マッチリポート
トーナメント表


東海大学 13-14 帝京大学

【決勝/2010年1月10日(日) at 東京・国立競技場】

帝京大、好ゲームを制し、初の大学日本一
どちらが勝っても初優勝となる東海大対帝京大の決勝戦。両チームとも大学では大型FWを擁し、激しいブレイクダウンでボールを獲得し、FWの核となる2名の外国人選手がチャンスメーカーとなって得点につなげる、似たようなタイプのチームである。実力もほぼ同レベルとみられ、両チームの好ディフェンスでロースコアの接戦になると予想された。

前半4分に、帝京大が敵陣ゴール前のラインアウトから、FWが2次、3次攻撃とモールで攻め、最後はモールから出たボールをSO森田が敵のタックルをかわし、左コーナーに飛び込みトライ。これをFB船津がゴール成功し、帝京大が試合開始早々に貴重な得点をとった(東海大0-7帝京大)。

その後、16分には東海大がモールでのターンオーバーからFL荒木が好走し、FLリーチ-PR三上正-LO三上匠とFWが好フォローし、22m付近中央で帝京大のオーバーザトップのペナルティを誘った。そのペナルティから東海大SH鶴田がクイックアタックで中央にトライ(ゴール成功)、7-7の同点とした。

後半に入っても両チームとも激しいブレイクダウンを連発していたが、11分と20分に、東海大がPGを入れ、13-7とリードした。しかし、帝京大も集中力はまったく欠けない。帝京大FWの好プレッシャーから東海大の反則を誘い、26分に帝京大が敵陣ゴール前のラインアウトからのモールをしつこく押し、FL吉田がモールサイドから飛び込みトライ(ゴール成功)、13-14と逆転した。

残り時間14分で、リードはわずか1点。帝京大は追加点がほしいし、東海大は逆転トライを狙う。お互いミスの許されない攻防が続いた。この試合はタイムキーパー制が適用されているが、後半39分、残り時間1分となったときに、東海大は敵陣ゴール前5mでのラインアウトを得た。まさにラストチャンスだ。東海大はラインアウトからしっかりモールをつくり、FWで攻めたが、帝京大が好ディフェンスにより、東海大のオーバーザトップのペナルティを誘い、帝京大がPKをタッチに出して、ノーサイドとなった(13-14)。

試合後のインタビュー・記者会見で岩出監督・野口主将が言っていた「感謝の心」、「ゲームを楽しむ」そして「チームのまとまり」。この気持ちこそが、帝京大を初優勝に導いた源泉だろう。両チームとも持てる力をすべて出し切った好ゲームだった。
両チームとも早慶明・関東学院に続く強豪校に定着することを期待する。(正野雄一郎)

 

東海大学 13-14 帝京大学 東海大学 13-14 帝京大学 東海大学 13-14 帝京大学 東海大学 13-14 帝京大学 東海大学 13-14 帝京大学
会見リポート
 

東海大学の木村監督(左)と荒木キャプテン
東海大学の木村監督(左)と荒木キャプテン

東海大学

○木村季由監督
「本日はありがとうございました。選手たちはこのゲームにいろいろチャレンジしてくれました。帝京さんの素晴らしいアタックに一人ひとりのパワーを結集してぶつかってくれました。攻める姿勢をもって戦おうと言ってきましたが、素晴らしい戦いぶりを見せてくれたと思います。1点差の接戦でしたが、1点の重さを後輩たちが感じ取ってくれれば、今日の敗戦は意味あるものになります。4年生の、最後まで見せてくれたファイティングスピリットを継いでいってほしいです」

──ペナルティを得て、ゴールを狙わなかった場面は?
「前半、風下でよく凌いだという思いはありましたが、後半は風上で攻める姿勢で行こうと話しました。あそこは10mラインとハーフウェイの中間くらいのところでしたが、ゲームの難しいところです。最後のラインアウトは狙えないと判断して自分たちの一番強いところを出そうとしたのだと思います」

──初の決勝で?
「昨夜から選手は気持ちが入って、早すぎず、弓を引いて、引いて、いつ放つか、という状態で、全員がこの試合を楽しみにしていました。緊張はありませんでした」

──80分、左腕骨折で負傷中の荒木キャプテンにゲームを任せたが?
「良かったと思います。前に出てタックルしていて、痛がる様子も見せず、最後までキャプテンとして声を掛け続けていました。改めて、彼の凄さを感じました。途中で動きが落ちたらと、これは感情を交えずに考えていましたが、純粋にパフォーマンスが良かったので代える必要はまったくありませんでした」

○荒木達也キャプテン
「東海として、最後の決勝戦、力を出し切ることがテーマでしたが、最後の最後まで獲りきれなかったのが自分たちの甘い部分だったと思います。後輩たちはこれを良い課題として、次は優勝してくれると信じています」

──最後の場面は?
「最後は5mのラインアウトモールで、残り1分、最後の舞台が整ってFW得意のプレーで獲りきろうと話し合いました。帝京さんのファーストコンタクトが激しくプレッシャーを掛けてきて素晴らしかったです。手も伸びてきてボールをうまく後ろへ運べませんでした。そのプレッシャーがモールを作り直させなかった帝京さんの強さを感じさせました」

──密集でターンオーバーされる場面が見られたが?
「ブレイクダウンではボールの保持を意識していましたが、なかなか入らせてくれず、ラックでも毎回プレッシャーを掛け続けられました」

──初の決勝で?
「皆、前日から楽しみにしていて、今日も80分、ゲームを楽しんでいました。今までと違った楽しみがありました。しかし、1位と2位の差があるなと今は思っています」

──怪我は痛くなかったのか?
「試合中は痛くありませんでした。今は、どんどん痛んできました(笑)」

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帝京大学の岩出監督(左)と野口キャプテン
帝京大学の岩出監督(左)と野口キャプテン

帝京大学

○岩出雅之監督
「ありがとうございました。今日のゲーム内容は、うちがうまく獲れればスコアは20から25点くらい、獲れなかったらクロスゲームになると予想していました。というのは、チームの自信であるディフェンスでは多く獲られることはないと思っていたからです。うちのアタックの精度をどこまで高めて出せるかというところでしたが、風向きや大部分の選手の精神状態から、厳しい予想のほうが的中してしまい、最後までどちらに転ぶか分からない展開になりました。しかし、ここまで見守ってきた中でも一番苦しいところで、選手が自分たちの力を発揮してくれました。本当に、選手と支えてくださった皆様に感謝したいと思います」

──胴上げの気分は?
「感無量で空を見上げていました。素晴らしい好天で、その中で空を見上げて喜びと感謝で一杯でした。思い出されるのは、帝京が少しずつ強くなって来られたのも、厳しいゲームを早稲田、慶應、明治さんと繰り広げてきたおかげだということです。つらいことも選手たちは感じていたと思いますが、敗戦の中で毎年積み上げてきたものがありました。スタッフ、選手、多くの支えてくれた方々に強くしてもらったと感謝しております。その意味で、帝京が強豪チームとして積み上げるべき礎を、これから入ってくる学生がより高い目標と強い意志を持てる礎を今日の選手たちが作ってくれたと感じています。これからも毎年、相手チームにグラウンドでは恐れられ、試合後は尊敬されるチームになれるように、しっかり胸を張っていきたいと思います」

──ハーフタイムの指示は?
「ゲーム前に楽しみは勝敗と内容だと伝えていましたが、勝敗は終わってからにしようと言いました。クロスゲームゆえ、勝敗にこだわらず本当に中身にこだわろうと」

──勝敗を分けたポイントは?
「最後のうちのディフェンスです。向こうのFBの選手のカウンターだけは絶対止めようと。最後はディフェンスでプレッシャーをかけ、きちっと肩を当てたことです。ターンオーバーからの前進、そこが一番、我々の強みが出たところです」

○野口真寛キャプテン
「お疲れ様でした。今日の試合はありがとうございました。本当に嬉しいです。厳しい80分でした。どちらも力の差を感じない試合でしたが、最後まで自分たちが粘り強く、今までやってきたことを信じてやりました。ここまで導いてくださった監督、コーチングスタッフ、支えてくださった皆様に感謝します」

──ゴール前、ターンオーバーした最後の場面では?
「最後のプレーになると確信していました。接点とモールディフェンスは自信のあるプレーで、最後は全身全霊をかけて相手のモールに入っていきました。ペナルティをしないで集中していくことだけ考えていました。東海さんが帝京の圧力を嫌がって左右へ出てきたので、ボールに行くだけでした」

──アタックはあまりうまくいかなかったが?
「焦りはなかったです。自分たちは選手権を通して、どの相手チームとも厳しい試合で、パワーアップしてきた中で、粘り強さを培ってきました。敵陣にしっかり入って自分たちのラグビーをするだけでした。チームメイトには、まず反則しないことを徹底しました」

──帝京でプレーしてきて、強さの秘訣は?
「やはりチームのまとまりです。一人ひとりが最後まであきらめず、リーダーたちも下級生も押し上げてくれるからです。監督、コーチ陣の皆さんに感謝します」