マッチリポート 第49回 全国大学選手権大会

東海大学 26-28 筑波大学
【ファイナルステージ 準決勝 2013年1月2日(水) /東京・国立競技場】
「何も慌てることはない。1トライで逆転できるから」。FB内田主将率いる筑波大学は、後半逆転で東海大学を破り、初の決勝進出を果たした。4連覇のかかる帝京大学と1月13日、大学日本一をかけて戦う。

後半33分、筑波が敵陣深くまで攻め入りながら逆襲され、東海のトライで23-26と逆転された時、会場には「最後は東海か」という空気が流れていた。しかしその直後の35分、筑波はキックオフリスタートを深く蹴り入れ、相手のリターンキックをチャージダウン。FL粕谷が左中間に飛び込み28-26と再々逆転、後半に入って三たびリードが入れ替わった接戦に終止符を打った。

電光掲示スクリーン上部のフラッグが強い風にはためく国立競技場。前半風下の筑波は、自陣からも積極的に展開し、新鋭WTB福岡や切り札WTB彦坂(匡)へ早めにボールを持たせるなどしたが、「トライを取り急いでしまった」(古川監督)ことからミスが多く、前半6分LO鶴谷の先制トライだけで5-21と東海にリードされて前半を終えた。

しかし後半の筑波は、風を活かしてキックで敵陣に入り、ボール支配でも上回るなど試合を優位に進めた。選手権に入ってスタメン2試合目のSO片桐がまずPGで3点を返し、17分には毎試合八面六臂の活躍を見せるLO鶴谷のトライと片桐のゴールで15-21。さらに23分、彦坂(匡)が驚異的な強さとバランスでゴール前まで迫り、ラックから出たボールを回してFB内田主将が1点差まで詰めるトライ。そして27分、片桐が正面のPGを落ち着いて決め、ついに逆転した。その後東海のトライで逆転されるのだが、最後まで諦めない筑波が再々逆転劇に結び付けた。

敗れた東海。前半は大型FWを基盤に、果敢なタックルとSO阪本主将のキックで試合を優位に進め、スクラムから阪本とインサイドCTBのところで仕掛けるプレーなど、決定力のあるところも見せていた。新人WTB近藤、CTB湯ノ迫、NO8村山のトライで作ったリードを保てなかったことについて木村監督は、「後半はボールをキープできず、敵陣で戦えなかった」と振り返った。それでも後半33分にはPR平野のトライで逆転し、3年ぶりの決勝進出かと思わせたが、最後は筑波の勢いに押されてしまった東海。同監督は「いいチームだった」と、国立(準決勝)まで来た選手達を労っていた。(米田)

会見リポート
 

東海大学の木村監督(右)と阪本キャプテン
東海大学の木村監督(左)と阪本キャプテン

東海大学

○木村季由監督

「本日はありがとうございます。いままでやってきたことをすべて出し尽くそうと臨んだゲームでした。一つはFWとBKの連携で、身体を当てるプレーとセットピースをしっかりやろうと送り出しました。リードする展開になりましたが、なかなか敵陣へ行けずに相手にダメージを与えられず、筑波さんの足が止まりませんでした。最後は勝負の執念で勝ちきれなかったという印象です。学生たちは力を出し切ってくれただけに、本当に悔しいです。良いゲームをしてくれたと思います」

── 一時は16点差をつけたが?

「前半のリードはあまり関係ないです。相手は地域を取りながら来ると思っていましたが、思ったよりマイボールが取れず、ノックオンなどほころびが出てセットに至らなかったと思います。結果、後半は8割くらいポゼッションを取られて、受けに回らざるを得なかったと思います」

──ブレイクダウンでターンオーバーされたが?

「筑波さんの絡みがしつこく、うちが高い姿勢だった部分があります。球際のほんの少しの差が勝負を分けました。前半のリードを守ろうという発想でなく、しっかりボールをキープして、ビッグゲインはいらないので反則せず我慢しようとハーフタイムには送り出しました」
(最後にキャプテンと二人で立ち)
「今シーズン、国立まで来ることができて、本当に良いチームだったと思います。また、この場所に返って来たいと思いますのでよろしくお願いします」

○阪本圭輔キャプテン

「本日はありがとうございます。前半はプラン通りしっかり敵陣に入り、得点を重ね、自分たちの形がつくれました。後半は風下で、敵陣に入る時間が少なかったのが敗因だと思います。まとまって、しっかり最後まで戦って、良いゲームでした。今年のチームは良いチームだったと思います。筑波さんには、僕たちの分まで頑張ってほしいと思います」

──コイントスは?

「トスで勝って風上を選びました」

──逆転した時は?

「一度、逆転されて、ひっくり返して、それからはボールキープして時間を使おうと考えていました」

 

筑波大学の古川監督(左)と内田キャプテン

筑波大学

○古川拓生監督

「本日はありがとうございます。前半は獲り急いだところでミスが出て、3つ獲られ、16点のビハインドでした。ハーフタイムで確認し、一つ一つスコアしていこう、ディフェンスからしっかり立て直そうと送り出しました。選手はそれを実践でき、素晴らしかったと思います。試合前は精度がテーマでしたが、後半もゴール前でボールを失ったりしましたので、反省すべき点はしっかり修正して決勝戦に臨みたいと思います」

──初めての決勝戦だが?

「やっとこの位置に来たという思いです。強い早稲田さん、強い帝京さんですが、抽選の時から帝京さんが来るのではと思っていました。最高の舞台で最高の相手と当たれることを嬉しく思います」

──後半、ブレイクダウンでターンオーバーできたのは?

「このゲームのためにということでなく、ディフェンスが筑波の色だと思っているので、今の筑波の選手ならできるラグビーだったと思います。ディフェンスから崩すラグビーです。振り返ると、前半、トライを獲れてしまったので、ディフェンスより攻め急いだことが反省点です。ハーフタイムに確認して、ディフェンスをやり切れたことが対照的な前後半になった原因です。次はやり切っていかないと勝てる相手ではないので、修正したいと思います」

○内田啓太キャプテン

「本日はありがとうございます。前半、国立ということで少し緊張していて、細かいハンドリングミスでチャンスを失いました。風下で東海大さんにチャレンジしましたが、去年の反省を生かして、リードされても慌てずプレーできました。後半は風上となり、有利に展開できました。反省点が多々ありますので、しっかり反省して決勝戦に臨みたいと思います」

──後半、再々逆転のシーンは?

「あと7分でリードされて、普通ならあせる気持ちが出るところですが、(残り時間が)長くなったら、俺たちトライを獲れる、何も慌てることはないと言って、皆も理解して、いつもどおりキックチャージして、結果的にああなりました。最後は、風をうまく使って敵陣に入って、そこからディフェンスでペナルティをしないこと、規律を守ってディフェンスしようと伝えました」

──初めての決勝だが?

「まず、そこにチャレンジできることを嬉しく思います。去年、帝京さんに負けているので、決勝という日本一の舞台で当たれることを嬉しく思います。昨シーズンは対抗戦も大学選手権準決勝でも負けています。今シーズンは対抗戦で勝っているので、決勝で勝ってイーブンにしたいです」