第7回目の「みなとスポーツフォーラム~2019年ラグビーワールドカップに向けて~」はサントリーサンゴリアス前監督 清宮克幸氏をお迎えし、12月1日(水)、赤坂区民センターにて行いました。今回のフォーラムでは、清宮氏ご自身の選手として、早稲田大学、サントリーサンゴリアスの監督としての経験も交え、
「大会を成功させるために関わる人々がとのような思考で携わるべきか」
「組織としてラグビーワールドカップをどう成功に導いていくか」
「2011年のラグビーワールドカップニュージーランド大会で日本が評価されるために」
の3本柱でお話しいただきました。

清宮克幸氏
清宮克幸氏


「大会を成功させるために関わる人々がとのような思考で携わるべきか」

清宮氏は、「プロアクト型」の思考を持つ必要があると述べられました。プロアクト型とは、自分でこの先の計画を立て、実行する人間のことだといいます。その代表的な人物として故 奥克彦さん(2003年外交官としてイラク復興支援に向け尽力中に凶弾に倒れ殉職)を挙げられました。奥さんがどんどん前へ突き進む行動力を持ち、またそれを支える体力、人間関係を持っていらっしゃったことをエピソードも交えお話しされました。奥さんの口癖は「お前らしくないな、やればできる」だったそうです。

清宮氏が早稲田大学の監督時代、新設されたグラウンドの「こけら落とし」をしたいと申し出たところ、共にアイルランド協会や、ケンブリッジ、ウェールズまでアポなしで試合交渉に訪れたエピソードをお話されました。奥さんは正義感や使命感も持った方だったそうです。大会を成功させるために、「自分で何かを見つける力、造り出す力」を持ってほしい。日本ラグビー全体をプロアクト型のリーダーシップで変えていく必要があると提言されました。


「組織としてラグビーワールドカップをどう成功に導いていくか」

清宮氏は、今の日本は委縮していると述べられました。サッカーのW杯南アフリカ大会では開幕戦を観戦された際、ハイウェイに乗っただけで国の大会へ向けたエネルギーを感じたと仰いました。それは、すさまじいブランディングにより各国の旗などで目に見える全てがデコレーションされていたそうです。国を挙げて一つのことをやりきるパワーを感じたと述べられました。

日本で2019年に同じことができるだろうか?と疑問を投げかけられました。例えば、スタジアムの建設など、ワールドカップ後にも財産として残るものを造る必要がある。また、そのスタジアムをどう運営するかなどの付加価値をつけるために、アイディアやパワーがなくてはならないと述べられました。スタジアムの存在はインフラや財産、文化としてスポーツを広めるのに一番大切なことで、自治体へスタジアム建設の魅力を伝える必要もある。組織のリーダーは大局観を持つこと、木を見て森を見ずになってはならないと提言されました。また、港区はそれができる数少ない自治体ではないかと期待を述べられました。


「2011年のラグビーワールドカップニュージーランド大会で日本が評価されるために」

今季、国際ラグビーボード(IRB)の世界ランキングで過去最高の12位(現在13位)をマークし、ニュージーランドで今年開催されるラグビーワールドカップで2勝を目指す日本代表の課題を述べられました。予選リーグで同組となるのは、ニュージーランド、フランス、トンガ、カナダ。「はたして2勝で良いのか、日本よりランキングが下のトンガ、カナダには勝つのは当たり前。それだけで世の中を感動させることができるだろうか?ニュージーランドには如何に戦うか、フランスにはどう戦い、勝つかということが求められている。フランスに勝って初めて日本国民を感動させられるだろう。2勝という声は聞こえても、フランスに勝つという言葉が聞こえないのは残念」と述べられました。

また、「日本のトップアスリートがラグビーをプレイする環境を作ることが必要」と提言。ニュージーランドでは男の子の半分はラグビーをプレイするからこそ強いチームができる、日本においては陸上やサッカーなどをやっている子供たちにラグビーの門を叩かせるためにどうすればよいのかを考える必要がある、子供にきっかけを与えるスター選手やメディアへの露出も必要となってくるでしょうと述べられました。さらに「来年のラグビーワールドカップでフランスに勝てば僕も泣きます!ラグビーを始める子供も出てくるでしょう。フランスに勝ってほしい」と日本代表へエールを送られました。
清宮氏自身、自分にしかできないことをやりきろうと思っていると述べられ、10年後のラグビーワールドカップは日本のラグビー界にとって大きなチャンスであると期待を込められました。


質疑応答


テレビ放映においては大学ラグビーにおされ日本代表の存在が低いように感じられるが、今後、日本代表のテストマッチが地上波で放送されるためにはどうすればよいとお考えですか。

→「視聴率など様々な問題を抱えているとは思いますが、テレビの枠を動かすことのできる人が働きかけていかなければならないと思います」


2019年のラグビーワールドカップ終了後、ラグビーが盛んになると、マナー違反者の存在が懸念されますがどのようにお考えですか。

→「ラグビーワールドカップ終了後にはぜひラグビー体験参加型のイベントなどでよりラグビー界を盛り上げていければいいなと思います。マナーに関してはいろいろな考え方があると思いますが、人それぞれに楽しみ方、事情があるのだという思考をもって、許容する社会も必要かなと思います」


日本代表の桜のユニフォームをサッカーの日本代表にも適用すればよいのではないでしょうか。ナショナルチームのユニフォームを統一させてはいかがでしょうか。

→「ラグビーの日本代表のユニフォームも昔の赤白ラインから変わりましたね。得たものはあるけれど失ったものもありますね。変えていいものと悪いものがあるでしょうね。サッカーでも桜のユニフォームになるとは面白い考えだと思います」

次回の第8回みなとスポーツフォーラムは講師に岩渕健輔氏(JRFUハイパフォーマンスマネジャー/7人制日本代表コーチ)を招き、「セブンズラグビーの魅力と今後」をテーマに1月27日(木)に開催いたします。
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