マッチリポート 第49回 全国大学選手権大会

天理大学 14-46 早稲田大学
【セカンドステージ 2012年12月9日(日) /大阪・長居スタジアム】
大学選手権大会セカンドステージBプール初戦、真冬並みの寒い強風の吹く大阪・長居スタジアムでの第2試合は、昨年度の選手権準優勝校で悲願の初優勝を狙う関西大学Aリーグ3連覇の天理大学と関東大学対抗戦Aで想定外の4位に沈んだ名門早稲田大学との間で闘われた。

試合は前半開始直後から終始、早稲田大学ペースでゲームの8割方が天理大学陣内で行われたが、天理大学も必死のディフェンスで耐え、前半20分までを早稲田大学SO10番 小倉のPG1本のみに抑えた。しかしながら前半21分に左中間のラックサイドを突いたSH9番 西橋のトライを皮切りに、早稲田大学はFW/BKが一体となった攻撃で4T・3Gを積み重ねて大きくリードを拡げた。天理大学は前半終了間際にようやく切札とも言える高速バックスリーの大幅ゲインにより、FB15番 塚本から最後はWTB14番 宮前につなぎ右隅にトライを返し、CTB12番 バイフも難しい位置からのGを成功させ、7-29と後半に望みを繋ぐ。

しかし、後半に入っても早稲田大学ペースは衰えず、1Tずつをあげて14-34となった15分以降にも2Tを重ね、最終的には14-46と関西の王者を圧倒した。

天理大学は、一旦自分達の形が崩されてしまうと、時には大外に飛ばし、時にはインサイドのギャップを衝き、そして、時にはフラットな50/50パスと、関西リーグではあまり見られない早稲田大学の多彩かつスピーディーな攻撃に翻弄され、失点を重ねた。早稲田大学は、特に天理大学の選手権直前の同志社大学との一戦に着目して天理大学の戦術を分析し、攻撃パターンであるCTB12番 バイフと13番 トンガによる突進・大幅ゲインに対し、速い出足のディフェンスで徹底的に圧力をかけ、殆どゲインを許さず、逆に天理大学のハンドリング・ミスを誘って、素早いカウンター・アタックを仕掛け、この試合を勝利に導いた。

この日は、関東大学対抗戦勢5校が全勝、その内の関東・関西対決も関東勢の3勝と、関西のファンから見ると一方的な結果となったが、今後セカンドステージを盛り上げるためには、関西勢の一層の奮起と立て直しが強く望まれる。

会見リポート
 

天理大学の小松監督(右)と芳野キャプテン

天理大学

○小松節夫監督

「今日は早稲田さんの圧力が強くうちのラグビーができませんでした。前半はハンドリングエラーが重なりいい形で取れず、逆にミスから切り返されました。セットプレー、ブレイクダウンで早稲田さんのいいところが出ていたのでうちは通用しなかった、次に切り替えていきます。

○芳野 寛キャプテン

「うちの強みであるBKで勝負したかったが、前半のミスと早稲田さんの圧力でそれができなかった。まだ終わったわけではないので勝ちにこだわってやっていきます」

──前半の風下であの点差をどう思うか?

○小松監督

「風の影響もありパスがつながらなかったこともある、キックは考えていませんでした。3トライで追いつくので『まだまだこれからだ』と思って後半にのぞみました」

──早稲田の気迫に押されたのでは?

○芳野キャプテン

「気迫は感じましたが、こちらも負けないように戦いました、前半にミスを重ねたのが想定外で、ターンオーバーでの切り返しで早稲田さんのリアクションは早かったです」

 

早稲田大学の後藤監督(左)と上田キャプテン

早稲田大学

○後藤禎和監督

「対抗戦4位に終わり、今大会でのアドバンテージポイントに差がついたので選手権に臨むにあたってできるだけ勝って勝ち続けようと思っていました。
天理大さんは直前の同志社戦でキックを蹴らずにボールを回してくるチームだったのでそれをさせないようにしました。最後は外国人選手にはじかれて取られたので、不安を感じながら後半戦に入ったが勝てて結果には満足しています」

○上田竜太郎キャプテン

「天理大さんに対してFWで圧倒しようと臨みました。FWの感触が良かったのでこれでいけると思いました、勝つことができてうれしいです」

──大学選手権に向けた対策は?

○後藤監督

対抗戦で3敗していますが、内容的には帝京戦、明治戦と着実に上向いていますのでこのまま継続して強化を図っていけばいいと思っていました、あとゲームのマネジメントを考えていきました。

○上田キャプテン

チームの雰囲気も良く、勝つことだけを意識してやってきました。日本一をめざして早稲田のプレーを貫いていきます」

──天理大対策は?

○後藤監督

「同志社戦であれだけ極端にボールを継続していたのは、早稲田との対戦を想定しているのではと読みました。
天理大さんの攻めの流れはある程度決まっているし、逆にそこが強みであるので、まずキックオフのボールは必ずラックにして人数をかけずにプレッシャーをかけるようにしました」

(記事:石川悟、蜷川善夫、北畑幸二 写真:柳元啓志 広報担当:村島博)