●試合日 2011年9月10日(土)15:00キックオフ(日本時間)
●会場 ニュージーランド、オークランド「ノースハーバースタジアム」
●試合結果

フランス代表 47-21 日本代表 (前半25-11)

Text by Kenji Demura

まずは、敵将たちの賞賛から紹介したい。
「日本はボールを与えるととても危険なチームだったし、ダイナミックなプレーで観客を魅了した」(フランス代表FLティエリ・デュソトワール主将)
「日本に対してはブラボーと言うしかない。ジョン・カーワンは日本ラグビーのレベルを上げるのに成功したと思う。4点差に追いつめられた時には、いま起きていることが現実とは思えなかった。今日の敗者は日本じゃない」(フランス代表マルク・リエブルモン監督)
後半8分に出たSOジェームス・アレジのトライ&ゴールで18-25。さらに17分にもアレジがPGを決めて、21-25。
間違いなく、世界ランキング4位の強豪は追いつめられていた。

フランス代表 47-21 日本代表  フランス代表 47-21 日本代表  フランス代表 47-21 日本代表  フランス代表 47-21 日本代表 

「今年の6カ国対抗のイタリア戦や前回のW杯でのアルゼンチン戦を研究して、フランスは後半にスキが出てくる傾向があることがわかった。ウインドウが開くんだ。だから、ハーフタイムに選手たちには、『ボールをキープしてプレッシャーをかけ続けろ』と指示を出した」(ジョン・カーワンヘッドコーチ)

実際、後半開始早々に攻め込まれたピンチを、フランスFWに2度インゴールになだれ込まれながらトライを与えずに乗り切った後、試合は一気に日本ペースとなった。
前半から何度も鋭い走りでゲインを切っていたWTB遠藤幸佑、そしてCTBニコラスライアンがタテにフランスDFを切り裂いた後、SH田中史朗からSOアレジへのフラットなショートパスが通った瞬間、ノースハーバースタジアムのボルテージはこの夜の最高値を記録したはずだ。

もちろん、判官びいきという面もあるとはいえ、粘りのDFとテンポいい攻めで「ラグビーをよく知っているニュージーランド人の心をつかんだ」(カーワンHC)のは、明らかに日本だった。
「選手たちのパフォーマンスがそうさせた」(同HC)。
最終的には勝利はものにできなかったものの、8年前にもフランスを追いつめ“ブレイブ・ブロッサムズ"との賞賛を得た時と同じように、しっかりノースハーバーの観衆のハートを掴んだことは間違いなかった。
しかも、当時を知る唯一のメンバーであるWTB小野澤宏時が、「キックで崩すという切り口が明確な分、今回の方が手応えがあった」というとおり、最終的には21-47まで離されたものの、現実的には8年前よりも金星に近づいていたのかもしれなかった。
前半30分のアレジの1本目のトライも、「ラッキーだった」(アレジ)という面はあったとはいえ、ニコラスのチップキックから生まれたものであり、対フランスのゲームプランはうまく機能したと言っていいだろう。

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それでも、最終スコアでは8年前よりも引き離されることになってしまった要因は、何だったのか。
「前半、ミスから簡単にトライを取られてしまった」(カーワンHC)
さらに、後半、4点差に追い上げた後、フランスに奪われたトライも、攻めながらのノックオンによるターンオーバーからボールをつながれて取られたもの。
ターンオーバーから一気にトライまで持っていかれるパターンは、W杯前から何度も繰り返されてきた課題だったが、W杯本番でも致命傷となってしまった。

前述の後半30分のフランスのトライの際に、一か八かのボールを殺すタックルにいって時間を稼ごうとした小野澤は「ターンオーバーからのDFを詰めるのか引くのか。そこのコミュニケーションの部分がなあ」と嘆いた。
「前半からDFの時間が長くて、最後の10分くらいは正直キツかった」と、LO北川俊澄が語ったとおり、終盤、日本のフィットネスが落ちたように見えたのも事実ではある。
さらに、立ち上がりからプレッシャーを受け続けたスクラムは、メンバー交代をしても、最後まで改善はされなかった。

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「結果は関係ない。地震と津波から半年。今日は勇気を見せられるかが重要だった。選手たちは100パーセントを出し切ってくたし、日本でテレビを見てくれた人にしっかりメーセージを伝えられたと思う」(カーワンHC)
そう。確かに、“ブレイブ・ブロッサムズ"は再生された。ノースハーバーのスタンドを埋めた目の肥えたニュージーランド人にも、日本のお茶の間、あるいはいまだ避難生活を余儀なくされている東北の人々にも、JKジャパンの勇気ある健闘は伝わったはずだ。
次は、そのブレイブさを結果につなげること。

「フィールドプレーでも通用する部分はあったし、自信になった」というPR平島久照は、スクラムに関しては「もっと8人で組むという意識を徹底していきたい」という。
「フランスは最終的にはこちらのミスから畳み掛けてトライを重ねているんで、そういう集中力の違いがこういう結果になっていると思う。でも、そこの部分でも昔より全然レベルアップしている感触はある」というのは、プレッシャーを受けながらも、落ち着いたプレーぶりを見せたSH田中。
「後半、突き放されたのがいまの自分たち実力。今回の結果を受け止め、しっかり課題を修正して、残りの試合に臨みたい」(FL菊谷崇主将)
W杯で結果を残すために、もう一歩自分たちが進歩しなければならない部分がクリアになった、意義あるブレイブファイトだった。

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