マッチリポート
トーナメント表


早稲田大学 12-17 帝京大学

【決勝/2011年1月9日(日) at 東京・国立競技場】

早稲田大学 12-17 帝京大学 早稲田大学 12-17 帝京大学 早稲田大学 12-17 帝京大学 早稲田大学 12-17 帝京大学
帝京大学、歓喜の連覇

早稲田が2年振り16度目の頂点に辿り着くか、帝京の2連覇なるか、注目の大学選手権決勝は25,000人超の観衆を集めた晴天の国立競技場で行われた。
早稲田は、慶應に苦杯を喫したものの対抗戦グループを1位で通過、大学選手権に入っても1・2回戦を順当に勝ち進み、準決勝では今季復活をアピールする明治を展開ラグビーにより予想外の大差で撃破し、その実力を如何なく発揮する順調な仕上がり振り。
帝京は早慶明に敗れ対抗戦4位通過なるも、大学選手権からはFW戦に固執しつつ防御網を徹底させる戦術変更によりチーム力を一変させ、慶應、東海と難敵を下し、決勝に駒を進めてきた。
BKのスピードを活かした早いペースの展開ラグビーに持ち込みたい早稲田か、スクラム・モールで圧倒する事でFW戦・密集戦に持ち込みたい帝京か、相反するチームカラーを有する対決が耳目を集める一戦となった。

早稲田のキックオフ。早々から帝京はFWを前面に押し出しモールで20m押し込むなど早稲田陣の奥深くまで攻め込む。早稲田は必死のタックルで防戦するものの帝京ペースで試合がスタートした。
6分、帝京は敵陣左ゴール前ラックより逆サイドに攻めNO.7主将の吉田が左中間に先制トライ。(0-5)
早稲田の一瞬の防御の隙を突いた見事な攻撃であったが、このトライにより余裕が出来た帝京は更に自らのペースを確保していく。
12分、早稲田ゴール前中央30mで早稲田のラックの中でのハンドによる反則。帝京NO.10森田がPG成功。(0-8)
19分、早稲田ゴール前中央22mで早稲田のスクラムを崩すコラプシングによる反則。帝京NO.10森田がPG成功。(0-11)

帝京のFWの圧力により防戦一方だった早稲田は20分過ぎから漸く連続攻撃による反撃を開始。
23分、早稲田は敵陣ゴール前より左へ展開しNO.10山中からパスが繋がったNO.15井口が帝京ディフェンスを破り中央へトライ。NO.10山中G成功。(7-11)
その後は、互いに一進一退の攻防。両チームの防御網がしっかり機能し、ボール支配率で圧倒しつつも点数に結び付かない帝京、数少ないながらもそのチャンスを連続的に繋げずペースに活かせない早稲田、の構図が続き前半終了。
前半のトライ数は1:1、PGの差により帝京リードで折り返した。(前半:7-11)

後半開始。
4分、帝京の連続攻撃により早稲田の防御網が崩れ、帝京NO.11富永が左隅にノーマークトライと思われたが、ゴール直前でノックオン。しかしながらその後遺症は無く帝京のボール支配率は引き続き高く、試合の流れは変わらない。
11分、早稲田ゴール前18m左中央で早稲田のモールを崩すコラプシングで反則。帝京NO.10森田がPG成功。(7-14)
20分、早稲田ゴール前中央で早稲田のオフサイドの反則。帝京NO.10森田がPG成功。(7-17)

後半も残り20分を切りビハインドを盛り返すべく反撃に出たい早稲田であるが、帝京FWからボールを奪えず、また二度に亘りマイボールスクラムを奪われ苦しい状況が続く。
36分、帝京の反則を契機に早稲田No.10山中が突進、ラックより早稲田NO.11中濱が左中間にトライ。(12-17)
1トライで逆転の機会を得た早稲田は、残り3分ながら自陣ゴール前から何とか活路を見出すべくバックスにボールを供給し左右に展開するも、陣地を進める事は出来ない。最後はラックで帝京にボールを奪われノーサイド。帝京の歓喜の雄叫びが国立にこだました。
(終了:12-17)

トライ数では早稲田2に対し帝京1、また得点差は5点と競り合いの形となったが、接点での攻防、密集でのボール獲得、安定したモール組み立てで、7~8割方ボールを支配し続けた帝京の点差以上の完勝と言って良い試合内容であった。大学選手権に向け、自チームの強みである強力FWの力を最大限引き出す必勝の戦術を練り、早稲田に対し対抗戦での雪辱を果たした帝京の作戦勝ちとも言えよう。
二年連続で対抗戦4位から大学日本一に上りつめた帝京。来年は1985年の同志社以来27年振りの大学3連覇を目指す事になるが、追いかけられる存在となるだけに、対抗戦での戦い方や戦術面を含め一回り大きな姿となり、他大学の真の範となるべく今後の努力に期待したい。

機動力豊かなBKと絶対的総合力を持ちながら、頂きを目前にして涙をのんだ早稲田。突き刺さるタックルと数少ないチャンスをトライに結びつけ何とか点差では接戦に持ち込んだが、ボールの争奪戦で後手に回り自らのペースは作れずに結果完敗した。(岡本 満)

早稲田大学 12-17 帝京大学 早稲田大学 12-17 帝京大学 早稲田大学 12-17 帝京大学 早稲田大学 12-17 帝京大学
会見リポート
 

早稲田大学の辻監督(左)と有田キャプテン
早稲田大学の辻監督(左)と有田キャプテン

早稲田大学

○辻高志監督
「本日はありがとうございました。自分たちが描いたようなラグビーができず、選手を方向付けることができなかった自分の力不足を感じます。選手たちは100%の力を出してくれました」

──早稲田の力を出せたのか?
「選手は身体を張り続けてくれました」

──悔やむところは?
「無いですね」

──ペナルティの多さは?
「レフリーがすべてです。ラグビーはそういうスポーツです。ペナルティも実力のうちです」

──帝京の強さは?
「ブレイクダウンのギリギリの攻防で帝京さんが上でした」

──帝京は対抗戦のときと、別のチームと感じたところは?
「ブレイクダウンのこだわりのところです」

○有田隆平キャプテン
「今日はありがとうございました。早稲田として準備してきたことを、一人一人体を張ってやったと思います。結果はついて来なかったが、この一年やってきたことは間違いなかったと思います。決勝でもブレずに、皆一つになってやったと思います」

──間違いでなかったところとは?
「帝京さんより走っていたし、ハイパントからゲームをつくることも、これまで通りでした。モールFWのところもしっかり止めていました」

──終盤、帝京はラックからボールを出さなかったが?
「(ラックへの入りを)レフリーから止められていましたが、ゲーム運びとしては想定内でした。帝京さんも準備してきたことをうまく出した結果だと思います」

──明治戦と比べてスクラムは?
「見ての通り、早稲田のフロントローは悪くなかったが、帝京さんは自信があるだけあって、やはり・・・強かったです」

──攻め込んでターンオーバーされる場面が多かったが?
「ボールを持っているプレーヤーの問題ではないでしょうか。(二人目が)遅れたわけではないが、やはり(帝京が)上手かったと思います」

──最後のアタックの場面は?
「トライを獲りに行くつもりで攻めていました。決勝ですから、簡単に抜けはしなかったが、早稲田としてひたすら攻めて、早稲田のラグビーを貫けたと思います」

──自分たちの強みを出せなかったポイントは?
「ボールの支配率が、帝京さんがだいぶ多かったので、早稲田としては少ないチャンスで獲りきれなかったことが、スコアに反映したのではないかと思います」

早稲田大学 12-17 帝京大学 早稲田大学 12-17 帝京大学 早稲田大学 12-17 帝京大学 早稲田大学 12-17 帝京大学
 

帝京大学の岩出監督(左)と吉田キャプテン
帝京大学の岩出監督(左)と吉田キャプテン

帝京大学

○岩出雅之監督
「今日のゲームは、帝京の良さを前面に出すことができたことに尽きます。最後はどちらが辛抱強く行けるかだぞと、アドバイスしてきたとおりの戦いでした。今日のテーマは『ポジティブ』で、スタートからスイッチオンで激しく行こうと、ヒートアップと冷静さを持って戦おうといってきました。ゲーム中、劣勢になってもポジティブにやって行けるか、しぶとくやれるかと臨みましたが、最後までタックルして相手の良いところを出させなかったのが勝因です」

──前半、ゴール前PGを狙わなかったが?
「大学選手権の慶應戦から、あの位置は攻めようと言ってきました。この大舞台で実証できる勝負どころだから、意地を見せようと。結果的に失敗したが、正しい選択だったと思います」

──完全にノーマークでのノックオンの場面は?
「失敗や劣勢のときもあるが、そのことに留まらず、目の前に集中していこうと言ってきました。チームメイトはお互い励ましあっていたのではないかと思います」

──スコアのポイントは?
「まずディフェンスですね。キックをむやみに蹴らないで、ディフェンスは相手のペースに合わせ、アタックは今シーズンの自分たちのペースでやろうと言ってきました。アタックもディフェンスも同じテンポで行くと後半の集中がなくなります。そういう要素が大きかったですね」

──連覇の思いは?
「昨年同様に今年も嬉しいです。今年の違いは、最高の舞台で早稲田さんに勝てたところです。ラグビー界の盟主の早稲田さんに、どれだけ多くのものを学んだか、その存在がなければ我々もなかったと思います。ゲームの厳しさを教えてもらい、決勝という大舞台で最高の相手に最高の勝利を収めてくれました。これから学生が地に足を張って、厳しい練習をしてモチベーションを積み上げてくれることを望める最高の試合でした。実のある優勝です」

──去年も今年も対抗戦4位からの優勝だが?
「対抗戦もしっかり勝ちに行っていますが、残念ながら上がっていません。敗戦の不安が選手にあればと危惧しましたが、練習メニューを淡々と、ばさっと代えてもキャプテン以下4年生が、厳しい練習を受け止めてくれたおかげです。僕は正直、迷いはありませんでした。練習の後、その意味を説明するスタイルにしました。4年生が本当にまとまってくれて、2年、3年の練習台になってくれて、選手は皆、熱いものを感じながらプレーしてくれたと思います」

○吉田光治郎キャプテン
「お疲れ様です。どんなプレーでも、小さな成功を大きな喜びに変えていこうと80分やり切れました。今年最後の学生相手で、最高の試合ができたと思います。強みであるディフェンスでこの結果を得ることができました。帝京ファンの皆様の多さに感激して、それをパワーに変えることができました。ありがとうございました」

──(優勝記念)Tシャツは勝利する自信の表れか?
「自分たちに自信がつき始めたのは正直に言って、大学選手権に入ってからです。対抗戦ではチャレンジしても勝てなくて、なぜ勝てないのか迷った時期もありました。大学選手権に入り、関東学院、慶應、東海戦と、毎回ベストゲームを更新して負ける気持ちがまったくなくなり、強い気持ちで臨めるようになりました」

──素晴らしいキャプテンのパフォーマンスだったが?
「本当に試合に集中できました。この80分に4年間やってきたことを出そうと、本当に楽しもうとして、没頭できたおかげだと思います」

──ノックオンの場面は?
「富永には『もう、捨てろ、次のプレーに集中しろ』と言いました。ちょっと何で、と思ったけれど、自分も直ぐに次のプレーのスクラムで『取り返そう』と前5人に声を掛けて、プレッシャーをかけられました」

──早稲田にトライを返された場面は?
「前へ出る気持ちを切らないようにしようと、足が千切れても、足がつっても走りきろうと、ディフェンスしてターンオーバーして最後まで集中しようと声を掛けました」

──スコアのポイントは?
「早稲田さんからペナルティをもらって、少しずつ刻んで、刻んで、得点に結び付けられたことです」

──ガッツポーズの意味は?
「前3人の練習はしんどいのですが、文句も言わずに頑張った1日1日の積み重ねがターンオーバーに出たので、心からホンマに頼りになる奴らだなと思い、出てしまいました」

──ブレイクダウンでのターンオーバーが多かった理由は?
「ブレイクダウンとタックルは帝京の一番の強みです。練習でも一番やっているプレーで、今日はセカンドプレーヤーの判断が良かったです。カウンターラックに入るのか、捨てるのか、全員がはっきり判断できていました」

早稲田大学 12-17 帝京大学