マッチリポート 第49回 全国大学選手権大会

立命館大学 25-19 拓殖大学
【セカンドステージ 2012年12月16日(日) /大阪・近鉄花園ラグビー場】
関西のラグビーファンにとっては馴染みの深い紺と黄色のジャージー、関西大学Aリーグ2位の立命館大学が、オレンジを基調としたジャージーの関東大学リーグ戦1部3位の拓殖大学を西の聖地花園に迎え撃つ。立命館は第1戦、福岡工業大学を43-12と破りバランスのとれた力を見せた。一方の拓殖は、同じ関東の対抗戦A1位の帝京大学に65-3と大敗しており、ここで実力と意地を見せたい。東西の実力の差を測ることのできる一戦、試合は、雨こそおさまったものの曇天の残る中、立命館のキックオフで始まった。

立ち上がりは、両チームとも定石どおりキックでエリア・マネージメントを試みる。しかし風上に立ち、鋭い集散を見せる拓殖が押し気味で、5分、G前からの相手キックを拓殖7番 西原がチャージダウン、そのままトライし、7-0と先行する。その後も拓殖優勢の内に試合を進め、25分、拓殖は相手陣深く攻め込むと優勢なスクラムをプッシュ、堪らず立命館はコラプシングの反則。ここで拓殖が素早く反応し、タップキックから5番 ウヴェ・ヘルが飛込みトライ、12-0とする。

しかし、ここまで拓殖の一方的なペースで進んできた試合、30分を過ぎる頃から立命館がエリアの取り合いへのこだわりを捨て、FWでクラッシュしてスペースを作り大外へ振る自分達のラグビーを取り戻し始める。そして遂に31分BK右展開から11番 高木に繋ぎ走り切りトライ、続く34分には同じく大外にBK展開、15番 平岡が、そして、38分にはFWもラインに参加し8番 嶋田がと、10分ほどの間に3トライを返し、立命館15-12とリードして前半を終了。

後半、今度は風上に立った立命館、前半とは対照的にキックを効果的に使ってエリアを獲得、20分G前5m中央の相手反則からPGを狙わずスクラムを選択し、徹底したFWのパワープレイでフェイズを重ね、最後はG直前ラックから6番 杉下が密集中央へダイブ、トライを奪う。そして立命館、タックルド・ボールに素早く反応してキック、大きく攻め込んだ後、29分、ラインアウト・モールをドライブ、2番 庭井が押さえ25-12と勝利を大きく引き寄せる。
しかし、立命館はこれまで5トライを挙げるものの全てノーゴール、点差が開かない。34分、拓殖、今まで立命館がタックルで辛うじて止めてきた鋭い縦へのランから展開、最後はWTBに入った山谷がDFを翻弄するかのようにカットインしてトライ25-19、1T・G圏内に追い込むと、その後も自陣からアタックを継続、立命館を守勢に立たせるが、一歩及ばずそのままノーサイドを迎えた。

拓殖は、立ち上がりの優位を持続することができず、次第にセット・ピースやブレイクダウンで立命のペースに巻き込まれて行った。これに対し立命館はバランスのとれた自分達のスマートなラグビースタイルを取戻して関東勢の一角を崩した。立命館大学の中林監督は「関西のラグビー指導者としては、やはり対関東を意識する」と述べたが、次週対抗戦1位帝京大学との一戦にこそその真価が問われる。

会見リポート
 

拓殖大学の遠藤監督(右)と岩谷ゲームキャプテン
拓殖大学の遠藤監督(右)と岩谷ゲームキャプテン

拓殖大学

○遠藤隆夫監督

「今日はディフェンスの勝負で拘ってきたが、タックルも甘く、前半の後半に得点されたことが敗因です。相手のエリアをもっと取りたかったが機能せず、セットプレイ、ラインアウトも受けてしまい、スクラムでも流れを掴めず、まだまだ課題は多いです」

○岩谷奎太ゲームキャプテン

「前半の初めは自分達のラグビーができたが、タックルと接点で負けて、リズムもつくれませんでした。後半は、風下でエリアを取れずに苦しかったですが、修正することができたと思います」

──ディフェンス勝負の注意するゲームプランは?

○遠藤監督
「ディフェンスは、帝京大との試合でFWのゼロチャンネルを攻められて、ファーストタックルをしっかりしていこうと修正しました。途中甘くなるところがあり、ゲインされるとまた、後手に回ってしまいました。スクラムもいい形で組めたが、立命館大学のメンバー変更後は、差し込まれたことが予想外でした」

 

立命館大学の中林監督(右)と落合キャプテン

立命館大学

○中林正一監督

「拓殖大は、帝京大戦のビデオを観て身体を張っているいいチームと思っていました。前半はキックのところとエリアマネージメントのミスが多かったが、前半にトライを獲ってからは、後半の戦いに繋がったと思います。
立命館大として2勝することは、大学選手権での3勝目となりますので、新しい歴史を塗りかえたと思っています。次の大きな壁を倒す為にも、1週間準備をしてチャレンジしたいです」

○落合佑輔キャプテン

「試合前から拓殖大は身体を張ってくるチームだと思っていました。
最初にトライを獲られて、ディフェンスをしっかりしようと話して修正しました。ミスが多かったので、来週は帝京大ですのでしっかり修正して、勝ちにいきたいです」

──反省点と課題は?

「今日は入りが良くなかったです。次は、帝京大ですので、自分達のラグビーを100%出しきりたいと思います」

(記事:村島博、蜷川善夫、玉川育夫、北畑幸二 写真:柳本啓志)