マッチリポート
トーナメント表


慶應義塾大学 14-19 東海大学

【準決勝/2010年1月2日(土) at 東京・国立競技場】

第46回全国大学ラグビーフットボール選手権準決勝第1試合は、昨年に続き決勝進出を目指す慶應大学と、初の決勝進出を狙う東海大学の間で行われた。
強力FWを擁する東海に対して、慶應が鋭いタックルによりいかに相手の出足をしのぎ、ボールを大きく動かすことができるかが、この試合の大きなポイントであった。

東海のキックオフで試合開始。東海は試合開始から慶應陣内でゲームを進め、大型FWによるサイド攻撃だけでなく、ボールを良く動かし、BKによる多彩な攻撃を仕掛けていた。これに対して慶應は、防戦一方ではあったが、持ち前の低く鋭いタックルを連発して東海の攻撃を封じ、なかなかゴールを割らせない。ラインアウトでは、東海FWに圧力をかけるとともに、ラックでの素早い集散により随所で東海ボールを奪っていた。

29分。東海は慶應ゴール前のラインアウトからモールを押し込み、5番 三上がトライ(ゴール成功)。0対7と先行する。さらに33分。またもや東海は、慶應BKのキックをカウンター攻撃し、14番 田村が抜け出す。素早いラックからの球出しにより15番 豊島がトライ(ゴール不成功)で0対12とする。慶應は防戦一方であったが、よく前に出て東海の攻撃を止めていたが、なかなか得意とするランニングラグビーをすることができず、前半はほとんど東海陣内でゲームを進めることができなかった。

後半に入り慶應は積極的にボールを動かし、素早い球出しから快速BKにボールを供給し、グラウンドを広く使ったラグビーを展開した。しかし、18分。東海は、慶應のスクラムからの連続攻撃を防ぎ、ラックでボールを奪い素早く切り返す。11番 宮田がタッチライン際を快走。自ら上げたパントをキャッチし、ゴールポスト下にトライ(ゴール成功)。0対19と差を広げる。

23分。慶應はFW・BKが一体となって東海陣で攻撃し、最後は4番 立石がトライ(ゴール成功)で7点を返す。さらに、31分。今度は東海ゴール前の5mのスクラムから8番 小澤がトライ(ゴール成功)で、14対19と追い上げる。その後、慶應は最後まで追い上げるが、東海も必死に防御し、そのままノーサイドとなる。

東海はFW・BKともによく走り、ブレイクダウンで慶應に勝っていた。防御でも全員が良く前に出て慶應の出足を止めていた。一方、慶應は、後半、ボールを良く動かしていた。スクラム、ラインアウトなどのセットプレイでも、終始、優位に立っていたが、東海の粘り強い防御により2年ぶりの決勝進出を阻まれた。勝った東海は初めての決勝進出となった。

慶應義塾大学 14-19 東海大学 慶應義塾大学 14-19 東海大学 慶應義塾大学 14-19 東海大学 慶應義塾大学 14-19 東海大学
会見リポート
 

慶応義塾大学の林監督(左)と松本キャプテン
慶応義塾大学の林監督(左)と松本キャプテン

慶應義塾大学

○林雅人監督
「今回はありがとうございました。リーグ戦で強く、また大きく重い東海大学相手に、小さく軽い自分たちがチャレンジャーとして臨んだ試合でした。前半40分間は東海大学さんのゲーム展開で、慶應はもっとボールを持って回していこうとしましたが、ブレイクダウンでのプレッシャーが予想以上にありました。
選手は1年間頑張ってくれました。勝つために低いラグビーと、プレッシャーをかけるラグビーをやろうと、持って生まれたものではなく、努力で取り組んできてくれましたが、志半ばで去るのは、正直残念です。選手は本当によくやってくれました」

○松本大輝キャプテン
「今、冷静に振り返ると、前半、慶應のラグビーができなかったと感じます。日本一という夢を達成できず、残念ですが、来年、後輩たちがやってくれると信じています」

──うまくいかなかったのは?
○林監督
「見たところ、選手は固くなっていました。試合前はボールを持つと回してくれると思っていました。通常、順目で攻めていきますが、何回も前半は逆に回して、練習でやっていないことをしてしまったのは、重圧のせいだと思います。バックスのディフェンスで自分たちのやらないラグビーをしてしまいました」

──トスは風上を後半にしたのですか?
○林監督
「東海大学さんの試合は、後半、ピッチが落ちると分かっていましたので、勝機があると思い、後半風上をとりました」

──前半の2トライが響いたのですか?
○林監督
「後半のショートサイドを抜かれた1本が響きました。うちはトライを3つくらいが勝敗ラインで、さすがにあれだけ強い相手に獲られると厳しいです」

──キックを多く使っていましたが?
○林監督
「やはり固くなっていたと思います。法政大学戦では70メートルの距離から3つトライを獲ったのですが、今日は国立ということでボールを回す勇気がなかったのか、または、和田選手が脳振盪で前半最後の方は、よく分からなかったのかもしれません」

──ハーフタイムでの指示は?
○林監督
「前半は東海大学さんのゲームで、慶應としては、0対12と折り返せたのは完璧だった。後半、慶應は自分たちのゲームをしよう、ボールを持って攻める、必ず相手は失速するので、フィットネス勝負になる。後半は風も太陽も味方になる。と伝えました」

──和田選手と交替した高島選手は?
○林監督
「ボールを回すよう、散々言ったので、本来はもっとアグレッシブなアタッカーですが、ほとんどパスでした。その辺は経験として、来年、生かしてくれると信じています」

──二人目のサポートが遅れたように見えましたが、どうですか?
○松本キャプテン
「人がいなくて、ボールに絡まれているケースが多く、相手の人数が多くなってしまい、80分間、それを引きずってしまったと思います」

慶應義塾大学 14-19 東海大学 慶應義塾大学 14-19 東海大学 慶應義塾大学 14-19 東海大学
 

東海大学の木村監督(左)とマウ ゲームキャプテン
東海大学の木村監督(左)とマウ ゲームキャプテン

東海大学

○木村季由監督
「本日はありがとうございます。最後まで苦しい試合展開でした。前半セットプレーでは低い姿勢で慶應義塾さんをしのぐ、前へ出るディフェンスと二人目のサポートをテーマで臨みました。ブレイクダウンのところで、後半に回らないよう、80分間やり続けられたと思います。細かいミスもありましたが、準決勝では、大事なことは勝つことですので、選手たちは最後までよく頑張ってくれました」

○ジョシュア・ランギ・マウ ゲームキャプテン
「慶應義塾さんは、すごく強かったです。前半、ミスが多かったのですが、敵陣でプレーできたのが良かったと思います。後半は敵陣でのプレーができませんでしたが、よくみんな頑張ってくれたと思います」

──最後の場面はヒヤヒヤしましたか?
○木村監督
「こういう試合ばかりですので、慣れました。後半防戦一方で、見ているほうとしては、フラストレーションが溜まりましたが、ディフェンスでよく声を掛け合って破綻することなく、守れ、成長したと思います。私は練習でやっていることをゲームで出すことが大切と考えています。ポイントでいかにスローボールにするか、速いサポートに差し込まれずに出す、早くセットすること、特にディフェンスラインのセットが早くなったと感じました。
ただ、やはり、敵陣へ入るところで、バックスのミスが出ました。キックがうまくいっていることを生かせないと後半のようになるので、修正が必要です」

──慶應はトスで風下をあえてとってきましたが、いかがでしたか?
○木村監督
「敵陣22メートルに入ったところで立て続けにラインアウトでミスが出ました。慶應義塾さんのプレッシャーは強かったと思います。そこで一つ獲っていれば、もう少し自分たちの展開になったのですが。ラッキーな部分としっかりサポートした結果ですが、やはりツイているなというところです」

──決勝戦に向けて。
○木村監督
「ここまで一つの壁を突破し、チームとしてすごく大きな結果を出せました。当然この試合は多くの大学生はできない試合で、そのチャンスを掴み、最高のゲーム、最高の舞台で戦えるのですから、コンディションを整えて、さらに伸びる部分もあるので、1回1回の練習を大事に臨みたいと思います」

──後半の試合展開は?
○マウ ゲームキャプテン
「今回、(スコアが)近い試合が4試合もあったので、最後まで頑張ろうと言っていました」

──昨年は準決勝で負けましたが。
○マウ ゲームキャプテン
「去年は(国立が)初めてという緊張がありましたが、今年は、その緊張を乗り越えたと思います」