●3月25日(金)

いよいよ大会当日です。
選手は会場の香港フットボールクラブに向かうバスの中、音楽を聞いたりと、非常に良い雰囲気で会場入りしました。ウォームアップでは、まず一つ目のカナダ戦に集中し、気合いを入れました。
今大会では、ワールドカップ以来、なかなかあたる機会のない強豪国と試合ができる経験の場です。前評判NO1のカナダ、アメリカとの試合は苦戦が予想されましたが、日本代表が強い気持ちをぶつけてくれました。特にカナダ戦の前半、セットプレーでボールを獲得でき、攻撃に継続がみられ、それが接戦になった一つの要因でした。しかし強い相手とのディフェンスが多くなると連続で耐えられない場面も出てきて、そんな中でも今回、初代表の選手が臆しないでプレーをしたことが、大きな収穫です。

選手は、試合の後にアイスバスとストレッチを行いました。アイスバスが非常に冷たいので、我慢するためにケリーコーチが「カントリーロード」を歌いはじめ、選手も充実感も手伝って一緒に歌いました。
ランチタイムの後に、今回の日本とニュージーランドの震災のため、1分間の黙祷がありました。日本代表は、被災地の皆様へのメッセージを書いた国旗を持ってグラウンドに立ちました。選手・スタッフはバインドして、被災に遭われた皆様、今も苦しんでいる皆様のために、目を閉じました。大会スタッフの皆さんやスタンドにいたチームや観客の皆さんから暖かい声援をたくさん頂きました。

ロシア戦、この気持ちが爆発しました。途中、退場や怪我などがあり、5人で守る場面もありましたが、『絶対にとられない』、『あきらめない』、『日本の元気・勇気を見せる』という使命を果たしてくれました。大きな価値のあった勝ちになりました。
中華台北戦は、プール戦最後です。前半が終わって、「きれいに取ろうとしてないか? 強くあたって逃げずにガッシリ入ろう! ベストを出そう!」とアドバイスがあり、思い切ったプレーを見せてくれました。

最後の5・6位決定戦の相手はアジアNO1の中国です。「もう一度最高のものを出そう、一個一個正確に良いものを。落ち着いて、外に動かしてディフェンスの中へ思い切って入っていこう!」とコーチから大会最後のコメントがありました。宮崎S&Cコーチから「アジア予選だと思って戦おう」という言葉が響きました。一番やりたかった相手と試合ができ、気持ちが高まりました。
しかし中国の速いパスまわしやスピードに、ディフェンスにもろさが出てしまいました。それでも、私たちが乗り越えるべき壁に対して、課題が明確に出た試合となりました。

その後、香港スタジアムで女子のカップ戦(決勝戦)を観戦して、「次こそは自分たちもここに立ちたい」と決意した選手もいました。男子代表の皆さんにもお会いすることができました。女子選手から太田GMにメッセージを載せた国旗を手渡し、次は男子の皆さんに応援の気持ちをこめて、引き継ぎしました。

ホテルに戻り、全チームがそろってプレゼンテーションディナーがあり、日本チームは「カントリーロード」を歌って、他チームと交流をして長い1日が終わりました。

女子7人制日本代表「香港遠征」レポート   女子7人制日本代表「香港遠征」レポート
初戦のカナダ戦 アメリカ戦

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試合後はアイスバスで次の試合に備えてリカバリー ロシア戦

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ロシア戦2 戦況を見つめる選手・スタッフ

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ロシア戦3   選手それぞれの想いを書いた国旗は太田GMを通して男子チームへ渡して頂きます

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全参加チーム及び関係者との全体写真

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大会後のプレゼンテーションディナー

●3月24日(木)

香港3日目。大会前日、ホテルには出場全10カ国がそろいました。
JAPANは、8時からチャイニーズ・インターナショナルスクールで練習を行いました。宮崎S&Cコーチ指導で、ストレッチングを入念に行いリラックスし、そしてキックベースやスペースボールでチームコミュニケーションを意識して行いました。その後、オンモードに切り替えて、ボールハンドリング、2on2、コンタクト、DFプレッシャーの確認。
このグラウンドには他の参加国も続々と練習しに来ました。日本よりサイズの大きいチームばかりです。先に練習を終えたJAPANは、実際に戦う相手や他国チームの練習を近距離で見ることができました。

ホテルに帰るため、移動中に、現地の中高生の女の子たちがJAPANの選手にサインを求めてきました。彼女たちは日本語で「ありがとう」と言葉をくれ、香港の人々の温かさを感じました。

午後のビデオミーティングでは、明日、対戦するカナダ、USAの試合(USAセブンズ)を見ながら、黒岩コーチからディフェンスの指示。
またディフェンススタイルを、今までやってきているプッシュディフェンスに加えて、プレッシャーディフェンスをケリーコーチから指導され、昼食後の公園でさらに動きの確認をしました。ケリーコーチは「もっと話して。その声がディフェンスの助けになる。怖がらずに前へ」とアドバイスがありました。また「外国のチームと試合をするとき、何がこわい?」、「外国の選手は日本と試合するときに何が怖いと思う?」と続けて選手に尋ねました。「昨日、練習試合をしたアメリカの選手から日本の印象を聞いたら、日本の素早いフットワークは、いつタックルに入ろうか迷うと聞いた。それが皆の大きな強み、自信を持って!」と選手に伝えました。

午後はウェルカム・ディナーまで時間があるので、選手はプールで泳いだり、部屋でストレッチをしたり、リラックスした時間を過ごしました。

ウェルカムディナーでは参加10カ国が集合。大会スタッフの皆さんはとても明るく、参加国チームをサポートして下さっています。
ディナーの後、いよいよ試合前の最後のミーティングです。はじめに選手はユニフォームを受け取りました。黒岩ヘッドコーチから「この桜の重みを感じながら、これからの話を聞いて下さい」と始めにジャージ渡した意図を説明しました。続いて、今回の日本の大震災に対して、世界からの応援を映像化したものをみました。
「今一度、自分たちが何をするのかを整理しよう。被災のなかでの遠征、周りの人たちに世界に立ち向かっていく勇気、プレーを見せて、感動してもらい、元気な気持ちをもってもらおう! トライした時も被災地で苦しんでいる人を想って。それが私たちの役目・指名だ。そして進化することをやめない! 何のためにここにいるのか? オリンピックでメダルを取ることだ! やると決めた4つの目標はただシンプル。明日の『かち』は選手、皆が4つの目標にチャレンジし、多くの勝負に積極的に挑んだ『価値』だ」と試合に向け、選手たちを鼓舞していました。
スタッフからも「今回、日本の代表10人に選ばれたことにまずはおめでとう。オリンピックへの最高の準備をしよう。ひるまず、思い切って。そして私たち皆が選手を信じています」と試合に向けたコメントがありました。

その後、選手1人1人からコメント。初めての代表として参加する選手たちは、「今回、代表に選ばれたことに家族が心から喜んでくれた。たくさんの人に支えられたここまできた。大会参加者の中で、誰よりも私が一番下手かもしれない。でも誰よりもチャレンジし、誰よりも楽しみます」、続いて、「東北地方のような大きな津波などの影響のある被災地とは違うが、自分の自宅も被害にあった。当たり前のことができないことに不安だった。それでもたくさんの人が支えてくれた。初めて電気がつながりテレビを見れたとき、海外で活躍する選手が日本に勇気を与えていたのを見て、自分のすべきことがつながった」と。

ほとんどの選手が同じように「被災地の皆さんに、支えてくれた皆さんやここにいるチームのために成長します!自分をそして仲間を信じてプレーします」と誓いました。
その後、大澤レフリーがルールに関する質疑応答を実施。そして磯トレーナーが到着し、女子日本代表団メンバーが団結してミーティングは終了となりました。

選手全員、怪我もなく順調に3日目を終了し、いよいよ明日、大会本番を迎えます。

●3月23日(水)

香港遠征2日目の今日も、朝6時から体重・体脂肪・体温チェックからスタート。時計を日本時間に戻し忘れて5時から起きた選手がいましたが、朝から選手全員、快調です。その後、朝食を食べて、ホテル近くの公園に行き、ゲーム前に行うウォームアップメニューを中心に動き、体を起こしました。その後、公園内でまとまってランニングをしました。

また、ここで黒岩ヘッドコーチより、改めて今回の遠征の意義、そして試合におけるJAPANの4つの目標を掲げられました。「1、走り勝つこと…世界一走るチーム、大会一走ったと言われるよう、とにかく動き続けよう! 2、アタックにおいては、セブンズアカデミーでも継続して意識している、外から2番目のしかけ。3、ディフェンスでは、とにかく迷わずアップ・プッシュをしよう!抜かれることを恐れずに、極端に前にプレス。4、低く激しいタックルで相手を必ず倒す。しつこくあきらめない!」
その後は2対2で、とくにディフェンスでのプレッシャーを意識して取り組みました。ユニット練習ではセットプレーを確認。BKはセブンズアカデミーのケリーコーチから、外から2人目の仕掛けに対して、アドバイスを受けました。

午後の練習はSandy Bay Football Clubにて、アメリカと練習試合を実施。練習前にGPSを選手に装着しました。これは「走り勝つ」ために、実際にどれくらいの運動量を出すことができるかを知る材料となります。
試合前のウォームアップから始め、集中を切らさずに選手たちはコミュニケーションをとり、エンジンをかけていきます。アメリカとの練習試合はお互いに大会前ということもあり、セットプレー以外はタッチのルールで7分を2本実施。レフリーは審判委員会から今回、帯同している大澤レフリーが担当しました。
前半は試合の形式に不慣れなのか、攻守の切り替えが遅い部分もありました。前半終了後、黒岩コーチから「ゲームをしているのは自分たち。その場で選手の皆で確認、もっと話そう、伝え合おう。もっとコミュニケーションを」と指示。選手から「アタックでの外から2枚目が、もっと核として動けるように考えよう」「ディフェンスで一度、ノミネートしてからも相手を見続けないと相手は常にポジショニングを微妙に変えてきている」など意見交換がありました。

後半はディフェンスのプレスが、より激しくなり、2人でボールキャリアーをサンドする場面も増えてきました。ケリーコーチから「非常に良いディフェンスがたくさん見られた。もっと仲間を信頼して。自信を持ってください。私はあなたたちを信じているし、あなたたちは仲間や自分を信じていますか?」と問いかけがありました。
黒岩コーチからは「4つの目標に対して、まだ十分ではない。もっともっと強調した動きをして。コーチ陣が求めている動き、皆の動きの差を埋めてほしいし、その差は徐々に埋まってきています」とコメントがありました。選手もその言葉を胸に、アメリカとセットプレーから3フェイズと決めて、アタックディフェンスを行いました。コーチ陣からのアドバイスを選手は必死にチャレンジし続けました。
アメリカの選手はパワフルで、非常にバネのある選手がいて、間合いを与えてしまうと、思い切った動きでJAPANを振り切る場面がありました。しかし、それでもあきらめない、追い続ける、今回のJAPANの姿が見られました。

ゲーム後は、ケリーコーチ主導の「コア」を意識したコンタクト練習をし、さらにディフェンスでの激しいラッシュの確認、ユニット練習をしてホテルに戻りました。夕食まではリカバリーとして、ホテル内のジムでストレッチ。体をほぐしました。ストレッチをしながらも、日本のニュース番組を見ることができ、情報を得ていました。

夕食は、チーム全体でリラックスしながらとりました。夕食後は、今年、サンディエゴで行われたセブンズの大会を見て、今大会で当たるアメリカ代表、カナダ代表の動きを確認してから、最後に朝と同じ体重のチェックをして、就寝までは選手それぞれ、ストレッチをしたり、音楽を聴いて、リラックスして過ごしました。

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浅見コーチはチームマネージメントとトレーニングで選手を支えてくれています 宮崎S&Cコーチが練習・試合前のコンディションを管理

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黒岩監督より、チームの約束事の確認 ケリーコーチよりチームとして徹底事項の確認

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試合前のウォームアップ アメリカ代表との練習試合

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アメリカ代表との練習試合

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アメリカ代表との練習試合

●3月22日(火)

いよいよ本日から香港セブンズに向けて、早朝6時半に前泊しているホテル内のスペースをお借りして、選手・スタッフが初めて顔を合わせました。
まず始めに岸田委員長から選手に対して、「みなさんがラグビーモードに切り替わる前にお話しします。今回の東北地方太平洋沖地震の影響が大きい中、あえて今回の遠征が実施されることになった意義を個々がしっかり理解をして下さい。そして選手の前に一人の日本人として意見を持つこと、言えるようになって下さい。また今回の震災で基本的な生活にも支障が出てしまった選手も多いかと思いますが、スポーツができること、ラグビーができることはそれらの土台があってこそだと思います。感謝の気持ちを持って遠征に臨んでください」というお話がありました。

その後、宮崎ストレングス&コンディショニングコーチによるコミュニケーションゲーム、ダイナミックストレッチングをして、軽く体を動かし各自部屋に戻りました。朝食後にミーティングを行い、黒岩ヘッドコーチより、今回の遠征についてお話がありました。
「今回の遠征には困難なことがいくつかある。まず1つはこの遠征の実施がぎりぎりまで協議・検討され、日本協会は男女ともに参加すると決定しました。この意義を私たち全員が問われるということ。将来・未来の日本ラグビーのために強化継続に、そして自分たちの姿を通して、日本が元気で前向きであることを世界に知ってもらう、そして日本の皆さんを少しでも元気を伝えられる、そんな姿勢で臨んでいこう、と。その姿勢とは何か…『勇気』をもって自分たちがすべきこと、やるべきことをやろう!
また今回の震災の影響で選手が集まって練習・合宿をすることができなかったので、チームとしての準備不足は否めない。今回は世界の強豪チームと練習試合をはじめ、たくさんのゲームができる環境にある。それでも、その強い選手やチームに対して、自分の強みが通用するのか、そして何ができるか『個』の力が問われる遠征である。常にチャレンジをして、相手にはね返されても、ひるまない!へこまない!前を向いて強い気持ちでチャレンジを続けよう。それが『勇気』だ」
と、選手に伝えました。選手全員が真剣に黒岩コーチの話に耳を傾け、藤崎キャプテンを中心に戦う心構えができました。

その後、成田空港へ向かい14:25発、18:45定刻通りに香港国際空港に到着しました。セブンズアカデミーのケリー・マッカラムコーチ、そしてリエゾンのグロリアさんが出迎えてくれました。その後、順調にホテルにバスで移動し、21:00過ぎにホテルに到着。チェックイン後に遅めの夕食をとり、22:00から固まった体をほぐすため、ホテル近くの公園へ。宮崎S&Cコーチの指導の元、ダイナミックストレッチング、コミュニケーションゲームをして11:00に終了。遅い時間でしたが、ほとんど移動だった1日でしたので、選手は明るく声を出しながら動いていました。

明日は強豪のUSAと練習試合です。「勇気」「チャレンジ」を合言葉に全力を尽くします。

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岸田女子委員会委員長より今回の遠征に向けての心構え 朝のストレッチ1

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朝のストレッチ2 朝のコンディショニングトレーニング

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朝のミーティング 成田空港にて