過酷だったフィリピン戦から先発7人を入れ替え
再びベストメンバーで「激しいチーム」に対峙

10日、愛知・名古屋市瑞穂公園でアジア5カ国対抗(A5N)2014、日本―スリランカ戦が行われる。
前週フィリピンとのアウェー戦に99-10で大勝して、今季は来年のラグビ―ワールドカップ(RWC)2015アジア予選も兼ねるA5Nで好スタートを切った日本代表。
「今季最大の目標はワールドカップ予選を通過すること」というエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)はフィリピン戦に続き、「スリランカ代表戦へ向けたベストの23人」を絶対に負けられないアジアでの戦いに投入。
「フィリピン代表戦に続く快勝」を地元ファンの前で披露して、韓国、香港と続くアジアでのライバルとの決戦に向けて、弾みをつけたいところだ。

(text by Kenji Demura)

スリランカ戦で1試合、1試合レベルアップしていることを証明したい、リーチ新主将率いる日本代表
photo by RJP Kenji Demura
日本代表キャップ数が歴代2位と並ぶLO大野はスリランカを「激しいチーム」と警戒する
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「A5Nの1試合目にしては悪くなかった。1 試合1 試合レベルアップしていくことができればと思う」
日本代表主将として初のテストマッチとなったフィリピンとのアウェー戦勝利の後、FLリーチ マイケルキャプテンは表情を引き締めたまま、そう語った。

ピッチレベルの体感温度なら間違いなく40℃超え。
すぐ横を高速道路が走り、明らかに縦の長さが足りないグラウンドにはロッカールームもなかった。
歴代の日本代表のテストマッチの中でも、指折りの厳しい環境の中で行われたフィリピン戦は「(その時点での)ベストメンバー」(ジョーンズHC)での戦いとなったが、結果的に5人の初代表組が起用された。

「ニュージーランドや豪州のプロ選手だって、こういう厳しい環境でプレーしてきた。恵まれた環境になれている日本の若い選手たちには貴重な経験になったはず」

苛酷な条件が揃っていたフィリピン戦で初のテストマッチを戦うことになった先発のNO8ヘイデン・ホップグッド、WTB松島幸太朗、CTB村田大志に、途中出場のNO8堀江恭佑、CTB林泰基の新顔組のプレーぶりについて、「良かった」と合格点評価を与えたジョーンズHC。

フィリピン戦と同じセレクションポリシーで臨むスリランカ戦は、先発メンバー7人が入れ替わった「少し経験値のあるチーム」(同HC)での戦いとなる。

APD戦、フィリピン戦と途中出場で存在感のあるプレーぶりを見せたCTB林が初先発
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フィリピン戦で3トライを記録した藤田は再び右WTBで先発出場する
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LO大野が日本代表キャップ数で歴代2位に

FW第1列では、HOがフィリピン戦で先発した湯原祐希とリザーブだった木津武士とを入れ替え。
LO陣も前週、後半9分からの途中出場ながら「1試合以上プレーした感じ。4kg体重が減った」と、暑さの中、相変わらずのタフネスぶりを披露したベテラン大野均が先発復帰。
フィリピン戦ではメンバーから外れていた真壁伸弥とコンビを組む。
スリランカ戦が79試合目のテストマッチとなる大野は、日本代表キャップ数で歴代2位の元木由記雄氏に並ぶ。

FW第3列ではNO8にホラニ龍コリニアシが復帰。ベテラン菊谷崇もリザーブ入りするなど、確かにFW陣の経験値は増している。

一方、BK陣はアジア・パシフィックドラゴンズ(APD)戦、フィリピン戦と途中出場でソリッドなプレーぶりでチームに貢献したCTB林泰基が初先発。
フィリピン戦で仲良く初キャップを獲得した村田大志とコンビを組む。
フィリピン戦でのプレーぶりに関して「ボールキャリーの部分など、勢いをつけられた部分もあった」と自己評価した林は「判断良く、ボールを外に運んで、自分がトライ取れなくても、次の選手が取りにつながるプレーができるようなプレーをしていきたい」と初先発への抱負を語る。
一方、コンビを組む村田は「13番はBKの内と外のつなぎの役割が大きい。(フィリピン戦では)内と外の伝達の部分で統一できてない部分もあった。コミュニケーションの部分、80分間どういう状況でも集中力を切らさないようにしていきたい」と、先発出場を続ける中で課題が明確になっているのを感じている。

フィリピン戦では共にフル出場して、それぞれマルチトライを挙げる活躍を見せた若きWTB陣のうち、藤田慶和はそのまま先発に残り、松島幸太朗はリザーブに回る。
フィリピン戦後、将来が嘱望されるふたりの若手BKのパフォーマンスに関して、ジョーンズHCは「松島はボールを持っていない時の動きが良くなかった。素晴らしい素質を持つ選手だが、そのあたりを学んでいく必要がある。その部分に関して、まだ十分ではないが藤田は少しずつ良くなってきている」と語っていたが、その評価がそのまま先発とリザーブという違いとなって表れたかっこうか。

先発復帰するWTB山田章仁も含めてCTB、WTB陣には代表経験の少ない選手が並ぶが、SH日和佐篤、SO田村優、FB五郎丸歩バイスキャプテンと、より判断力が求められるポジションを占める比較的経験のある選手たちが、どう試合をリードしていくかもチームが成長していく上では重要になる。

フィリピン戦では「(APD戦に比べて)良くなった」(ジョーンズHC)というアタックシェイプがさらなる進化を見せるのか。
逆に、フィリピン戦で課題と上がった、キックオフからのリスタート、攻守における判断の遅さなどがどう修正されるのか。

「激しいチーム」(LO大野)であるスリランカに対して、地元で締まった内容の試合を見せて韓国とのアウェー戦につなげていきたいところだ。

フィリピン戦後、リーダーたちと話し合うジョーンズHC(左端)。スリランカ戦でもベストメンバーを投入する
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