ノースハーバー州代表 23-19 JAPAN XV

【2010年6月4日(金) at ニュージーランド・ノースハーバースタジアム 】

ノースハーバー
text by Kenji Demura

「ますはディフェンスを見てみたい」(ジョン・カーワン ヘッドコーチ)

4試合で計50トライ、1試合平均得点81.5。
多くの時間を攻撃に費やし、守る場面の少なかったアジア5カ国対抗を経てのノースハーバー州代表との強化試合。
1週間後開幕を控える「ANZパシフィック・ネーションズカップ2010」で想定される厳しい戦いを考えてみても、首脳陣がDFを第一のチェックポイントと置いていたのは当然のこととも言えた。
その点から言うなら、来秋のW杯で日本が初戦のフランスとの試合を戦うまさにその場所で行われたノースハーバー州代表戦は、収穫と課題の双方が浮上するような、カーワンジャパンの現在形がはっきりわかる興味深い内容となった。

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タックルを受けながらもボールをつなぐWTB遠藤 SOのウェブ 菊谷キャプテン 後半27分トライを奪い喜ぶCTBトゥプアイレイ。ミッドフィールドでの存在感は圧倒的だった

直前まで出場が伝えられていたCTBルーク・マカリスターこそ、首の負傷で欠場することになったものの、WTBには08年にオールブラックスとして4試合に出場しているルディ・ウルフが起用されるなど、そうそうたるメンバーが並んだノースハーバー州代表。
ジャパンにとっては、アジアからの切り替え、ことに守りのチェックのためにはかっこうの相手との対戦であることは間違いなかった。
事前に「JKからもレベルの違いにビックリするなと言われていた」(FB松下馨)とはいうものの、立ち上がりは全くと言っていいほど、自分たちのペースがつかめない時間帯が続いた。
「相手の速い展開を意識しすぎて、ラインDFもそれに合わせて早く流れてしまったため、逆にDFラインの内側に穴ができた」

試合後、カーワンHCが分析したとおり、前述したとおりの決定力を誇るノースハーバーBK陣に何度かクリーンなかたちでのインサイドブレークを許してしまう。
少なくとも試合開始から20分までは完全に試合を支配されていた感のあったジャパンだったが、前半許したトライは33分の1本のみ。
確かに、ノースハーバー州代表自体、国内選手権開幕まで2ヶ月近くあるという状況の中、まだチームとして出来上がってない部分があり、それが日本にとってはラッキーだったという面はあったかもしれない。

「向こうが合ってないようなところもあって、それに救われた感じもする」(WTB小野澤宏時)

それでも、前半9分に相手のSOマイク・ハリスに大きくゲインされた後、フォローしてトライラインに迫ったSHクリス・スマイリーを、FB松下が良く戻ってタッチに押し出しトライを防いだシーンに象徴されるように、ギリギリのところで1対1になりながら、守り切る場面が何度もあったことは、大きな進歩だろう。

その一方で、「アジアとはレフリングもレベルが違って、細かいところで反則を取られてしまった」と、FL菊谷崇主将が悔やんだとおり、端から見るなら不要と思えたペナルティを繰り返して、PGで点差を広げられたのは今後に向けての修正点のひとつ。

結局、前半は0-16で終了。

20分過ぎからは、日本もボールを持つ時間帯が増えるようになるが、攻め込みながらのミスもあり、無得点に終わった。

トライチャンスもあったが、「アジアでは4、5回フェイズを重ねればトライを取れてしまうのが、このレベルだと10回、11回とフェイズを重ねないとなかなかトライに結びつかない。そういう意味で、我慢が足りなかった」(LO大野均)という、やや淡白な攻めが響いた。

正直言えば、前半40分間に関しては、目の肥えた地元ファンを日本が魅了するような場面は余りなかったはずだ。

それが、80分間を戦い終えた後、敵将のクレッグ・ダウド監督は以下のようなコメントを残すことになる。

「間違いなく、今日駆けつけたファンは日本のスピード溢れるラグビーを堪能していた。みんな、1年後、日本がワールドカップでここに戻ってくることを心待ちにしているはずだ」

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後半途中出場し、スクラムの安定、そしてフィールドプレーでも猛アピールしたPR畠山 途中出場のLO眞壁もフィジカルな強さを前面に出したプレーでアピール 後半37分にスクラムサイドを突いてトライを奪ったSH和田 キレのあるプレーでこのレベルでも十分通用することを証明したFLリーチ

その言葉が意味するとおり、後半は前半の裏返しとも言えるような、日本のいいところばかりが目立つ40分間となった。

それは、以下のような面白い現象からも明らかだった。

本質的に、ノースハーバーがメインの写真を撮影する必要があり、前半は日本ゴール側に陣取っていた地元のカメラマンたちが、試合終了間際にはこぞって日本が攻めるサイドに移動していたのだ。

これは、試合の終盤は日本が一方的に試合を支配して証左だと言っていいだろう。

「ほとんどディフェンスの場面がなかった」というCTB金澤良(後半14分から途中出場)の感想もそれを裏付けている。

この試合の一番のポイントだったDFに関しても、後半開始直後にポジショニングのミスからトライを取られた以外は、破綻する場面はほとんどなかった。
確かに、前述の金澤の証言どおり、後半に入ってセットがより安定し、日本がボールを所持する時間が増えたという面もあるかもしれない。
その一方で、最終的にはノースハーバーのファンたちをジャパンが魅了できたのは、後半、トライを取り切ってみせたからでもあった。
セットの安定を象徴するかのように、12分には敵陣深くでのマイボールラインアウトをしっかりキープして、モールをドライブした後、HO堀江翔太が押さえて反撃開始。

27分CTBアリシ・トゥプアイレイのトライ後、試合終了3分前に相手ゴール前スクラムで押し勝ち、途中出場のSH和田耕二がサイドを駆け抜けた。
この日のトライスコアラーがいずれもキャップがひと桁台の新顔だったことに象徴されているように、若手が活躍したという点もポジティブにとらえていいだろう。

トライスコアラー以外でも、前述の金澤はフェイズを重ねながら最終的にトゥプアイレイのトライにつながった一連のプレーの中で、咄嗟に乱れたパスを足で処理してアタックを継続するファインプレーを見せるなど、しっかりアピール。
やはり途中出場のFLマイケル・リーチも、やはりトゥプアイレイのトライにつながる突破など、反応が良く切れ味鋭いプレーがこのレベルでも十分通用することを証明してみせた。
後半スクラムが安定度を増したのはPRに畠山が入ったことが大きかったし、前述のとおりFB松下も攻守に存在感を示してみせた。

「一番必要なのはゲームメイク」(和田)

「まずは1対1のDFでしっかり止める」(金澤)

それぞれ、まだまだ課題を持ちながら、若手がしっかりアピールしたという意味でも、パシフィック・ネーションズカップ、そして来秋、同じ場所で戦いを開始するW杯に向けて、「前向きになれる」(カーワンHC)一戦となったことは間違いなかった

ノースハーバー州代表 23-19 JAPAN XV
短いプレー時間ながら、トライにつながるキックパスなど印象に残るプレーぶりのCTB金澤