マッチリポート 第49回 全国大学選手権大会

東海大学 34-5 近畿大学
【セカンドステージ 2012年12月8日(土) /東京・秩父宮ラグビー場】
セカンドステージの初戦は、プールC関東大学リーグ戦1部1位の東海大学と関西大学Aリーグ4位の近畿大学の対戦。大学選手権への切符は近畿大学(第47回大会平成22年度から2年ぶり9回目)の方が早く手にし、東海大学の参戦は第42回大会平成17年度から8年連続10回目。両校が揃ったのは3回あるが対戦はしていない。

初顔合わせとなるこのゲームは、晴天・気温15度、時折強風とはなるが絶好のコンディション、電光掲示板に向かって風上に立つ近大のキックオフで開始。東海大の接近したディフェンスでも短パスをつなぎボールはテンポよく動きアタックを譲らない近大。ファーストスクラムは前6分過ぎに発生して東海大はFKのミス、近大はタッチキックでゴール前ラインアウトからトライを狙う、得意とする戦法であったがキャッチに失敗。風下の東海大はタッチに逃げ再びラインアウトとなる。この繰り返しが3回も続く。硬いディフェンスに流れが変わり始めた13分頃、東海大10番折川が一気に近大陣地10mまで独走、両CTBのパス展開でゴール前まで押し寄せ、最後はラックから5番三上が持ち出し3番五十嵐に渡り、初トライ。(5-0)

東海大の得点パターンは、はっきりとしていた。セットプレーから2-3回のモール又はラックを形成、相手には絡ませず、BKに回す直前には、SHがより早い球出しでアタックラインにつなぐ、時には残ったFW選手がライン参加するパターンも。前半40分には2番崩の飛ばしパスがトライに貢献した。

後半開始早々、風下に変わった近大は連続攻撃で東海大BKのスキを繰り返し狙うが東海大のディフェンスは硬い。両校、前半には少なかったハイパントプレーも起こったが、同時にリスクも出た。東海大11番石井は危険なプレーでイエロー、大事には至らず再開。チームメイトに詫びる仕草を残して一時退場。この機を逃さず近大は、中央ラックから抜けた9番光井が左へのダミーパスを見せ、10番渡邊の脇をすり抜けると東海大陣地22mまで突破、11番山田にパス、最後は8番竹内がトライ。近大唯一の得点(22-5)。

近大の敗因は、得意として来たゴール前ラインアウト(不安定なラインアウトのキャッチを繰り返しながら)からトライを狙う戦法を状況に合わせて変えなかったこと。PKで得点が狙える位置でも、後半の風下で距離が出ないにも係わらず、イエローで東海大BKが一人少ない10分の間でも(タッチキックからラインアウトへの展開)BKによる攻撃時間を空費するなど。また後20分頃には、3連続PKを献上して主導権を東海大に保持され続けた。(PK数は、東海大=9、近大=17)
少々辛口の評になったが、今年の選手権はこれで終わりではない。残りの試合に向けて好プレーを期待したい。(長澤孝哉)

会見リポート
 

近畿大学の中島 部長兼総監督(右)と山田キャプテン
近畿大学の中島 部長兼総監督(右)と山田キャプテン

近畿大学

○中島茂 部長兼総監督

「東海大学は大きなフォワードで前に出る力が非常に強く、バックスも深いラインから縦に出ていくバランスの良いチームでした。
今日、戦ってみて結果的には34対5という完敗でしたが、その要因はいくつかあって、まずひとつめは、全国大会を経験している選手の経験値と、ラインアウトとスクラムのセットプレーが今日は非常に悪く安定していなかった。チャンスの時のマイボールラインアウトをことごとく連続して失敗していた。決定的な違いは、コンタクトゾーンにおける強さ、絡みが東海大のほうが一枚も二枚も上だったということが言えます。
近畿大学は得点力のないチームですので、プレーの精度で継続してトライをとるというパターンを狙っていたのですが、なかなかそれがうまくいかなくて、チャンスらしいチャンスがなかった、というのが点数にあらわれているのかなと思います」

○山田一輝キャプテン

「全国大会というものを経験することが自分は初めてだったんですが、前半、敵陣でプレーすることが多く、チーム全体が固かったというのもあって、自分たちのミスで失点に繋がるというのが、何本かあったかと思います。後半は風下になりましたが、バックスとフォワードが一体になって前に出る局面が何度もありました。結果は負けということになりましたが、次の試合につながる所もあったかと思います。今回の試合で出た課題を修正し、いい所も次に繋がるよう、次の試合では取り組んでいきたいと思います」

──トーナメントからリーグ戦になって、試合数が増えると思うが、経験を深めるという意味で制度の変更についてどう思うか?

○中島 部長兼総監督
「大歓迎です。日本の大学のシーズンは非常に短くわずか2ヶ月ぐらい。
全国大会に勝ち進んでも、4回しか試合がないと、長く多く精神的にも肉体的にもタイトな試合を経験しないとレベルアップしないということを考えると、多くの試合ができて選手たちにもいいかな、と思います。
方式が変わると、総合力で上回っていかないと勝ち進んでいけないということでしょうから、選手の層が厚く、怪我の少ないチームにしていかないと勝ち進んでいくのは難しいかなと思います」

○山田キャプテン
「経験という意味で、今は4年生中心でやっていますが、3年生以下のレギュラーというのも多いですし、22名の選手に入っていない選手というのは何人もいますので、今年も上を目指してやっていますけれども、来年も3年生以下の人たちに繋げられるという事で、(制度の変更は)良い事だと思います」

 

東海大学の木村監督(右)と三上ゲームキャプテン
東海大学の木村監督(右)と三上ゲームキャプテン

東海大学

○木村季由監督

「大学選手権の初戦ということで、近畿大学さんとの対戦だったのですが、近畿大学さんとは、春シーズンに定期戦を行っており今年で9回目になりました。その相手とこうして選手権で対戦ができるというのは、大変喜ばしいことで、すごく楽しみな対戦だと考えていました。
近畿大学さんは、展開力がありバランスのとれたチームだと認識していましたので、そのチームに決して受けることなく自分たちの形を出そうというと臨みました。チグハグな場面も多く、課題の残る内容だったと思いますが、まずはしっかり勝点をあげて次の試合に向かえるということですので、ひとつひとつ課題を修正して次に臨みたいと思います」

○三上匠ゲームキャプテン

「フォワードに自信をもっていたので、どんどんフォワードで勝負してバックスでエリアをとって、というプランのもと、やっていたのですが、初戦ということで、みんな少し緊張していたのもあり、序盤は自分たちの思っていたプレーや強みを生かす事ができず、流れをつかむことができませんでした。
新しくプール制になったことで、選手の中でも例年と比べて気持ちの作り方が難しくなった感じがありました。あと2戦残っていますが、今日出た課題を修正して繋げたいと思います」

──スクラムやラインアウトが安定しなかったのは、選手たちの気持ちの問題だったか?

○三上ゲームキャプテン
「トーナメントということを意識してやってきたので、フォワードに自信があり何人かの選手は、プールだから次があるという考えや行動で、思っていたことがプレーに出てしまったのではないかと思います」

○木村監督
「選手たちの中でメンタルを含めたコンディションを準備できないというのが今日のゲームのあの差ですね。リーグ戦に変わったということで練習の部分でも気持ちに差が出て、ゆるみにつながってしまったということは未熟で、選手たちの気を引き締めないといけません。リーグ戦になったからということで、1戦の重みが変わったわけではなく、負けたら次に進めないという勝ち点の比率だと思いますので、(今の三上選手のコメントを聞いて)今回、絞りどころを変えようと思うのでもう一回引き締め直します」

──スクラムやラインアウトに課題があったと思うが?

○木村監督
「セットプレーに関しては、タイミングが悪くて組めず、受け身のスクラムを組んだたというのはあったかもしれません。レフリーのコールのテンポがいつもと違うというのはありうる話ですから、その基準にあわせるようにしていかなければいけない。自分たちのスクラムが組めていたというシーンは少なかったかと思います。ラインアウトについても、グラウンドで風が気になるレベルで、投げる場所も限られてましたので。モールは近畿大学のディフェンスに対して、ゲームの中で修正できる部分もあったかと思いますが、ずっと同じリズムでやりすぎていたかな、と思います」