第5回目の「みなとスポーツフォーラム~2019年ラグビーワールドカップに向けて~」はスポーツマーケティング界のカリスマであり、『エスキモーに氷を売る』の著者、ジョン・スポールストラ氏をお迎えし、「成功のためのスポーツマーケティング術」をテーマに10月6日(水)に男女平等参画センター(リーブラ)にて講演を行いました。

現在は、マンダレイ・ベースボール・プロパティーのヴァイス・チェアマンを務めているジョン・スポールストラ氏ですが、これまで経営に携わってきたNBAのニュージャージー・ネッツやニューヨークヤンキース傘下1Aスタッテンアイランド・ヤンキースでの経験談を踏まえながらジョン・スポールストラ氏が提唱するスポーツマーケティング術について語っていただきました。

ジョン・スポールストラ氏
ジョン・スポールストラ氏

【スポーツマーケティングとラグビーW杯】
まず始めに司会者から、2019年に日本にて開催されるラグビーW杯を成功させるための必須条件として、「全ての試合のチケットを完売させること」の必要性の説明がありました。この説明を踏まえ、ジョン・スポールストラ氏はスポーツマーケティングの観点から「良い知らせ・悪い知らせ」の2つをフォーラム参加者にそれぞれお話しになりました。まず悪い知らせというのは、前述の必須条件があまりにも困難な挑戦であること。また良い知らせというのは我々にはまだ9年間という時間が残されていることだと述べられました。「これから説明する2つのマーケティング術を使えばチケットの売り上げ増が見込め、どちらか一方でも欠けてしまうとチケットを完売することはできない」と自信に満ちた目で参加者に訴えかけていました。

【ジョン・スポールストラ氏のマーケティング術:1】
1つ目のマーケティング術としてまず、『全ての試合は同じではない』ということを認識した上で、「チケットを完売させることができる、または、完売の可能性がある試合に全力を注ぎなさい」とジョン・スポールストラ氏は述べられました。『全ての試合は同じではない』の実例として当時人気のなかったニュージャージー・ネッツであっても、バスケット界の大スター、マイケルジョーダンが所属するシカゴ・ブルズとオニール率いるオーランド・マジック戦等の人気のある5試合をパッケージ化し、そして完売に導いたと自身の経験談を用いて冗談も交えながら1つ目のマーケティング術を説明していただきました。完売の可能性がある試合に集中し結果を残していくことが将来のシーズンに繋がるともジョン・スポールストラ氏は仰っていました。

【ジョン・スポールストラ氏のマーケティング術:2】
続いて2つ目のマーケティング術は「チケット販売のためのスタッフ・予算を必ず確保しなさい」という実にシンプルなものでした。ジョン・スポールストラ氏は、「一般的な予算内訳では重要視されていないチケット販売に関する費用を十分に確保し、販売スタッフを雇用・訓練・熟成させなさい」と特に強調し、チケット販売のスタッフ不足・スタッフの訓練不足というのがチケットの完売を阻害しているものだと説明していました。販売スタッフを訓練するときに行われた強化合宿を面白おかしく説明し、訓練の成果がチケットの売り上げにつながると述べられていました。ジョン・スポールストラ氏の哲学には実に説得力があり、参加者からも頷いている人や・要点をメモしている様子が多く見られました。

フォーラム参加者との質疑応答

「完売の可能性のある試合に全力を注ぎなさい」と仰っていましたが、完売の可能性がない試合に対しては何もしなくていいのですか?
→「はい、おかしく聞こえるかもしれませんが何もしなくていいです。
何を言わんかというと、今日説明した方程式というのは3~4年かかるものであり、今回の日本ラグビーの場合においては9年間という可能性を上げるチャンスがあるということです。1試合1試合可能性がある試合に集中して毎年毎年続けていくことで販売の実績はおのずとあがっていき、3~4年後には完売の可能性がある試合がさらに増えていくでしょう」

昨日、Jリーグにで講演を行ったジョン・スポールストラ氏ですが、Jリーグのチケット販売についてはどのようにお思いですか?
→「本日説明したマーケティング術というのは私が在籍していたニュージャージー・ネッツや日本のサッカーであったりしても、マーケティングの基礎の定理はゆるがないものだと思っています。昨日私がJリーグで話したことは本日話したことと同様なもので、私の方程式を適用してくれればいろいろな効果があげられると思います。逆に、待っていたり・何もしなくて現状に甘んじているようでは、サッカーであろうが何であろうが人気は衰退していくのではないでしょうか」

チケット販売を上げるためのスタッフの仕事とは?
→「私の信条としては、今まで述べてきたようにチケット販売というものはスポーツマーケティングの最重要要素であり他の組織に委ねるといったことはあってはならないことだと思います。もし、これら外部組織が私たちの行っているものよりよい効果を出せる場合は考慮してもいいかもしれません。ただ私の経験上、チケットセールスほど重要なものは他の組織に任せるというのは考えられませんがね・・・」

もしチームのマネージャーがチケットセールスの重要性を理解していない場合はどうしたらいいですか?
→「別のチームを探しなさい、私が言えるのはそれだけです」

チケットセールスという意味ではスポーツマーケティングと他の一般的なチケットセールスの違いは何でしょうか?
→「私が知っているのはスポーツマーケティングに関するものなのでこの質問に答えることはできないでしょう。残念ながら私は劇場に足を運ぶことすらしません」

最後の質問のニュージャージー・ネッツに在籍していたときにいくら給料をもらっていたかという質問ははぐらかされてしまいましたが、本日の講演を通してご自身が提唱しているマーケティング術を実に簡潔に・また実体験を踏まえて参加者一同にわかりやすく説明していただきました。

◆第5回でマーケティングについて勉強したみなとスポーツフォーラム。次回第6回は11月10日(水)にスポーツプロデューサーの杉山茂氏を講師に招き、「メガスポーツイベントとメディア」をテーマに、スポーツとメディアの関係について学びます。

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