マッチリポート
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トーナメント表


帝京大学 18-12 同志社大学

【2回戦/2011年12月25日(日) at 東京・秩父宮ラグビー場】

ノーサイド直前のペナルティゴール(PG)で勝負か決まるゲームは幾度か経験し感激したが、PGを重ねるたびに繰り返す逆転劇、しかも1、2点の小差。PGを邪魔する声援はなく、ゴールにボールが吸い込まれる毎に1万4千の大歓声が‥‥。PGの重さをこれだけ感じたことはない。

最初の得点は、今日のゲームを予見するかのようにPGから始まった。キックオフをキャッチした帝京大学がモールからのボールをタッチキックしようとしたところで、オブストラクション。同志社大学がゴールポストギリギリに入るPGを成功させ先制した。
13分、帝京大学は、左22m付近の15mスクラムから左サイドに3人集め防御を突破、内側に戻し5番がトライ(帝5-3同)。以後、PGのシーソーゲームとなった。

帝京大学は、一貫してFW戦・モールからの5,6番を軸とした縦攻撃。前に出ることはできるが、突破はできない。タイミングよくバックスにも展開するが、短く浅いラインでは、低いタックルで倒され、すぐに団子状態になってしまう。ボールを支配するもラックから、すぐにはボールを出せない、出さない。結果、二次三次のモール攻撃も反則で攻守が変わった。セットからの攻めもスローに感じた。

一方、同志社大学は前半から様々なプレーを見せてくれた。セットからの長いライン。SOとCTBのサインプレー。飛ばしパス。SOからWTBへのキックパス。
同志社大学のセットからのプレーは多彩であった。
全体的には、帝京大学は、接点でのボールさばきが良く、WTBまで回ったボールもテンポよく出させない。同志社大学は、バインドしてモールを固くしてしまう前に、低いタックルで1人倒しラック状態に持ち込み前進を少しでも食い止めた。
そして、シンビンで帝京大学が1人欠けたのち、帝11-12同とした後半34分のPG以後、両者とも不用意なPGにつながる反則はできない。また帝京大学は、時間をかけるモールもできない。結果ハイパントを敵陣22m付近に落とした。当然、同志社大学はタッチキックで戻さなければならないが、焦ったのかダイレクトタッチとなってしまった。残り数分、運命の22mでのラインアウトが始まった。ここで帝京大学のモールを耐えることができれば‥‥。

大学選手権での両者の対決は、過去5回、それぞれに特徴がある

1回目(S58年・20回)帝京大学は選手権に初出場した(同31-4帝)。翌年2回目、同志社大学は大差で勝利し、まだ他のどの大学も成し得ていない3連覇を達成。3回目(H14・39回)、同24-帝26の少差で帝京大学は、初めて同志社大学に勝利し、初めて準決勝へ。4回目(H15・40回)リーグ戦Bグループで対戦し同志社大が勝利、関西大学リーグの意地を見せ3年ぶりの4強に。5回目(H17・42回)は、同50-帝7だった。

そして6回目、帝京大学は、かつて3連覇を果たした同志社大学を辛うじて破り、その3連覇に並ぶために一歩駒を進めた。(長澤孝哉)

帝京 18-12 同志社 帝京 18-12 同志社 帝京 18-12 同志社 帝京 18-12 同志社
会見リポート
 

同志社大学の宮本監督(右)と西田キャプテン
同志社大学の宮本監督(右)と西田キャプテン

同志社大学

○宮本勝文監督
「関東の王者、帝京さんに、自分たちはチャレンジャーとして臨みました。自分は『気合い』という言葉は好きではありませんが、選手は本当に気合い十分で臨んでくれました。勝たせてやれなかったことは選手に申し訳なく思います。選手は持てる能力を最大限に出してくれました。少し、帝京さんの方が強かったということでしょう」

──うまくいったプレー、僅かに及ばなかったプレーは?
「うまくいったのは大きなFWに対してのディフェンスの部分です。及ばなかったのは、最後まで頑張りきれなかったところです。やはり、向こうの方が大きくて強いFWだったと思います」

──選手権三連覇への思いは?
「同志社三連覇の時は、僕は大学1年生で、本当に強い同志社の頃で、決勝で勝つことがどれほど難しいか知らされた年でした。同志社としてそういう難しいものを阻止したいという思いはありましたが、今日は、本当にチャレンジャーとしてぶつかっていきたいという気持ちだけでした」

──今年の指導で伸びた部分は?
「やはり、選手の自主性です。ラグビーを楽しむことが大事で、西田キャプテンが一番引っ張ってくれました。ラグビーを楽しんでくれたと思います。勝たせてやれなかったのは僕の責任です」

──来年まで、この差を埋めるには?
「何も考えていません」

──セットプレーで意図的にスローテンポにしたのか?
「起点のところでボールを確保できないと帝京さんからは得点できませんので、ゆっくりで良いからボールを確保し、出たら果敢に攻めようと指示していました。うちのラインアウトの方が、今日は精度が高かったと思います」

○西田悠人キャプテン
「本当にベストチャレンジをしようと臨んだ試合です。良いチャレンジができました。細かいところ、ほんの少しのミスが、王者帝京さんとの差だったと思います」

──反省点があるとすれば?
「ディフェンスで、相手より低くしつこく、皆が行ってくれたのが、点差が開かず、良い試合になった要因でした。最後は、相手が14人になったことで数的優位に立って、判断ミスがあり、作戦をやりきれなかったのが反省点です」

──数的優位での判断ミスとは?
「相手のFBのプレーヤーが抜けたことで、もっと敵陣へキックを使うべきでした。その前に、まず、キックオフに集中して、マイボール継続を図ったのですが、キックオフを追い切れませんでした」

──ラグビーを楽しむと監督がおっしゃったが?
「楽しむとは、やらされているラグビーではないということだと思います。楽しさを監督に教えていただいて、勝ったらより楽しくなることを学びました。勝った喜びと負けた悔しさ、宮本さんも一緒になって喜んだり悔しがったりしてくれました。チームも僕自身のラグビーも変わったと思います」

帝京 18-12 同志社 帝京 18-12 同志社 帝京 18-12 同志社 帝京 18-12 同志社
 

帝京大学の岩出監督(右)と森田キャプテン
帝京大学の岩出監督(右)と森田キャプテン

帝京大学

○岩出雅之監督
「最後までゲームの行方が分からない試合でした。久しぶりにドキドキしました。大学選手権に入って、調子が悪いわけではないし、心の隙でもなく、チームの足りないところが出た試合でした。勝利をものにできたので、まだ、力足らずの部分を学生がしっかり理解してくれるゲームだったと思います。同志社さんのディフェンスはうまくバランスがとれていました。その中で、学生がどうにかゲームを進められたのは、どこに立ち戻るかという最悪の時の冷静さを保てたからです。昨日、たまたまミーティングで言ったことですが、学生の最後のしぶとさを感じます。
選手権は1回も2回もチームを強くしてくれる。それを信じて、まず、準決勝で今日の反省がしっかり生かされるゲームにしたいと思います。同志社さんのしっかりしたプレーを学んで、対抗戦の代表としての気持ちをもって、すべての反省が生きるゲームにしたいと思います。学生には言わなくてもそうした意識を感じます。同志社さんの素晴らしいプレーに敬意を表したいと思います」

──チームの甘さが出たのか?
「冷静に、もう一度ビデオを見て僕自身の見方を考えたいのですが、ハーフタイムでは『俺も甘かったが、お前たちも甘いな』と伝えました。すぐ(トライが)ほほ獲れそうで、楽にゲームを進めようとしているぞと。一歩、早く放れば、一歩、入りすぎなければ結果はうまくいくぞと。激しく気が入った表情とは違う、しかし、ある程度集中している顔で選手はゲームに入りました。しかし、すぐ獲れそうなのに獲れないフラストレーションがあったかと思います。そこで、自分たちの矢印を自分たちに向け、激しさを取り戻していこうと選手には伝えましたが、簡単に取り戻すことはできませんでした。
最後の5分、我々に勝運があったのではないかと思います。最後は、学生の集中力の高さを感じました。次に80分間、集中して出せるように、良い経験をさせていただきました。ドキドキするのは指導者として望んではいませんが、彼ら学生の可能性がより開く、より逞しくなる、良いきっかけとなるようにしたいと思います」

──ゴール前で同志社のプレッシャーがあったのか?
「我々のミスです。同志社さんのラインディフェンスは常にギャンブル的に来ていました。流れの中でどんどん冒険をしてくるディフェンスで、常に何かを狙ってくる、こちらが獲り切り始めたら楽な戦いになる、その辺のバランスをうまく同志社さんが持ち続けたと思います」

──三連覇に向けて?
「いつも三連覇を目指しているという意識がマイナスならば考えなければよいし、励みやエネルギーになるなら、しっかり持ち合わせれば良いことです。今日の試合で最高に得たものは、目の前のゲームに集中することです。今日はウォーミングアップの時に、どこか早稲田さんと関東学院さんの試合を意識していました。コーチングスタッフの中でも、今、関東学院さんが勝っているというような情報が流れました。隙は我にあり。その隙を同志社さんが最高に突いてくれた試合でした。同志社さんに感謝し、全力で次の試合に臨みます」

○森田佳寿キャプテン
「試合前に、この試合を通じて、もっと大きく、強くなろうと言って臨みました。しかし、自分たちの甘さが多く出たゲームでした。勝てたのも収穫ですが、こうした厳しいゲームを乗り越えてメンタルな面で一つ大きくなれたと思います。同志社さんのプレッシャーの前で、プレーできなかったことを必ず修正して、しっかり筑波戦の準備をしたいと思います」

──リードされたときの考えは?
「同志社さんが一つひとつの局面で素晴らしいプレーをされたというのもありますが、自分たちのミスからリードされていました。基本的には時間があったので、今までやってきたことをやるだけだと考え、まず、エリアを敵陣で戦おうとしていました。一つひとつのプレーを丁寧にミスなくペナルティもなくやり切ろうと言っていました。すごく苦しい試合でした。滑川と試合後にすぐ話しましたが、良い経験になる試合で、しっかりたくさんある課題を修正していきます」

──残り5分でリードされた局面では?
「ボールの再確保とエリアを前に上げることを考えていました。ゴール前で、少ないBKで行くよりも、強みであるFWで獲り切ろうと、FWにも集中して獲り切れと伝えていました。前半から、あのエリアで獲り切れなかったことがいくつもありましたが、そこはスキルや気持ちの甘さが出ていたからです。最後の場面では丁寧に力強く行くことができました」

──WTBの選手が真面目に試合前にゴミ拾いをしていたが?
「単純に、ゴミが落ちていれば拾います。日頃の活動です。今はチームとしてそういう活動をしています。
(岩出監督『今年もやっているんだと、マスコミの方に教えていただきました。特に4年生がやってくれています。下級生にはほとんどやらせません。この時期は23番目の選手が何ができるか気付こうとして、学生たちが考えを広めたり深めたりしています。僕は学生がやっていることを見守るだけです。社会に出てもこうした行動を続けていってくれたらと思います』)」

──チャレンジャーとしての意識は?
「今年一年を通じて、三連覇を意識しないのは正直、無理だと思います。優勝すれば三連覇という大きな目標に到達するわけですから。春からしんどい、厳しい積み重ねをしてきましたが、モチベーションが持ち続けられないときは、三連覇を意識して高めたこともありました。今の段階では、目標はもちろん優勝ですが、ある程度次を見るのでなく、今週なら同志社さんとの試合ですし、1日の練習、1セッション、一つひとつの今に集中することが大切だと考えています」

──早稲田が負けたことは知っていたか?
「はい。ウォーミングアップから戻ったときに、山下キャプテンが泣いていらっしゃるのが見えました。僕自身、早稲田さんももっと強くなると思っていたので、山下キャプテンの姿を見て、そういうこともあるんだと、うちのチームが気を引き締めてくれれば良いがと滑川と話しました」