帝京大学 36-10 法政大学 帝京大学 36-10 法政大学 帝京大学 36-10 法政大学 帝京大学 36-10 法政大学
マッチリポート

帝京大学 36-10 法政大学

(準決勝/2009年1月2日 at東京・国立競技場)

第1試合はリーグ戦で優勝を飾りそのままの好調さで臨んだ東海大だったが、対抗戦2位ながらこの日の早稲田は素晴らしいディフェンスとその伝統の力で東海大の勢いをねじ伏せた。その余韻を残しつつ、同じく対抗戦初優勝の帝京とリーグ戦2位の法政の対戦になった第2試合は意外にも静かにゆっくりと始まった。

この試合"帝京vs法政"の一番の焦点は、帝京の重量FWに対し、いかに法政がセットプレーやブレイクダウンで力負けせずBKに生きたボールを供給するかがポイントだった。帝京からすると、FWで優位に運び縦に強いBKで仕留めるのが狙いであろう。試合後共同記者会見で法政・有田主将が語ったように「帝京がFWで来ることはわかっていた。法政としては速い展開に持ち込みたかったが、それをさせてもらえなかった」それくらい帝京のFWがスクラム・ラインアウト・ブレイクダウンのすべてに勝っていた。速い展開を望んでいた法政にとって、この遅いリズムは帝京の戦術そのものだった。

帝京は法政をよく研究しているようで、HB団への警戒を怠らなかった。スクラムからのサイド攻撃には、No.8が必ずSO文字を目掛けて突進していた。法政HB団へのプレッシャーは、この試合の鍵を握る戦略である。電光掲示板からバックスタンド方向に斜めに強風が吹く中、前半風下の帝京が徐々にペースを掴んでいく。
それでも試合開始10分にSO文字のPKで法政が先制するも、そのあと数分間は自陣ゴール前に釘付けになり耐えたが、19分帝京FWの中で今シーズン一番の成長株、No.8野口にゴールを割られ帝京が初トライをあげる。前半はその後25分にWTB野田が相手を引きずりながらのトライ、35分にはSO徳永が中央突破を果たしトライ、BKが効率良くトライを重ね帝京の19-3で折り返す。

後半に入っても帝京の勢いは衰えず、41分にWTB野田が左タッチライン際を見事なスワーブで走りきりトライ、50分にもラインアウトから左に展開しCTB井本ゲームキャプテンが法政ゴール5Mまで迫り、最後はまたしてもWTB野田が巧みなステップでこの日3つ目となるトライを奪った。ゴールも成功して、31-3とした。
法政が "らしさ"を見せ始めたのは残り20分を切ってからで、BKが本来の動きを取り戻し右に左に展開し、68分途中出場のFL荻山がこの日唯一のトライを記録した。ラインアウトが半数ほどしか取れないためPKを得てもタッチに出せず、タップキックでBKに回していくにつれリズムが出てきたのであろう。また1年生FBの竹下も、再三自慢の快走でゲインラインを突破した。それでも時既に遅しで、ロスタイムには帝京がターンオーバーからWTB鎌田の右隅へのトライで締めくくった。最終結果は36-10と予想以上に大差のついたゲームとなった。

岩出監督は、「新しいトンネルを抜けた。最後の壁にチャレンジすることになる。壁の向こうに何があるのかは、まだわからない」と創部39年目の初の決勝進出をそう表現した。井本ゲームキャプテンも、「集中してラグビーが楽しめた。決勝は自分たちのラグビーの進化を見せるだけ」と自信をのぞかせた。対抗戦で苦杯をなめさせられた大学選手権連覇のかかる早稲田か、大学ラグビーに新しい歴史を刻み込むことになる帝京か、10日の決勝は対抗戦同士の興味深い再戦となった。

 

法政大学の駒井監督(左)と、有田キャプテン
法政大学の駒井監督(左)と、有田キャプテン

法政大学

○駒井孝行監督
「帝京さんはセットピースやスクラムをやってくると想定していました。ブレイクダウンの激しさも想定どおりでした。前半、風上でエリアを取ろうと思いましたがセットピースで良いボールが出せませんでした。帝京さんのほうがプレッシャーをうまくかけられていたと思います。後半、テンポアップしようとしましたが、なかなかうまくいかず、帝京さんのペースの試合となってしまいました」

──文字君の状態は?
「対立命戦の1、2分で足首を怪我しました。現在も70~80%くらいでしょう。メンタルが強い子なのですが、今日は足を引きずっていました。影響がないといえばないし、あるといえばありました」

○有田将太キャプテン
「FW戦になると分かっていて、うちも準備してきましたが、前半から向こうのペースになりました。素直に悔しいです。後輩たちにはこの悔しさを来年につなげてほしいと思います。春からやってきたのに、最初のヒットで食い込まれました。セットピースやスクラムで優位に立てませんでした。法政はFWで攻撃してBKに行かせる展開ラグビーを目指してやってきましたが、最初の部分でやられるとBKのプレーができません。圧力は予想の範囲内でしたが、受けてしまったと思います」

帝京大学 36-10 法政大学 帝京大学 36-10 法政大学 帝京大学 36-10 法政大学
 

帝京大学の岩出監督(右)と、井本ゲームキャプテン
帝京大学の岩出監督(右)と、井本ゲームキャプテン

帝京大学

○岩出雅之監督
「帝京として、新しいトンネルをもう一つ通り抜けることができたかと思います。今までのチームになかった歴史を作ることができました。我々の強みであるFWとディフェンスと相手のアタックに対してしっかり反応して良いボールを出させない、できるだけペナルティをしない試合をしようと臨みました。おかげさまで後半、1本獲られたものの、より高い集中力で進化の歴史を刻むことができました。もう一つ、経験のない壁を破っていきたいと思います」

──ゲームプランは?
「いつもどおりでした。対抗戦グループの経験値があり、他のリーグ戦との違いが出ています。接点のディフェンスの厳しさを知っているので、余分な反則につながる動きを起こさないで済んでいます。スクラムもFWの前3人が集中してしっかりまとまれば安定して組めると思っていました」

──帝京は隙がなくなってきたが、どうしてか?
「よく食べてよく寝ることです(笑)。うまくピーキングを秋とここに持ってくることができています。学生に、良い意味で力を入れさせる部分と力ませない部分があったほうが良いと思います。特に1年生にとって対抗戦は長いので、集中力を欠いてケガをさせないようなコンディションづくりを実行しています。多くのスタッフがアプローチしてくれています」

──決勝戦に向けて?
「早稲田さんは対抗戦でのうちとの試合後、チームの変化を意図されているように感じています。学生にも、最後は早稲田に勝つと言ってきました。第1試合はほとんど見ていませんが、点数から想像するに、しっかりディフェンスからの攻撃ができている良い状態なのではと思います。厳しさをもって臨まれていると感じます。最後のゲームはどちらにせよ、ディフェンスの良い引き締まったゲームになるでしょう。スタートのところが特に大事になると思います」

○井本克典ゲームキャプテン
「自分たちのディフェンスからしつこく、我慢するラグビーができました。今日は集中して、没頭して、時間を忘れるくらい楽しめました。決勝の早稲田戦は、これから修正点を見つけてよりしっかりプレイできるよう準備していきたいと思います」

──決勝に向けて?
「相手が早稲田というよりも、いかに自分たちのラグビーをやりきるか、これからの時間をそこに費やしていきたいです。自分たちは国立で早稲田に勝ったことがないので、しっかりチャレンジャーとして臨んでいきたいと思います」