陣にもポイントが説明された
円陣が組まれ、選手たちにメッセージが送られる 両チームのコーチ陣にもポイントが説明された

フェーズオプションの考え方を頭に叩き込む   セッションの合間も詳細な説明が何度も行われる
フェーズオプションの考え方を頭に叩き込む セッションの合間も詳細な説明が何度も行われる

フェーズでの動きの確認が繰り返される   プレーヤー同士で問題点を修正してゆくのもATQスタイル
フェーズでの動きの確認が繰り返される プレーヤー同士で問題点を修正してゆくのもATQスタイル

●2月28日(木)

さきにお知らせの通り、本年度からの三地域対抗試合は、ATQスコッドのセレクションの一環と位置づけられると同時に、若手中心に選抜されたメンバーに対し、それぞれの試合の直前に、ATQスタッフを中心として、強化セッションを行うこととしました。その第一回目である九州代表対関西代表の合同合宿についてリポートいたします。

28日、両チームのメンバーは宿舎である青島水光苑に集合しました。集合後、両チームが一箇所のミーティングルームに集まり、今回の合宿の位置付け、明日からの心構えについてのミーティングを行いました。

まずはじめに、日本協会・上野競技力向上委員長より挨拶があり、その後、薫田ATQコーチングディレクターより、ATQの内容及び、今回の合宿及び試合の位置付けについて説明が行われました。その中で薫田コーチングディレクターより、「君たちは日本代表へ繋がる強化ストラクチャーに乗っている選手たちである。そのことをしっかりと認識し自覚を持ってこの3日間を過ごしてほしい」と説明がなされました。そして、これから説明される「ジャパン・スタイル・ラグビー」を実践することが日本代表に選出されることにつながり、ここに来ている選手は、それができる者たちだと信じていると語られました。

その後、今回特別に合宿に帯同したジョン・カーワン日本代表ヘッドコーチより、今後ATQ活動を中心に、日本のラグビー強化のすべてのエリア、活動において共有されるべきジャパン・スタイル・ラグビーのポリシーやフィロソフィーについて説明が行われました。

カーワンヘッドコーチが熱く語りかける   選手たちも張りつめた雰囲気に
カーワンヘッドコーチが熱く語りかける 選手たちも張りつめた雰囲気に

「Bu-shi-do(武士道)」、「世界で最も早いディフェンス・ゲーム展開」、「低くて早いラック」「キッキングゲーム」など、昨年からジャパンが目指し実践して来ているスタイルについて、いつもながらの迫力満点の身振り手振りを交え、熱く選手達に語りかけました。途中何度も選手たちに意見や考えを質問し、理解を深めてゆきます。カーワン氏の迫ってくるような迫力を目の当たりにして、選手たちもぴりぴりとした雰囲気に包まれましたが、非常に貴重な経験になったと思われます。

その後、グラント・ドゥーリー日本代表アシスタントコーチより、明日の午前中のセッションで行われるディフェンスセッションに向け、日本代表のディフェンスストラクチャー、ベーシックコンセプトについて、これまた身振り手振りを交え迫力満点に説明がなされました。途中何人かの選手を前に呼び、実演を交えながら重要な点を何度も確認しました。

最後には、カーワン氏から、「最も大切なものはハートである。これは誰にも教えられない。もし日本代表として体を張ったプレーをすることができないと思うのであれば、今すぐ家に帰ってほしい」とメッセージが伝えられました。当初1時間以内で予定していたミーティングでしたが、集まった三地域の若い選手たちに対し語りかけるうち、カーワン氏の熱意も増し、結局1時間半程度の密度の濃いミーティングとなりました。

明日は、午前中は日本代表スタッフによる、ディフェンスを中心としたセッション、午後は薫田コーチングディレクターによりアタックを中心としたセッションを行います。

グラントアシスタントコーチがディフェンスについて説明   選手たちに実演させながら理解を深めさせてゆく
グラントアシスタントコーチがディフェンスについて説明 選手たちに実演させながら理解を深めさせてゆく