サントリーサンゴリアス 16-24 三洋電機ワイルドナイツ サントリーサンゴリアス 16-24 三洋電機ワイルドナイツ サントリーサンゴリアス 16-24 三洋電機ワイルドナイツ
マッチリポート

サントリーサンゴリアス 16-24 三洋電機ワイルドナイツ

(決勝/2009年2月28日 at東京・秩父宮ラグビー場)「ニホンラグビーのイチバンへ」と輝いたのは、三洋電機ワイルドナイツだった。三洋は後半の3トライで逆転、昨シーズンと同じくサントリーサンゴリアスを破り、大会2連覇。今シーズン三洋にとっては、トップリーグ開幕戦、同プレーオフトーナメント準決勝に続く、3度目のサントリー戦勝利となった。

前半は風上のサントリーが地域、ボール支配ともに上回り、三洋FWのPKを誘ってはCTBニコラスの確実な3PG。前半終盤には三洋に攻め込まれたが、三洋の先発SO入江の1PGのみに抑えて試合をリードした。後半も開始早々からサントリーが三洋ゴールに迫るが、結果的にはそこまでの攻勢でトライを取れなかったことがサントリーには痛かった。

三洋は、サントリーがPGを失敗した直後の後半14分、LO川口とSOブラウンを投入、一転して反撃に出た。19分にはCTB霜村が巧みにディフェンスの裏へ出て、途中出場のFB吉田へと繋ぎ両チーム通じ初のトライ。さらに25分、ラックでターンオーバーしたボールをブラウンが拾って川口へパス。川口が大きくゲインした後、WTB北川がトライしてサントリーを突き離す。その後も北川2つ目のトライでダメを押した。

サントリーは曽我部の多彩なキックやニコラスのブレイクから何度かトライチャンスを掴むが、終了間際のWTB北條による1トライに終わった。両チームSOが最後尾に位置してのキックラリーは、ELVs(試験的実施ルール)の影響で今シーズンお馴染みとなった光景。SO野村が大会2回戦で早稲田を混乱させることに成功した、スクリューのかかったハイパントをこの日の曽我部も試みるが、三洋のブラウンには確実にキャッチされ蹴り返された。曽我部は前後半通じて3度試みたDGも失敗に終わり、チームを再びリードに導くことができないままに後半30分、野村との入替で無念の退場となった。

ELVsへの不安と期待でスタートした今シーズン。途中、チームを支える企業環境の悪化や、幾つかの残念な出来事に遭いながらも、ファンのサポートや関係者の協力でこの日国内レギュラーシーズンを終了。春の代表チームの活動まではしばしのオフ。秩父宮はロッカールーム等付帯設備の改修工事に入り、いよいよ6月のIRBジュニアワールドチャンピオンシップ開催への準備が本格化していく。(米田)

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会見リポート
 

サントリーサンゴリアスの清宮監督(右)と、山下キャプテン
サントリーサンゴリアスの清宮監督(右)と、山下キャプテン

◎サントリーサンゴリアス
○清宮克幸監督
「非常に悔しいですね。想定内のゲームの流れになっていたにもかかわらず、サントリーのいくつかのミスをきっちり得点されたのが、大いに悔しい原因ですし、敗因です。サントリーの選手は力を出し切ってくれました。胸を張れると思いますが、悔やまれるのは、もう少し攻めたかったのですが」

──ドロップゴールを狙い続けたが、ハーフタイムの指示は?
「オプションとして準備していたし、練習もしていました。やはり勝って折り返して、後半はスコアできず、ハーフタイムでは、もっと積極的に行こうと意思統一したつもりだったんですが…」

──どうして押していて得点できないのか?
「難しいですね。僕も監督3年目になるんですが、サントリーのFWが最後のあの壁をずっと突破できないのは、ずっと課題ではあるんですよね。そういう意味でペネトレーターを使う試みもしましたが、もう少しこだわる部分がね。テクニックとか、そういうことでなく、相手よりほんの0.5秒早く出るとか、執念みたいなところをもう少し身に付けなくては。前半、何度かのチャンスに得点できなかったのが敗因です。三洋さんにあってサントリーにないものが見えたので、サントリーにしかないものをもう一度作り直したいですね」

──ゲームの分岐点は?
「前半は攻めるよりゲームをコントロールし、後半攻めるという意図を持っていました。タラレバになりますが、ライアンが投げたボールがトライになっていたら、展開は変わっていたでしょう」

──先週、試合が無くてきついコンタクトが無かったが、不利だったか?
「それはまったく無いですね。1週間試合が空くとか、最後の相手が学生だとかいうのもないですね。FWのフィットネス不足が後半のブレイクダウンの劣勢にはたしかに影響したとは思いますが」

──ジョージ・グレーガンを起用しなかったが?
「今シーズンもFWは大久保、佐々木が軸となってくれて、シーズン当初は日本人だけでFWはいいかとか思っていました。BKで外国人を3人使える感覚でいましたが、今日のFWのリザーブが3人というのは、戦術もあるが、僕の中にファイナルのレベルがあって、それに合致したのがあの3人だと判断したためです」

──大会のやり方に何か?
「今日のゲームがシーズン最後の試合で、真の日本一が決まると皆さんおっしゃるが、そうなったときに、各チームの資源が使えていないといけないと思います。外国人を6人、7人抱えるチームもある中、2人しか使えないというのはまったくもってナンセンスです。ぜひ、来年度はルール改正を望みます。もちろん、2人と決まったからには2人で絵を描いてきたので、まったく今日の試合の勝負とは関連ありませんが、ジョージの出場機会がなくなってしまったのもそのためです」

○山下大悟キャプテン
「今日はどうもありがとうございました。監督がおっしゃったとおりですが、ちょっと硬かったかな。もう少し攻めればよかったと思います」

──トニー・ブラウンが途中出場して変わったか?
「そうですね。積極的にはなったと思いますけれど、彼が入ってやはり執念深かったですね」

──前半はターンオーバーでのボール獲得が多かったが?
「まあ、行けてるからターンオーバーが多くてという単純なものじゃないと思います。後半は、三洋さんの外国人選手の長い手が遠くから絡んでくるので、ツイストのところがまだまだだったなと」

──トニーの執念深さとは?
「全部です。いつもどおりです(苦笑)」

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三洋電機ワイルドナイツの飯島監督(右)と、榎本キャプテン
三洋電機ワイルドナイツの飯島監督(右)と、榎本キャプテン

◎三洋電機ワイルドナイツ
○飯島均監督
「まず、本当に今日はありがとうございます。日本選手権決勝で、サントリーさんの曽我部くんの素晴らしいロングキックは想定どおりでしたが、最後まで自分たちを信じていました。選手たちを誇りに思います。サントリーさんも怪我人が多い中、素晴らしいチームだったと思います。三洋もトニーの怪我などがあったシーズンでしたが、今日は我慢していれば勝てると思っていました」

──トニーの後半の投入が奏功した?
「まあ、トニーだけでなく、堀江も吉田もすべてのリザーブがよくやってくれたと思います。足がつったりしていましたが、スクラムも押しているうちに少しずつブレなくなって、ワイドに振っていこうと。攻められても、我慢していれば攻撃できると私たちは考えていました。フィットネスは昨年度より凄い数値ですので、信じていました。トニーは早めにリードすれば、もっと遅くに替えたかったのですが」

──前半、PG狙いだったが?
「トライを獲って勝つのがベストですが、試合の性質から言うと1点差でも勝てればよいと考えていました。見ている人にとってはあまり面白くないかもしれませんが」

──東芝が不出場の影響は?
「影響はありません。ルールの中でやってきたことです。東芝さんとの戦いでは、リーグ戦、マイクロソフトカップ決勝と続けて負けましたが、この借りは来年の開幕戦で晴らすと割り切っていました。勝つと嬉しいですね。私の人生、今まであまり勝つことが無かったのですが(笑)」

──前回の監督時代と比べて?
「前回の失敗は30歳から34歳の4年間で、非常に熱があって、カッとしたことをすぐ怒っていたんですね。私も歳をとって、言うタイミングとかが変わってきたと思います」

○榎本淳平キャプテン
「まず、すごく嬉しいです。それは、去年の初優勝と違う嬉しさです。今シーズンのほうが何倍も嬉しいです。僕自身も怪我で、シーズン後半は苦しい時期もあったけれど、45人全員で勝ち取った優勝だと思います。ものすごく嬉しく思っています」

──どんな作戦で?
「サントリーさんは3点でも小刻みに取ってくる、キックも曽我部、ニコラス選手と想定どおりでした。サントリーさんは1次、2次でしっかり止めれば、インをブレイクされることは無いというスカウトが出ていました。そのキックにプレッシャーをかけよう、3点を刻まれてもしっかり我慢しようと言っていました。恐らく、攻め手がなくなってきたのだと思います。こちらは全部ブレイクダウンに入ってすぐに開くということをやっていました」

──試合の入り、展開は?
「うちはキッキングゲームが苦手で後手になったが、キックだけしていては試合を作れないので、多少強引でも突っ込んで、細かいところでリズムを作ろうとしました。レフリングにも細かい修正で対応できました。ノーパニックも確認できていました」

──気持ちが切れなかったのは?
「仲間を信頼していますし、後半、サントリーさんの足が止まるのも予想がついていました。前半、キックゲームで近場を攻めたが、後半はワイドに振ろうと、入江、霜村と話していました」

──去年より何倍も嬉しいわけは?
「もちろん、初優勝も嬉しかったですが、嬉しさが違います。トニーの怪我、神戸製鋼の試合など苦しいところが多く、ベストコンディションで臨めたのは少なかったのですが45人でたすきをつないで、皆でゴールできたという昨シーズンとは違う喜びがあります」