進化するスクラムでアメリカを粉砕
テストマッチ連勝記録を9に伸ばす

14日(日本時間15日)、北米遠征中の日本代表が「IRBパシフィック・ネーションズカップ(PNC)2014」第2戦、アメリカ代表とのテストマッチを戦い、37-29で勝利。
前週のカナダ戦に続いてのアウェー戦勝利で、今季のPNCの成績は2戦2勝。昨秋から続くテストマッチ連勝記録を9に伸ばした。
後半のスクラムトライに象徴されるように、特にセットプレーで大きな手応えをつかんだ日本代表は、日本時間の16日夕刻に帰国。
21日の「リポビタンDチャレンジカップ2014」イタリア代表戦(東京・秩父宮ラグビー場、14時キックオフ)で、チームの進化ぶりを証明することになる。

(text by Kenji Demura)

17-17の同点で折り返した前半に関して、エディー・ジョーンズヘッドコーチは以下のように総括した。
「本当なら31点取って、相手にはトライを与えずに済んでいたはず。判断ミスが多かったし、ディシプリン(規律)も必要だった」

8分、NO8ホラニ龍コリニアシの不用意なパスをインターセプトされて先制トライを許し、同点に追いついた後の15分には、“あってはならない”プレーで勝ち越しのチャンスを失ってしまう。
7ヵ月ぶりのテストマッチ、15人制の公式戦でさえ4ヵ月ぶりだったWTB福岡堅樹が注文通りに相手DFを外側に振り切り、悠々アメリカゴールに到達したまでは良かったのだが、中央に回り込む過程でタックルを受けて、まさかのインゴール・ノックオン。
試合後、「最初のミスを何とか取り返そうとして気負い過ぎたところがあった」と語った福岡だが、「テストマッチでやってはいけないこと」をしてしまったことが尾を引いて、その後は攻守に精彩を欠いたプレーを続けてしまう。

前述のインターセプトからのトライ以外に、この日、米国が奪った3トライはいずれも右WTBが奪ったもの。
もちろん、福岡だけの責任ではないが、DF面でもタックルミスやコミュニケーション不足が露呈した部分は確かにあった。
「DFの部分ではブランクもあって、もう一度、低く入るところや、ホールドするところなどをやり直さないといけない」(福岡)
ジョーンズHCが「スピードはワールドクラス。右WTBではファーストチョイス」と評価する福岡だが、昨年のジュニアジャパンや日本代表での経験を除けば、日常的には学生レベルでのプレーしかしてきていないのも事実。
「経験こそが一番の先生となる」というジョーンズHCの言葉どおり、この日の苦い経験をさらなるステップアップにつなげてほしいところだ。

28分にWTB山田章仁が好判断で内側に切れ込んできての好走でのトライもあったが、結局前半の「今日のBKは良くなかった」(同HC)ことを象徴するような40分間となってしまう。


強力スクラムのイタリア戦
BKの奮起が勝利には不可欠

そんな前半の嫌な流れを断ち切ったのは、FW陣による強力なセットプレーだった。
すでに、前半終了間際のスクラムを狙いどおりに押し込んでペナルティゴールのチャンスを作り出すなど、前半の時点で手応えをつかんでいたFWの8人は、後半開始早々にSH田中史朗の好キックからつかんだ相手ゴール前のスクラムを再びプッシュ。
完全に組み勝って前に出た後に、NO8ホラニが余裕を持ってスクラムサイドを攻略して勝ち越し。
14分にも相手ゴール前スクラムを一気に押し切って、そのままトライ。
「スクラムに関しては最初から比較的いけるかなという感じだった。FWから自発的にいけるという判断をして、しっかり押し込んでペナルティをもらったり、スクラムトライしたりできたので、そこは良かった」(PR畠山健介)

FB五郎丸歩バイスキャプテンの2ゴール、1PGも合わせて17点をリードして最後の20分を迎えたが、SHを田中から日和佐篤に変えたりしたものの、最後まで日本らしいテンポのいいアタックがトライに結びつくことなく、逆に後半もアメリカに2トライを献上。
「今日は途中出場組もインパクトを与えられなかった。内容が良くなかったのに勝てたのは、セットプレーが問題を解決してくれたから」(ジョーンズHC)
「BKがミスして、うまくいかなくても、FWで何とかサポートしようという話はしていた」(HO堀江翔太バイスキャプテン)という前8人の結束力に救われたかっこうだ。

「今日は歯車が噛み合なかった。いい時もあれば、悪い時もある。その悪さを最小限に抑えられて勝てたのはチームとして成長した証拠」(FB五郎丸バイスキャプテン)
16時間の時差がある上に、1日がかりの移動も含め実質的には中5日で戦わなければいけないイタリア戦。
進化を続けるジャパンのスクラムの本当の実力をはかる絶好の機会であると同時に、BK陣にもアメリカ戦とはコインの裏表がひっくり返るような奮起が求められることになる。