20日、「リポビタンDチャレンジ2012」JAPAN XV vs フレンチ・バーバリアンズ 第1戦がナイターで行われる(東京・秩父宮ラグビー場 19:30キックオフ)。
テストマッチではないためJAPAN XV名義での試合となるが、現実的にはエディー・ジョーンズヘッドコーチ率いる日本代表の強化試合と位置づけられる試合であり、2試合のうちの1戦目にあたる20日のゲームにはヤング・ジャパン組も含めた若手中心のメンバー構成で「世界屈指のFW力を誇る」(ジョーンズHC)、W杯準優勝国からやってきた選抜チームを迎え撃つ。
世界最高峰のセットプレー誇る相手とのガチンコ勝負
ジュニア・ジャパン-トンガ代表戦でトライを奪うなど活躍した竹中は左WTBで先発
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PNC最終戦のサモア戦ではリザーブ組だったSO小野(左)とHO有田が先発メンバー入り
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ジュニア・ジャパンでの活躍が認められて代表スコッド入りしたLOブロードハースト(手前)とFL村田も揃って先発
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A5N香港戦以来の先発出場となるCTB田村にはBKリーダー的役割も求められる
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PNCからスコッド入りしたPR長野にとってはノンキャップ戦ながら"代表デビュー"となる
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フランス代表49キャップを誇るHOセルバ主将(中央の赤いジャージ)がリードするセットプレーは強力と見られる仏バーバリアンズ
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HOセルバ主将は昨秋のW杯NZ大会の日本戦でもプレーした
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 2015年W杯時に世界のトップ10入りすることを長期目標に掲げるエディー・ジョーンズヘッドコーチ率いる日本代表。

 目標達成のためには「2つのタイプのチームを倒していく必要がある」というのがジョーンズHCの描く具体的なイメージだ。
 すなわち、「ひとつが生まれながらにアスリートとしての能力がギフトされている選手たちが揃うチーム。そして、もうひとつのタイプが強力なセットプレーを誇るタイプのチーム」。
 もちろん、前者が先のパシフィック・ネーションズカップ(PNC)で対戦した、フィジー、トンガ、サモアであるのに対して、後者は欧州の列強ということになる。

 そんな強力セットプレーの欧州の代表チームを想定した対戦相手として、ジョーンズHC率いる日本代表が初めて対戦すると言っていいのが「リポビタンDチャレンジ2012」のために来日しているフレンチ・バーバリアンズということになる。

「スクラムで勝てていれば、スコアボードの数字は気にしない人たち」
 冗談まじりとは言え、ジョーンズHCのフランス人フロントローに関する評価を持ち出すまでもなく、フランスがセットプレーにこだわりを持つ国であることに、異論を挟む向きはそうはいないだろう。
 今回来日したのはフランス代表ではなく、「TOP14」と呼ばれるフランスのトップリーグでプレーする選手を中心に選抜されたチームだが、そのメンバー構成を見ても、強力なセットプレーで日本に対峙してくるのは想像に難くないところだ。

 26人の来日メンバーのうち、実績、知名度共にNO1と言っていい存在が主将も務めるHOウイリアム・セルバ。フランス代表として49キャップを誇り、先のW杯NZ大会では日本とも対戦しているので、覚えているファンも多いかもしれない。日本戦以外でも、NZとの決勝戦をはじめ、全7試合に出場し、そのうち6試合で先発。押しも押されぬ、強固なセットプレーを誇るフランスを体現する存在だと言っていい。

 現在33歳のセルバは、すでに今季限りで一線を退くことを公言。今回のフレンチ・バーバリアンズの遠征が引退試合となる。ちなみに、6月9日に行われた「トップ14」の決勝戦では、優勝したトゥールーズの一員として、フランスリーグ制覇に貢献した。

1戦目は若手中心のメンバーで臨むJAPAN XV

 そんな強力セットプレーのフレンチ・バーバリアンズと対戦するJAPAN XVだが、1戦目は15日にトンガ代表との練習試合を行ったジュニア・ジャパン組も含めた若手中心のメンバーで立ち向かうことになる。

 先発メンバーのうち17日のサモア戦でも先発だったのは、WTB廣瀬俊朗主将とCTB仙波智裕。ただし、仙波に関しては18日現在、体調を崩していて、20日までに回復しなければ、リザーブメンバーに名を連ねている五郎丸歩副将がCTBとして先発する可能性もあることが明らかにされている。

 ポジションごとに見ていこう。

 強力スクラムと対峙することになるフロントローはPNCから代表スコッド入りしたものの、ここまでは出場機会に恵まれていない左PR長野正和に、共にサモア戦で途中出場を果たしたHO有田隆平、右PR山下裕史の顔合わせとなる。
 この春からの日本代表、あるいはジュニア・ジャパンの強化試合の中で、JAPAN XVとして戦うフレンチ・バーバリアンズ戦が初の実戦経験となる長野について、薫田真広アシスタントコーチは「体格に恵まれていて、懐の深いプレーができる」と評価。
 一方、PNCの戦いの中ではセットプレーでの課題が露呈した感もあったHO有田は「(世界トップクラスのHOセルバと対戦できるのは)凄く光栄だし、まずは自分たちの組み方でやってみて、それからいろいろ対応していくようにしたい」と抱負を語る。

 LO陣はジュニア・ジャパンとしてトンガと戦った時のコンビ、篠塚公史とマイケル・ブロードハーストがそのまま先発する。ジョーンズHCが「ビッグ・カントリー・ボーイ」と呼ぶブロードハーストには当然、強く、ひたむきなプレーでFWの中心となることが求められている。
 バックローはジュニア・ジャパンでの積極的にボールに絡むプレーが評価され、再び日本代表スコッドに引き上げられた村田毅と、サモア戦では控えに甘んじた佐々木隆道がFLに入り、PNCではロックで途中出場するケースも多かった伊藤鐘史がNO8としてプレーする。

「(ジュニア・ジャパンのトンガ戦では)下のボールを取り切れない部分もあった。自分らしく泥臭くプレーしたい」と村田。佐々木、伊藤はレギュラーポジションを獲得するために、PNCで「強化が必要なエリア」(ジョーンズHC)であるバックローの一員として、しっかりとした存在感を示したいところだ。

 SH日和佐篤が復帰してからは、リザーブが指定席となってしまっている藤井だが、サモア戦の終盤の落ち着いたボールさばきが1点差に迫る追い上げにつながった部分もあった。セットプレーが劣勢になった時にどんなプレーを見せられるかにも日本代表として定着できるかのポイントになる。やはり、サモア戦後半に途中出場してテンポを上げたSO小野晃征、ジュニア・ジャパンでは若いSO山沢拓也をよくリードしたCTB田村優とともに、アタックのテンポづくりの鍵を握る。

 ジュニア・ジャパンではよくボールに絡み成長ぶりも垣間見せたWTB竹中祥、FBとしてプレーする長友泰憲のスピードがどこまで通用するかにも注目だ。

text by Kenji Demura