帝京大学 36-22 東海大学 【準決勝/2011年1月2日(日) at 東京・国立競技場】 帝京が3年連続決勝へ 3年連続の決勝戦進出を狙う帝京と、1点差で初優勝を逃した昨年の借りを返したい東海。昨年の決勝カードが再現された。 両チームとも先発は2回戦と同じ安定したメンバー。また昨年決勝に出場した選手が10名近くいることも共通していた。 この試合のポイントはモールからの攻守をどのように行ったか、スクラムをきちんと組めたかの2点になろうかと思う。 2回戦で慶應を、FWの力でねじ伏せた帝京は、始めからスクラムに拘る同じ戦法を取りたい。一方、関西の雄・天理をノートライに抑えた東海は、身長が高く、長いリーチのFWの特性を活かし攻撃権を得て、BKへの早いパス回しで帝京のペースを乱したい。 前半は、帝京のキックオフ、3本のキックの応酬から東海がタッチに蹴り出しラインアウト。帝京が投入、モールを形成しモールサイドから6・7番が抜け敵陣22mまで攻め込む展開で始まった。 帝京のパターンはセットからモールを形成、15m程先のオープン側にFWを集め、再びモールでゲインラインを割る。その地点からサイドを突くか、BKに回すか状況で分かれるパターン。東海は、ラインアウトのセットプレーで、中間的角度をもつ、深くはない長いラインを敷き、まずFWで押し込み、早めに出してBKで左右に散らすパターンが見られた。 しかし、前半、スクラムプレーでのレフリー注意、PK・FKが繰り返し発生。東海の先制トライもFKから。スクラムを選択(左中間5mスクラム)8番前川がサイドを突きノーマークで得点。前半10分、0-7。 24分、東海が自陣で連続して反則、シンビンを受け14名になった以後も、帝京はゴール前でスクラムを選択、トライでの得点に拘った。約20分間帝京のペースで試合が進行した。 30分左ラインアウトからモール、左サイドを8・9番がすり抜け10番にパスしてトライ。浅い角度からGキックを見事に決めようやく同点とした。さらに39分、中央付近のラインアウトからモール形成直後、6番ツイが右サイドを突破、振り切り40m独走した。ゴールが決まり、14-7で折り返した。 後半の展開は、攻守が代わる速い展開が見られた。後半開始直後、前半の流れで帝京が優位と思われたが、東海が10分、12分と連続して得点。21-22と一点差で東海が再逆転し、そのまま行けば・・・と、昨年の記憶を思い起こさせた。 10分、東海は長い速いパスで一気にCTBまで、一度はパスが乱れたが15番豊島がトップスピードでうまく拾い上げ、ライン沿いを走りきり中央にトライして流れをつかんだ。 12分、自陣10mのラインアウトで浮いたボールを東海7番リーチが好キャッチしたのち60m独走してポールすれすれの左隅にトライ。 その後は、18分頃帝京がホールディングでPKを得て、タッチに蹴り出しラインアウト。ラインアウトセットからモールで押し込むもゴール前でつぶされ、ラック形成。東海のラックサイドが薄くなったゴールポスト右下付近に、帝京9番滑川が滑り込むように飛び込み再び帝京がリードした。21分、28-22。 そして、23分帝京FWの突進でPKを誘い、冷静に30mPKを決め31-22と1ゴールでは返せない9点差になった。 前半との違いは、両チームのBKへの展開であった。東海のBKパス攻撃中、2番のパスをインターセプトで攻守が一気に代わり、ゴール前まで攻めるも東海が必死にめくり上げ止めたプレー。ゴール前10m東海の攻撃で左中間モールから出たボールを平行パス、一直線にWTBまで飛ばしたが、惜しくもタッチへそれた(36分頃)。 終始FW戦に持ち込みたかった帝京。BKを活かし早い展開に持ち込みたい東海。このお互いの戦法は、前半が長い膠着状態となったことで変わった。後半帝京はモール・スクラムへの拘りを少し捨て、BKはディフェンスに耐えた。東海はBKへ前半以上に良く回しスピードあるパスを見せてくれたが、帝京のBKを完全に崩すことはできなかった。両チームともPK12帝京・14東海の数は課題として欲しい。 ゴールポストすれすれ、キリギリのトライシーンで、レフリーがTJに確認を求めた後のトライコールに、ラグビーファンの大きな歓声が晴天の国立に響いた。両校の対戦を来年も楽しみにしたい。(長澤孝哉) 東海大学の木村監督(左)と前川キャプテン 東海大学 ○木村季由監督 「ありがとうございました。結果の通りで、試合が終わったばかりで整理がついていません。今日は、最後まで彼らの力を出し切るのがテーマでしたが、もちろん、帝京さんの強さもありますが、力を出させてやれなかった監督としての力不足を感じる気持ちでいっぱいです。選手は最後まで自分たちの形でやり続ける姿勢を見せてくれました。通用しなかったことは残念ですが、彼らを誇りに思っています」 ──ブレイクダウンの対策は? 「そこが帝京さんの強みと認識していましたので、人数をかけても圧力をかけ、一人一人が前へリアクションしていこうとしました。一つ一つのコンテストでしっかりできている部分もありましたが、ペナルティも起きてしまいました」 ──選手の力を出し切らせることができなかったのは? 「ゲームの中での適応力、対応力という部分です。結果的に、そこで崩れていった部分がありました」 ○前川鐘平キャプテン 「本日はありがとうございました。前半は帝京さんのFWと十分にやれたと思います。後半はじりじりとプレッシャーを受けるようになり、自陣でもペナルティを犯してしまい、こうした試合になったと思います」 ──シンビンは? 「僕たちからするとしっかり組んでいるつもりでしたが、レフリーの判断はこちらが落としているということでした」 ──ブレイクダウンの対策は? 「競ってくるのは分かっていましたので、前半はそこで勝負し、五分もしくはこちらの方が取れていました。後半は、簡単にトライを獲られた部分からブレイクダウンでペナルティが増え、こういう形になったと思います。対策はやってこれたと思います」 ──ペナルティの要因は? 「まず、タックルミスがあって、少し裏に出られ始めてペナルティが増えたと思います」 ──後半、帝京のFWの絡みは? 「前半と変わりはありませんでした。僕たちが徹底できなかったからだと思います」 ──試合前のトスは? 「風上を取って、敵陣で試合をしようとしましたが、マイボールの時間が少なくほとんど自陣でやる時間が長かったです」 ──後半、一時逆転したが? 「流れが来たのですが、その後が続かなかったと言うか、帝京さんのトライがあって、こちらに流れを切ってしまうプレーが出てしまいました」 帝京大学の岩出監督(左)と吉田キャプテン 帝京大学 ○岩出雅之監督 「明けましておめでとうございます。タフなゲームになると思っていました。しかし、対抗戦で厳しく教えてもらい、こちらが培った部分と、昨年1点差で負けて東海さんが悔しい部分と、気持ちの面で受けに回らないで、秋の悔しさの実(じつ)を生かそうと向かいました。技術的には大きい東海さんのFWに我々のFWが通用するか、対抗戦で鍛えられ、自信を持っているディフェンスでラグビーできるように臨みました。獲られてもはね返すチームに成長してきたと思います。残り1試合は集大成として臨みたいと思います」 ──ハーフタイムの指示は? 「僕があれこれ言わなくても、選手が分析していました。バックスのディフェンスが悪いと選手からも出ていましたので、まず一番に思い切りよく行こうと送り出しました」 ──選手たちの成長は? 「今のキャプテンのコメントでお分かりいただけると思いますが、落ち着いた分析をして、他の選手の気持ちをうまく乗せながら、トータルマネジメントができています。チームは大学選手権に出て、去年のチームの味は味として、それを超えたかな、と思います。決勝戦には良い状態で臨めると思います」 (最後に監督自らマイクを握り)「東海さんの分を決勝で出したいと思います」 ○吉田光治郎キャプテン 「お疲れ様です。自分たち、選手として国立の舞台に立てる喜びを感じ、東海さんにチャレンジャーとしてぶつかりました。しかし、大きな舞台で経験が浅い選手もいて、前半は少し浮き足立ってペナルティやミスも出ましたが、全員でカバーし合って自分たちのペースで試合をすることができてこの結果になったと思います」 ──前半、PGを狙わなかったが? 「前半は僕たちの強みであるFWで流れに乗りたいと思い、まずスクラムにこだわりました」 ──大きいFWに対して? 「前列の森と相談しながらやりましたが、『全然、行ける』という強気の言葉が返ってきたので、スクラムで勝って自信をつけようとしました」 ──1点リードされたが? 「スタティックの部分で激しく入ってくるので、気を抜かない練習を積んできました。1点負けていたので、そういうシチュエーションはあり得ると想定していた通り、そこで自分たちの力を出し、楽しもうと声を掛け、チームがまとまれたと思います」 ──逆境の中、チームメイトに? 「ギリギリの試合になることは覚悟していました。この状況を楽しむか、前を向けるか、ミスを捨てて自分たちのしてきたことを出していけばよいと声を掛けました」