フィジー代表 22-8 日本代表

【2010年6月12日(土) at フィジー・チャーチルパーク】

ANZパシフィック・ネーションズカップ
text by Kenji Demura

前半を終わって0-3。

SOショーン・ウェブのキックの不調もあり無得点で終わったものの、日本としては十分想定内と言える展開でハーフタイムを迎えていた。

「(前週の)オーストラリア戦を見ても、フィジーは前半素晴らしいラグビーをしていたのが、後半崩れていた。僕らとしても、前半粘って、リードできればそれにこしたことはないし、そうじゃない場合も少ない点差でついていって、後半仕掛けていくような展開に持ち込みたい」
ある意味、前日にNO8菊谷崇主将がそう語っていた通りに折り返せたジャパンだったが、前半から目立っていたミスが致命傷となるかたちで、フィジーに主導権を奪われてしまう。

フィジー代表 22-8 日本代表   フィジー代表 22-8 日本代表   フィジー代表 22-8 日本代表   フィジー代表 22-8 日本代表

後半9分。敵陣深くのスクラムから裏に蹴られたボールに対して、CTBライアン・ニコラスが果敢に前に出てキャッチングを試みるものの、ノックオン。こぼれたボールをフィジーにつながれ、SH ニコラ・マタワルが日本陣深くに蹴り込んだボールを自ら拾って、そのままインゴールに走り込んだ。
さらに15分。フェイズを重ねて敵陣深くに攻め込んだ日本がBK展開。フィジーDFのプレッシャーを受けながらパスを受けたニコラスが再びボールを落とし、ファーストトライと同じようなかたちでフィジーにカウンターアタックを食らってしまう。
日本が攻め込みながら、ターンオーバーからフィジーに奪われた2つのトライで一気に点差は17点に広がった。

フィジー代表 22-8 日本代表   フィジー代表 22-8 日本代表   フィジー代表 22-8 日本代表   フィジー代表 22-8 日本代表

日本の初得点は19分。この日、3本のPGを外していたウェブに代わって、ニコラスがPGを決めて、試合を2トライ2ゴールで追いつく射程範囲内に引き戻した。

「残り20分。必ず日本に波は来る」(菊谷主将)

思い起こせば、1年前のスバでのパシフィック・ネーションズカップ最終戦でも、さらにトゥールーズで戦ったフランスW杯の時もそうだった。
ここ数年、試合終了直前まで勝敗がどちらに転ぶかわからないような死闘を繰り広げてきた両国の対戦では、最後の20分で日本が追い上げ、時にはいったんは逆転するパターンの試合が多かった。
そんな経験を踏まえての菊谷主将の予想どおり、32分に日本はこの日初めてフィジーゴールを陥れることに成功する。
敵陣22m付近でのラインアウトからモールを押し込み前進。最後は菊谷主将自らブラインドサイドを突破してコーナーフラッグ際に飛び込んだ。

「ツルッツルッでした」(CTB平浩二)という滑るボールの影響もあってか、前半からミスが多く本来のテンポをつかめていなかった日本のアタックも、後半22分にWTB小野澤宏時が途中出場してからは効果的なラインブレイクの回数も増えていた。

「あのモールからのトライで、また去年のように追い上げられる気がしたよ」というのは、昨年もこの一戦を撮影していたフィジー協会オフィシャルカメラマン氏の独白。
あるいは、5600人が駆けつけていた現地のファンの多くも同じ思いだったかもしれない。
ところが、そんな日本の追い上げムードは、またもフィジーならではのカウンターアタックによって、断ち切られてしまう。
36分、自陣でキック処理したフィジーBKがボールをつないで、3たびトライラインを越えた。

フィジー代表 22-8 日本代表   フィジー代表 22-8 日本代表   フィジー代表 22-8 日本代表   フィジー代表 22-8 日本代表

「今日に関してはここ一発の集中力でフィジーの方が上だった」(LO大野均)

「フィジーのBKは自発的にはほとんど何もしていない。ただジャパンがミスしたボールを拾って、走っただけ。それだけに悔しい」(CTBニコラス)

結局、07年W杯以降のフィジー戦で最多となる14点差での敗戦となってしまったPNC開幕戦。
快足ランナー揃いのフィジーをノートライに抑えた前半のDFでの粘り。
最終的には3つ目のカウンターアタックでトドメを刺されたものの、後半追い上げ態勢になってからは、ライン攻撃も多彩さを増した。
そんなふうにポジティブになれる部分も少なくなかったものの、残るサモアでの2試合に向けて多くの課題が浮上したのは事実。

「負けたことこそ収穫。ここから進んでいかなければならない。個々のミス、ブレイクダウンやスクラムの問題、80分間集中力を持ち続けること。修正すべき課題はたくさんある」(ジョン・カーワンHC)

確かに、フィジー戦同様、厳しい戦いが待ち受けているサモアで進化できるなら、ラウトカでの教訓も意味があるものとなる。

「(パシフィック・ネーションカップを)勝ち越して終わります」(菊谷主将)

そう宣言して、桜の戦士たちは次なる戦いの場サモアに移動した。