マッチリポート
トーナメント表


明治大学 12-43 帝京大学

【準決勝/2010年1月2日(土) at 東京・国立競技場】

帝京FW、明治に快勝
対抗戦最後の早明戦で自信を取り戻し、大学選手権に入ると拓殖大、関西学院大をFW、BKのバランス良く連破してきた明治は、この準決勝の立ち上がりにもその好調さを見せた。開始3分、WTB小泉が鋭いステップで帝京のタックルをかわしてゲインするとFL西原が出足よくつなぎ、最後はLO鎌田が飛び込んで見事な先制トライ。明大はスクラム、ラインアウトにも安定感を見せ、前半途中まで帝京FWをなんとか抑え込んだ。

しかし、自力に優る帝京は8分、24分にFB船津のPGで得点を加えると、29分に力を爆発させる。激しい攻防から奪ったボールを左オープンに展開しWTB野田でラック、サポートしたBKがしっかりと相手DFをスイープし素早い球出し。ラックサイドの明治FWのタックルをLOボンドが一発で切り裂きトライ。(5-13)

今年の帝京の強さは、対抗戦最強FWの突破力とFB船津のロングキック。前半は決して無理をせずにDFに徹し、前で奪ったボールにはSH滑川、SO森田がハイパント。蹴り合いになれば22mを有効に使い、FB船津のロングキックでエリアを獲得していく。じっくりと相手ゴール前でのラインアウトのチャンスを待ち、その機会を逃さず強烈なモールのプッシュとLOボンド、FLツイのペネトレイトで仕留めていく。1回戦の関東学院、2回戦の早大をFWで崩しきった自信は、激しいコンタクトの場面での的確な状況判断にさらなる成長を感じさせた。前半36分、モールサイドを突破したFLツイのトライからは明治を圧倒し、連続4トライでゲームを支配、勝負を決めた。(5-43)

明治は終了間際の43分、後半36分から途中出場の1年生猿楽がタッチ際を快走、ビッグゲイン。ここから左オープンに見事な展開を見せ、最後はこの日の明治で一番の輝きを見せたWTB小泉がトライ。帝京の徹底したキックチェイスにも屈強なジャンピングキャッチで耐え、スペースの無い密集でもタックルに倒れず走り返す気持ちの強さは、最後まで折れない明治の誇りを思い出させた。(12-43)

帝京は強力FWで確実にゲームを支配し、危なげなく決勝進出を決めた。この選手権での帝京の安定感を支えるものとしてタックルの強さ、一人ひとりがDFで守るスペースの広さ、堅さも上げておきたい。もちろん1対1でのコンタクトに勝つ自信がベースにあるとしても、まず前に出てしっかり外に追い込んでいく執拗な動きが、相手にボディブローのように重圧をかけ続けていく。この15人の徹底したプレーが、ターンオーバーから速攻を繰り出す新たな帝京ラグビーの持ち味を築きつつあるように思えた。(照沼 康彦)

明治大学 12-43 帝京大学 明治大学 12-43 帝京大学 明治大学 12-43 帝京大学
会見リポート
 

明治大学の吉田監督(左)と西原キャプテン
明治大学の吉田監督(左)と西原キャプテン

明治大学

○吉田義人監督
「とにかく一年間、4月から王座奪回という高い目標を掲げて、気を入れてやって来ました。12年間、日本一から遠ざかっていますが、選手は今日のゲームは敗戦したら終わりという中で魂を込めて、一人一人自分を信じて、自らのプレーをしっかり出し切ってくれたと思います」

──シーズン前、思い描いたラグビーと比べて?
「西原キャプテンを代表に、目標とするシャープな動きの選手が多くなってきた印象をもっています。特に早稲田戦のトライとボールを動かしての今日の二つのトライ、関西チャンピオンの関西学院さんとの試合で一人一人が勝負してディフェンスを切り裂いたり、ギャップを突いていくことができるようになったと考えています。私自身にも大きなチャレンジでしたが、選手がよく成長してくれました」

──敗因は?
「帝京さんのラグビーが非常に高いレベルだったということです」

○西原忠佑キャプテン
「完全な力負けとしっかり皆分かっていますが、自分たちの力を出せたので、後悔はありません。とにかく、自分たちができることを100%出そうと、80分気持ちを統一しました。このことから、下の学年が何かを感じてくれて、やってくれれば、どんどん上に行けると思います。自分としては、楽しめた試合でした」

──下の学年は何を感じたのか?
「僕は、まず、最上級生がしっかりやることが大事だと考えています。下の学年がそれを見て感じてくれることですので…」

──対抗戦と比べて?
「正直、僕は怪我で出ていないので…。点差を考えれば、縮まっているので、明治も伸びていると思います。スクラムは良くなかったですが、ラインアウトの獲得率は高く、成長できたと思います。自分たちの力を100%出せた試合でした。両チームとも、伸びている中で、このスコアは良かったと思います」

明治大学 12-43 帝京大学 明治大学 12-43 帝京大学
 

帝京大学の岩出監督(右)と野口キャプテン
帝京大学の岩出監督(右)と野口キャプテン

帝京大学

○岩出雅之監督
「決勝戦に向けて、我々がこの壁をどう乗り越えるか、ここまでの厳しい2戦の中で得たものをこのゲームで出そうと学生に言って臨みました。明治戦は対抗戦ではこちらが優位でしたが、ゲインラインが良くなってきて、いかに3列を止めスタンドの動きを止め、有利なボールを出させないかが課題でした。早くにトライされたことで、目が覚めて、激しいプレーをすることができましたが、ハーフタイムに学生に修正を求めました。厳しいところもありましたが、決勝戦に向けて気持ちを引き締めて、対抗戦の代表としてリーグ戦王者にチャレンジしたいと思います」

──立ち上がり30分はあまり差がつかなかったが?
「実は、2回戦の前にミーティングで、相手を自分たちの上にも下にも見ないで自分たちと同じに見ようと指導しました。目標とか、気持ちの高め方とか、挑戦者としてクロスゲームに臨むよう練習から気持ちを引き締めて来ました。もう一つ、ラッキーはどちらのチームにも起こるが、自分たちはそれを生かし、相手にはそれを生かさせないようにすることです。前半30分過ぎでやっと獲ったが、重圧をかけてボールを支配し、コントロールしていたので、しっかり反省できるプレーだったと思います」

──東海大学のイメージは?
「細かな分析はしていませんが、東海大学さんは大きなFWとモールが強い印象です。懐の深さか激しさか、我々の強みを引き出す糸口を見つけたいと思います。広くボールを動かすイメージがありますが、落ち着いて分析したいと思います。とにかく、結果的に対抗戦、リーグ戦が1チームずつ残ったので1年間の思いをこめてぶつかりたいと思います」

──不安は?
「正直、不安は一切ありません。学生もないです。セットピースで相互に押し合い、強みの部分を出し合う戦いになるでしょう。ウイングまでボールが動くのを止めさせたいですね」

○野口真寛キャプテン
「今日の試合、勝てたことを凄く嬉しく思っています。スコア以上に厳しいゲームでした。自分たちとしてミスが多く、反省点も多いです。明治さんに勢い良く獲られたが、ラインアウトで優位にゲームを進めることができました。ボールを動かす時にミスが出たのは反省点です。修正して決勝戦に臨みたいと思います」

──修正した具体的な点は?
「ゲームが始まってすぐのミスなので、切り替えて臨もうとしました。まだ、時間は長いと声をかけました」

──点差が離れて?
「味方もすぐにミスを忘れて、次、行こうと凄く良い表情でした。後は、気の緩みの怪我を避けようと声をかけました」