Text by Kenji Demura

FWの激しいプレーではオールブラックスと互角以上に渡り合ったトンガ
FWの激しいプレーではオールブラックスと互角以上に渡り合ったトンガ
photo by Kenji Demura (RJP)

最初に口火を切ったのは、ジョン・カーワン日本代表ヘッドコーチだった。
「(トンガ戦は)両チームにとってのワールドカップファイナルになる」

絶対に負けられない重要な一戦という意味を込めた表現だったが、対するトンガ代表イシトロ・マカ監督も100%同意するかたちでこう語った。
「我々はお互いに尊敬している。だからこそ絶対に勝ちたい。ワールドカップの決勝のような試合というのは、まったくその通りだ」
そのトンガ代表はマカ監督が大会前から公言していたとおり、セレクションを兼ねていた最初の2戦を経て、「ベストメンバー」(同監督)で日本に臨んでくる。

開幕ゲームのNZ戦先発メンバーが11人、続くカナダ戦からは7人。肋骨を痛めたFLフィナウ・マカ主将が欠場する以外はケガ人の問題もないという。

ハーフ団はオールブラックス戦でSOに入り、カナダ戦ではFBでプレーしたカート・モラスが10番に戻り、逆に本職はSHながらカナダ戦では指令塔を務めたタニエラ・モアは本来のポジションでモラスとハーフコンビを組む。
もちろん、状況に応じて試合の中で2人の役割が入れ替わる可能性もあり、カーワンHCも「モラスはキックを多用し、モアはワイドにボールを動かす傾向があり、タイプが違う2人のSOには注意する必要がある」と、警戒する。
一方、フロントローにはスクラムでオールブラックスに押し勝った開幕戦先発の3人が揃って復帰。

このところのパシフィック・ネーションズカップ(PNC)での対戦ではスクラムでプレッシャーをかけて、トンガ戦勝利をものにしてきた日本だが、フロントロー3人は前回W杯以降のPNCの日本戦ではプレーしていない。
開幕ゲームでは、途中出場したPRアリソナ・タウマロロもトンガ唯一のトライを奪うなど、パワフルなプレーぶりでインパクトを残しているだけに、日本としてはFW最前列での戦いでトンガのパワーをしっかり受け止めることができるかも、ポイントになる。

日本サイドに目を移すと、7-83で敗れたオールブラックス戦の先発からは10人を入れ替え(ポジションの変更を除く)。
ケガ人の影響でNO8がホラニ龍コリニアシから谷口到に、アウトサイドCTBが平浩二からアリシ・トゥプアレイに代わった以外は、初戦でプレーした“チームフランス”のメンバーが並ぶ。
平島久照、堀江翔太、畠山健介のFW第1列は、昨年のPNCのトンガ戦で最後にスクラムでの認定トライを奪い、逆転勝ちを収めた時の3人でもある。
当然、今回もスクラムで圧倒したいところだが、前述のとおりトンガのメンバーが入れ替わり、欧州やスーパー15で活躍するフロントローが揃うだけに、PNC時のように自分たちの思いどおりにスクラムをコントロールできるかは蓋を開けてみないとわからない面も多い。
「力強い選手が入って、PNCの時よりもいいスクラムを組んでいる」とは、今大会でのトンガのスクラムに関するPR平島の印象。

カーワンHC(右)はトンガ戦はニコラス(左)とトゥプアイレイのCTBコンビで臨むことを決断
カーワンHC(右)はトンガ戦はニコラス(左)とトゥプアイレイのCTBコンビで臨むことを決断
photo by Kenji Demura (RJP)

BKではNZ戦は欠場したSOジェームス・アレジ、CTBニコラスライアンといったプレーメーカーも復帰。
ディフェンス面では今年のPNC時にはアレジのところを狙われていた傾向もあり、タテにパワフルに攻めてくるトンガの突進をミッドフィールドで止められるかも試合の趨勢を決めるキーファクターともなりそうだ。

7-83という、これまでのところ大会最大点差での敗戦となったNZ戦の後、多くの選手がショックを受けていたのは事実だったようだ。
「個人的には何もできなかったという感じで、思っていた以上にショックだった」(菊谷崇主将)
それでも、リカバリーとチームアクティビティなどを経て、NZ戦から4日間という短い時間の中で「ここまでのことはいったん0にして、3勝を目指していくための気持ちの切り替えはそれぞれができている」(同主将)とも言う。
「トンガはパシフィック・ネーションズカップでも良くやるチームなので、こういう戦いをしてくるというベースの部分はわかっている。予選プールでの戦いの映像もチェックしながら、シンプルにやる方向性を確認して、チームとしてどう良くしていくかだけを考えたい」(WTB小野澤宏時)
両チームの首脳が「ワールドカップファイナル」と口を揃えるとおり、JKジャパンにとって、この4年間で最も重要な試合となる。