マッチリポート
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トーナメント表


帝京大学 29-3 筑波大学

【準決勝/2012年1月2日(月) at 東京・国立競技場】

準決勝第2試合は対抗戦同士の戦い。対抗戦では11-0と帝京大学が勝利したが、ほとんど差のない戦いであった。そして12月25日の2回戦は、クリスマス寒波で冷え込む中、まさに薄氷を踏む思いで辛くも勝利して勝ち上がってきているところも両チームに共通するところ。帝京大は国立慣れしているが、一方の筑波大は初の準決勝進出というところが不安材料か。ただ、筑波大はこの試合から大駒WTB竹中祥選手が先発に復帰しているところが好材料といえる。

かなり強い風上に立った帝京大のキックオフ。筑波大は突破を試みようと自陣22m付近で積極的に展開を繰り返すが、ノックオンにて帝京大にボールを渡してしまう。このファーストスクラムで帝京大が強烈なプッシュ。筑波大はたまらずコラプシングの反則を犯してしまう。帝京大は敵ゴール前中央にもかかわらず、PGを狙わずスクラムを選択。これでこの試合の帝京大のひとつの戦略が明らかになった。筑波大は終始スクラムで苦しむことになる。ブレイクダウンも帝京大が制し、FWサイドを繰り返し攻め込み、インゴールにボールを持ち込むものの筑波大得意の粘りのあるディフェンスによりトライを許さず、しばらくの間こう着状態が続く。

そして9分、筑波大が強烈なカウンターラックでターンオーバー、マイボールスクラムとする。しかし自陣ゴール前スクラム。不安がよぎるが、ここで帝京大のアーリープッシュに助けられる。助けられたのもつかの間、フリーキックから蹴ったボールはタッチを切らずハーフウェイラインほぼ中央へ、ピンチ脱出に失敗する。このボールを帝京大FB武田宣純選手⇒FL松永浩平選手とつなぎカウンターアタック。22m付近で再三FW近場を突き、SO森田佳寿選手のゲインもあり徐々にゴール前へ。そして12分、帝京大LOティモシー・ボンド選手がゴール前ラックサイドを突き、中央やや右サイドにトライ(ゴール成功 7-0)。

このあとのキックオフ後、筑波大はよくプレッシャーをかけ敵陣ゴール前に攻め込むが、肝心のゴール前ラックでターンオーバーを許す。そして徐々に戻されてしまう。レイトチャージによる敵陣30m左中間のPGチャンスを得るも風の影響もあったか、残念ながらものにできず。

27分筑波大ボールスクラムを帝京大がプッシュ、続けてできたラックでターンオーバー、またもやFW近場を執拗に攻めてHO白隆尚選手がポスト下にトライ。(ゴール成功 14-0)

36分筑波大WTB彦坂匡克選手が自陣ゴール前から大幅ゲイン、前半最も観客が沸く場面を作った。続けてSO松下真七郎選手がラインの裏に出て深くキックを蹴りこむが帝京大CTB中村亮土選手がしっかりとセービング、そこにおおいかぶさってしまいペナルティーで大きなチャンスをつぶしてしまう。このまま前半終了。

後半も前半と同様帝京大がFWを前面に出して攻める、筑波大が展開を試みるも早くて強いディフェンスラインの押し上げにより、局所局所ではチャンスを作るがミスを犯してしまい連続することができない。

4分帝京大のPG成功(17-0)の直後、8分にようやく筑波大が3点を返し17-3とするが結局これが筑波大唯一の得点となった。

帝京大は11分にハーフウェイ付近でSH滑川剛人のインターセプトから独走してトライ(22-3)。その後一進一退を繰り返し、お互い細かいミスによりチャンスをつぶすが、39分に帝京大がトライ(ゴール成功)、29-3で危なげなくこの試合を制した。筑波大は再三展開を試みるが、帝京大のラインディフェンスの押し上げが早く、力強く筑波大の良いところを消すことに成功した。

筑波大はリザーブも含めた多くのメンバーが来季以降も残るので、これまで以上にひとまわりもふたまわりも大きくなって来季も活躍を期待したい。

帝京大は今日の戦い方、FWを前面に押し出し、強力なディフェンスが決勝戦でも発揮できれば、三連覇を大きく手繰り寄せることになるであろう。(澤村 豊)

帝京 29-3 筑波 帝京 29-3 筑波 帝京 29-3 筑波 帝京 29-3 筑波
会見リポート
 

筑波大学の古川監督(左)と中川ゲームキャプテン
筑波大学の古川監督(左)と中川ゲームキャプテン

筑波大学

○古川拓生監督

「今日は、帝京さんの一つの強みであるモールの固まりを引き延ばしてボールを動かすプランで臨みました。しかし、ボールを持つところの圧力が強くキープすることができず、ボールを生かし切れませんでした。自分たちのラグビーができなかったという印象です」

──帝京のブレイクダウンは想定以上だったのか?

「基本的には、ボールキャリアが1対1でやり切ることがラグビーをする上で重要です。帝京さんを二人目の意識で上回ろうと取り組みましたが、帝京さんの反応、圧力は簡単に出させてくれないレベルでした」

──ここ数年での収穫は?

「筑波としては、国立を目標に取り組んできました。勝負の世界なので、接戦を落とすのが去年までの姿でしたが、そのことが貴重な経験となって選手が成長しました。負けたことを常に口にしながら、シーズンに入り、対抗戦では何かが変わって、勝って自信を付けました。劇的なものはありません。普段の取り組みが実ったと感じています。特にこのチームの四年生を見ていると感じます」

──帝京のFWが近場を攻めたが?

「帝京さんの戦い方は、まったく変わったものでなく、何も特別なものはありませんでした。FW周辺で来ることと、パス回しは多くないところでゲインラインを切って来るということは想定どおりでした」

○中川克信ゲームキャプテン

「接点で勝って、ボールを動かすラグビーを目指しました。しかし、セットプレー、スクラムで、帝京さんの圧力が上回ったと思います。自分たちが対応できませんでした。特にスクラムに関しては完敗です。対抗戦の最終戦で組んだイメージがあり、その感じでいけば、圧力を受けてもしっかり組めるし、自分たちのラグビーを表現できると思っていましたが完敗でした。また、最初のショットを狙うなどの判断ミスがありました。試合を通して、このチームの力を出し切れず申し訳なく思います。これが実力ですか。もっと良いラグビーができると信じてやってきましたが。悔しいですが、今日は完敗です」

──初の国立の印象は?

「特に自分たちはプレッシャーを感じませんでした。いつもどおりのプレーを表現しようと、一年やってきたことを出すだけだと臨みました。特別な舞台が大きなプレッシャーになったとは感じていません」

──帝京のブレイクダウンは想定以上だったのか?

「強いブレイクダウンは、もともと分かっていましたので、それを上回る激しさを出そうとしましたが、自分たちのラグビーができないレベルでした」

──帝京のスクラムは?

「自分たちが、もっとまとまって重く、鋭いスクラムを組もうとしてできませんでした。対抗戦では芝の状態が悪かったこともありますが、今日の帝京さんは8人で足を掻いてプレッシャーを掛ける意識が高かったです」

帝京 29-3 筑波 帝京 29-3 筑波 帝京 29-3 筑波 帝京 29-3 筑波
 

帝京大学の岩出監督(左)と森田キャプテン
帝京大学の岩出監督(左)と森田キャプテン

帝京大学

○岩出雅之監督

「明けましておめでとうございます。今日の試合は、筑波さんが1,2回戦で、強いチームを倒して勝ち上がって、勢いがあることを前提に、その勢いに乗せさせないように、FWで絞り込んで行こうと臨みました。前半立ち上がりからFWがゴール前10mでガンガン行こうというゲームプランどおり、FWが頑張ってくれました。また、ゲーム全般を通じてタックルに行ってくれて、心配なくゲームを見ることができました。要所でもう少しという部分はありますが、準決勝では、しっかり戦ってチームをつくることが大事です。筑波さんは対抗戦で苦しんだ相手ですし、勢いを出させないようにと、来シーズンにも我々のインパクトが残るように臨みました。来シーズンも素晴らしいチームになったなと言えるようにするためにも、次の1戦にしっかり集中していきたいと思います」

──FW戦にフォーカスしていたが?

「筑波さんのディフェンスが良いし、外側に良いランナーがいますので、そこにボールを渡さないように、ターンオーバーを警戒して一つ一つのプレーを正確にするよう心がけさせました。また、どう見ても筑波さんはスクラムがウィークポイントですので、まず、そこにチームの勢いを集中させました。ラインアウトは同志社戦で崩れたので、今週はしっかり練習をやってきたつもりです。同時に、相手のラインアウトも崩そうとしました。どんどんプレッシャーを掛けて、ブレイクダウンで我々の持ち味を出し切り、そこから乗って行けとフォーカスさせました。一つ一つのプレーをしっかり行い、気持ちもプレーも一つにまとまろうと。良くできたのではないかと思います」

──決勝も同じような戦い方になるのか?

「我々には、まず、アウトサイドのBKに怪我人が出て、スピードランナーがいないという事情があります。また、もし、点の取り合いになると勢いのあるチームが乗ってきてしまいます。我々としては、今日は相手のウィークポイントを突いたつもりです。我々の進化の中で、外に絶対のスピードのある選手ができて、ボールを動かせる能力があれば回します。また、プロなら見せるラグビーもあるかと思いますが、学生が一生懸命やっているゲームですので、(今日の戦い方を)称えてほしいです。正直に言えば、早稲田さんと決勝で勝負かと思っていましたので、期待を込めて早稲田さんを分析していました。しかし、天理大学さんが見事に勝ってこられました。よくボールを動かす、魅力的で、正に面白いラグビーをされていると思います。今日、明日で分析できることは限られていますので、我々は我々の持ち味を出し切りたいと思います」

──ボールは回さないのか?

「僕もボールを動かしたいが、今日は、筑波さんは本当に良いチームで、より早くゲームをあきらめさせることが大事だと考えました。今日は、今シーズン初めて、ウォーミングアップから学生の気持ちを感じました。セルフコントロールして、怖いとかどうかは置いてきて、痛いプレー、良いプレーをしようというファイティングスピリットを出せたのを見守ることができました。きちっと最後までしぶとくまとめてくれている、森田キャプテンの良い意味での統率力が生かされている部分を決勝でも出したいと思います」

○森田佳寿キャプテン

「よろしくお願いします。まず、本日の試合ですが、この一戦に全力を注ごうと、やってきたことをしっかり出し切ろうと臨みました。風が強く、筑波さんのプレッシャーを受けて、ミスが出ればやられると集中していました。タックル、ブレイクダウン、一つ一つのプレーで全員が我慢強くできたと思います。反省点を修正しながら、次の天理戦に臨みたいと思います」

──どんな点を修正してきたのか?

「プレー面では、同志社戦での反省がありました。ラインアウト、セットプレーが安定していないし、ブレイクダウンが甘いためにスコアできず、相手にボールを奪われてピンチになる場面がありました。そこで、ラインアウトを動かして修正をしました。もう一方で、甘いプレー、気持ちの中の甘さがありました。そこで、痛いプレー、一つ一つのしんどいプレーをタフにやり切ることを練習し、気持ちを持ち直して臨みました。結果として、選手全員が良いプレーをしてくれたと思います」

──決勝の相手スタンドオフは立川くんになるが?

「立川くん・・・。すごく仲がよいです(笑)。小学生の頃からずっと敵同士でした。U20でもポジションを争いました。ずっとライバル関係でここまで来ました。ただ、決勝は、それを意識しないで、帝京として一番良いプレーが出せるようにしたいと思います」