『宮崎を元気にする! 復興ラグビー祭』2011年3月開催へ
家畜の病気・口蹄疫で国内最大の被害を出した「ラグビーのまち」宮崎県川南町で2011年3月、「宮崎を元気にする! 復興ラグビー祭」が開かれることになった。地元の川南ラグビークラブ(林健太郎代表)と交流がある全国のクラブチームが復興を支援するため募金を集め、住民とラガーたちを元気づけようと宮崎へ遠征する。
宮崎県川南町の内野宮正英町長と川南クラブの河野龍司監督、日本ラグビー協会の真下昇副会長・専務理事、奥村敏明・日本協会事業委員会クラブ大会部門長らが10月1日、東京都港区の日本協会で記者会見して発表した。
川南町と川南クラブ、日本ラグビー協会事業委員会クラブ大会部門、東日本トップクラブリーグ(TCL)は「宮崎を元気にする! 復興ラグビー祭」実行委員会を組織した。3月19~21日の3連休に、川南クラブ(林健太郎代表)を含む全国8クラブが出場して川南町運動公園陸上競技場(川南町大字平田2334番1)で7人制大会や高校生の試合、地元農産物の即売会も計画している。内野宮町長が大会会長を務める。
川南町はサントリーのWTB長友泰憲選手ら過去に4人の日本代表選手を出した「ラグビーのまち」。71年設立の川南クラブは、全国クラブ大会にも出場経験がある。
東日本TCLの10クラブは「対戦経験もあり、同じクラブの仲間として他人事じゃない」(北海道バーバリアンズの国松一徳さん)と支援に立ち上がった。来年2月まで東京・秩父宮ラグビー場など各試合会場で募金を呼びかけ、浄財を町に寄付する。また、復興祭に数チームを派遣する。「募金を出せる人は、募金を」「募金を呼びかけられる人は、呼びかけを」「チームを宮崎に派遣できるチームは、参加を」と、各チームや選手がそれぞれできる範囲で「One for all, all for one」の精神で取り組む。
既に6月から募金を始めて、12万円を集めたほか、川南クラブが作った寄付金付きTシャツを100枚購入した。募金口座は、ゆうちょ銀行00120-3-338243「宮崎を元気にする復興ラグビー祭 実行委員会」。
川南町内では4月の口蹄疫発生以来、牛を1万3624頭、豚を15万3880頭、殺処分した。川南クラブの選手2人も酪農家で、我が子のように育ててきた牛の処分を強いられた。メンバー約40人には防疫作業に従事した町役場や農協の職員が多く、人通りが絶えた商店街で売り上げが激減した店主もいる。河野龍司監督は「全員が直接・間接の被害を受けた」と話す。
8月27日に終息宣言は出たが、子牛を新しく購入しても育てて再び出荷できるまで最低2年はかかる「長い戦い」が続く。牛126頭を失ったプロップ黒木俊勝(くろぎ・としかつ)選手(30歳)は「大きな落胆とぶつけ場所のない怒り、憤りを感じた。でも『もう一度酪農で勝負してやるんだ!』と気持ちを切り換えた」と振り返る。ウイング、フランカーの後藤裕介(ごとう・ゆうすけ)選手(25歳)は牛97頭を奪われた。「しばらくはラグビーをしたくない」とクラブが自粛を解いて練習を再開しても参加できなかった。2人は今、「全国からの支援に恩返しするため、自分たちが先頭に立って復興のシンボルになる」と復興祭の成功に意欲を燃やしている。
川南クラブは9月12日開幕の九州トップクラブリーグで2連勝と最高のスタートを切った。特にトップリーグ・福岡サニックスOBがそろう玄海タンガロアに勝った26日の第2戦は大きかった。河野監督は会見で「8月までほとんど練習できなかったが、チームの結束力は増した。最後の10分間はタックルばかり。ひたむきにいいタックルができた。牛や豚が助けてくれたと思う」と振り返り、「優勝して全国クラブ大会に出場し、『川南は元気になったよ』とアピールしたい」と言い切った。また募金について「知らないチーム名の振込を通帳の記帳で確認し、『One for
all, all for one』『スクラム』という言葉が頭の中を駆け巡った。ラグビーをやってきて、本当によかった」と話した。
毎試合観戦している内野宮町長は「幸先のよいスタート。選手が一生懸命で、結果が出ている」と評価。復興祭について「本当にありがたい話。全国の人にお越しいただいて、ラグビーをする者同士の親睦を図りたい」と述べた。
日本協会の真下副会長は「川南クラブは7月に、7人制強化のための『セブンズブロックアカデミー』パートナークラブに認定され、お世話になっている。口蹄疫被害に対し、ラグビー協会として何ができるかを考えた。川南クラブには今までのダメージをはねのけて、町民と県民に勇気を与えてほしい」とエールを贈った。
記者会見には、東日本TCL10チームが正ジャージ姿でそろい踏み。タマリバクラブの富野永和ヘッドコーチは「東日本TCLは今年、統一スローガンとして『One Club!』を掲げた。ラグビーを愛する、仲間を愛する、クラブラガーの想いは一つ。もっとラグビーが楽しめるように、もっとラグビーが好きになれるように。ラグビーを通して、互いに競い合い、互いに助け合う」と募金にかける各クラブの思いを代弁した。「東京闘球団」高麗の安秀哲部長も「川南の力になりたい」と力強く語った。
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