セットが安定した後半に計3トライ
因縁相手とのアウェー戦で逆転勝ち

北米遠征中の日本代表は現地時間の7日(日本時間8日)、バンクーバーでIRBパシフィック・ネーションズカップ(PNC)第1戦、カナダ代表とのテストマッチを戦い、34-25で逆転勝ちした。
前半、前に出るDFが機能せずに、カナダに3トライを奪われて9-25で折り返した日本だったが、後半は安定したセットプレーを起点に、一方的に攻めまくって1分にWTB藤田慶和、21分にCTB田村優、29分に途中出場のNO8ヘンドリック・ツイと3トライを奪って逆転。
07年のフランス、11年のニュージーランドと2大会連続してラグビーワールドカップ(RWC)で引き分けた因縁の相手に昨年のホームゲームに続いて、アウェー戦でも勝利を収めたことで、進化した日本代表を世界にアピールした。

(text by Kenji Demura)

photo by RJP Kenji Demura
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「カナダのようなフィジカルな相手に対しては、最初の40分間は激しく戦わなければいけないことはわかっていた。結果的に9-25は離され過ぎだったが、ハーフタイム前にトライを続けて取られなければ、まずまずハッピーだった」(エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ)

日本ボールのファーストスクラムでカナダFWにプレッシャーをかけられ、SH田中史朗がノックオン。
その後のカナダボールのスクラムから、しつこくフェイズを重ねられ、途中いったんターンオーバーしたものの、再び密集でボールを奪われた後、外側を破られて開始5分で先制を許す。
そんなカナダの先制トライの場面に凝縮されていたように、前半はセットでプレッシャーを受け、DFでも後手に回る場面が多かった。

冒頭のジョーンズHCのコメント通り、前半ある程度、厳しい戦いが続くことは想定されてはいたが、31分にHO堀江翔太バイスキャプテンがやや不運にも思えたシンビン退場となったことで、試合は想定以上と言っていいほどのカナダペースとなって前半を終了することになる。
シンビン前の時点では、12分、14分、27分とFB五郎丸歩バイスキャプテンが3PGを重ねて、9-8と試合を引っくり返していた日本だが、前半最後の10分間で2トライ、2ゴール、1PGをカナダに許して、16点ものビハインドを背負ってハーフタイムを迎えることになってしまう。

「ロープ際に追い込まれたボクサーのようだった」
前半の厳しい戦いぶりをジョーンズHCはそんなふうに表現した。
ただし、ロープに追い詰められても、そこから逆転するためのファイティングスピリットは失っていなかった。
「我慢して、ジャブができるチャンスがある時にそれができるか。選手たちは勇気を持ってジャブを出してくれた」(ジョーンズHC)

ファイティングスピリットだけではなく、日本にはすでに確かな修正能力と、それを可能にするだけの「底力」(SO立川理道)があるーー後半はRWCで2大会連続引き分け中の宿敵相手に、日本の成長をしっかりと印象づける40分となった。

photo by RJP Kenji Demura
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「苦しい流れでも気持ちが落ちなかった」(リーチ主将)

スクラムでは前半とは逆にプレッシャーをかける場面が多くなり、前に出るDFも機能。アタックでのラインブレイクの回数も圧倒的に多くなる。

後半開始1分に、スクラムからSO立川がラインブレイクした後、WTB藤田慶和が右隅に飛び込んで反撃開始。
14分には、スクラムでカナダの反則を誘い、FB五郎丸バイスキャプテンが確実に決めて追い上げ、21分に田村、29分に途中出場していたNO8ヘンドリック・ツイが連続トライを決めて、とうとう逆転(25-24)。
終盤カナダに攻め込まれる場面もあったが、しっかり守り切って、試合終了間際に五郎丸バイスキャプテンがPGを加えて、34-25まで点差を広げての大逆転を成し遂げた。

「最初は向こうの高さに合わせたところもあった。少し個人で組んでいた部分も。なので、僕のところに合わせていこうと話し合って良くなった」
前半と後半のスクラムにおける変化をそう説明するのは、HO堀江バイスキャプテン。
そのスクラムの変化とも関連するが、リー・ジョーンズコーチはこの日のDFに関して以下のように総括した。
「前半のDFでの一番の問題はファーストコンタクトの部分。カナダに簡単にゲインを超えさせ過ぎた。スクラムも安定しなかったために、いったん下がった地点から相手を追うような状況が多かった。
後半はコンタクトエリアで対等に戦えるようになったので、DFラインも前に出ることができるようになった」

前半、相手のプレッシャーをモロに受けることが多かったSO立川とCTB田村も、「僕とハル(立川)が狙われていたので、ちょっとハルを深くして、僕が前に出てというふうにアライメントを変えて、後半は良くなった」(田村)と、余裕を持ってスペースに働きかけることができるようになり、3トライを生み出した。

「前半、コンタクトエリアで負けた。そこで勝つためには、ボールキャリーに2人目のサポートを早く。DFでも2人目が早くする必要がある。
W杯では今日の前半のようなプレーをしてしまうと、取り返しがつかない。後半25点取らなくても勝てるようにしないといけない」(ジョーンズHC)

RWCで2大会連連続して引き分けている相手にアウェーゲームで劇的な逆転勝ち。
それでも、ジョーンズHCが指摘するとおり、前半の戦い方はしっかり修正しなければいけないのは間違いないところ。
その一方で、「苦しい流れの中でもみんな気持ちが落ちなかったし、アウェーでこういう厳しい試合で勝てたのは大きい。自信になる」(FLリーチ マイケルキャプテン)のも確かだろう。

「いつもカナダとは苦しい試合をしている。ある意味、僕らと同じレベルのチームとやるからこそ、僕らのレベルが上がったのがわかる。初めちょっと苦しんだけど、その後点数取り返して、DFで我慢して、点数取ったというのは成長している証拠と思っていい」(HO堀江バイスキャプテン)

因縁の宿敵相手に苦しみながらも、アウェー戦勝利を収めた日本代表の次なる一戦は、14日、ロサンゼルスでRWC2015の前哨戦でもあるアメリカとの対戦が予定されている。

photo by RJP Kenji Demura
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